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家出してきた王女さまを[かくまう]ことになりました。  作者: くろめ
序章『親衛隊の脅威、ガラン・G・ブレイカー』
17/55

16 王女さまは物思いにふける。

    ☆★☆


 咳をしても一人。

 私は今、お家に[かくまって]もらってます。


 ルオンさんも、ミーアも、そしてルオンさんのお母さまもお家に居ません。

 声を出しても、小さなお部屋に音が反響するだけ。


 家のものは自由に使って問題ないらしいです。けれど、私には使い方が分かりません。

 別に、食洗機や洗濯機といったものや、コンピューターのようなIT機器が無かった訳ではありません。技術力だけは本当に高い星ですから。失礼ながら、地球よりもずっと……。


 まあその、お手洗いやら冷蔵庫と言った、当たり前のものは心得ているつもりですが。


 ……要は単純に、私が知識を得られなかったというだけです。

 正確には、得るだけの時間が無かった。


 儀礼によって、王やその子孫に人権はない。

 そして、儀礼のせいで、一般常識を与えてもらう時間さえも得られなかった。

 丸一日の拘束で、部屋にはコンピューターの回線が引かれていなかったのですから、調べ物の一つもできやしません。

 確かに深夜に学習の時間はありましたが、専属の先生もまた、時間に追われながらの授業を展開します。そのため、しっかりと質疑応答の時間を組むことが出来ていませんでした。


 ただ、先生が居なければこの地球の存在を知ることはありませんでしたので、どちらかというと、いずれ恩返しをしたいんですよね。


 悪いのは儀礼であって、私も先生も、その犠牲者。


 実は、内部にも、儀礼に嫌気が差した親族は居たのかも知れない。私のような無学な者にも理解できているのですから、より頭のいい人が理解していないはずがありません。


 そういえば、知らされてこそいませんでしたが、ある日を境に従兄弟が姿を見せなくなってしまいましたが、もしや……。


 真偽は定かではありませんが、私と同じようにどこかへと去って行ったのでしょうかね。

 そうだとすればこの星に……いや、それは流石に無いでしょうね。天文学的な確率に遭遇できるとは思えません。きっと、彼はどこかで優雅に過ごしていることでしょう。そう願いたいです。


 私が今支えるべきなのは、ルオンさんただ一人。

 時間のなき間の人定めと言えばそうなのかもしれませんが、私の目に寸分の狂いもありませんでした。

 何だかんだで、私のことを最初から意識してくれていたのです。そうで無ければ私をこの家に上げるはずが無いのですから。


 けれど、甘えてばかりでは居られません。私は[かくまって]頂いている身。

 相手が契約者であろうと無かろうと、無礼を働いてはならないのです。

 私は私なりに出来ることを見つけて、契約者であるルオンさんを労う必要があるでしょう。


 私にも出来ること……一体何なのでしょう。


 やはり特別なことであるべきでしょうか?

 結構ルオンさんはスケベであると、先ほどの調査で理解できましたし、そちらを攻めますか……?


 …………。


 いやいやイヤイヤ、早いですってレイルちゃん。まだルオンさんはそうした目で私を見てくださっていませんし、それに、私もまだ自分の気持ちに確信が持てている訳ではありません。

 こういうことは、お互いが好き合ってこそではありませんか。


 今はまだ、私はルオンさんを利用している一国の王女に過ぎません。


 障壁は幾つもありますが、ルオンさんならきっと私をよき方向へと導いてくださるはず。

 仮に彼の気持ちが変わってしまって、私が帰ることになってしまったとしても、彼を恨むようなことはいたしません。それが「運命」だとか、「神様が示しているから仕方が無い」というある種の宗教的な考え方ではありません。そして「契約」というものを過信し過ぎている訳でもないのです。


 ホシノ ルオンという一人の人間に、私自身を一任しているから……でしょう。

 私の身のその全ては、彼に託しているということです。


 だから、今の私には彼が全て――。


 …………。


 ――ミーアを忘れてた。ごめんねミーア。


 ミーアはルオンさんが心配だからと、単身出て行きましたので、このお家は今無防備です。

 だから私に出来ることは、どこかしらに隠れていることでしょう。


 ということでお手洗いに居るのだけれど……大丈夫ですよね?


 念のため、追っ手のために書き置きも玄関に置いておきました。

 私は私に出来ることを。


 誰かしらが戻ってきたなら、色々と教えてもらいましょう。

 出来ることを、増やしていきましょう。


 ただ、今はきっと、隠れることこそが私のお仕事です。

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