6話「目的」
話の展開が思いつかなんだ。
勝った。
が、気分は良くない。この世界で唯一の友を失ったからだ。
この冒険者に八つ当たりをしてもいいが、それで気分が晴れるわけではない。
別に命まで取ろうとは思っていないし、今だってまだ殺していない。
気絶はさせたがね。ま、俺は勝利者だ。身包みを剥ぐ権利くらいはあるだろう。
綺麗な安物の剣と革装備。それとアイテムポーチと財布は頂いていこう。
この先お金が必要になるかは知らないが、あって損はないだろう。
さて、こいつをどうしようか?放置して死なれたら後味が悪いしな…。
仕方ない。起きるまでは見といてやるか。
さて、せめてスカルの墓は作ってやろう。
墓から這い出たスケルトンを墓に入れるのは滑稽だが仕方ない。
さて、スカルの死体はどこにいった?
「あ、よかった。無事だったんだね」
あれー?首ふっとんだよねー?
なんで何事もなくたってるのですかー?
「おま!死んだんじゃないのかよ!」
「んー?別にあのくらいじゃ死なないよ?ただ、ちょっと休憩が必要になるけどね」
「それじゃあ、俺たちが今まで倒してきたやつ等は?」
「うん。みんなもう復活してると思うよ」
通りでスカルが倒すことに抵抗ないわけだ。別に倒したところで殺すわけじゃない。そうわかっていたから同族でも関係なかったわけだ。
「なんだよ。心配したじゃないか」
「ごめんごめん。にしても人間相手に勝っちゃうなんて、ほんとにケルトは強いんだね」
「こいつは駆け出しの冒険者だったからな。運が良かったんだよ」
だが、スカルの話からすると、別に倒されても死ななかったのでは?と思ったがいい経験地になったんだ。
そう考えよう。
それにしても本当に便利だな。不眠不休で動けてほぼ不死ってことか。
「なあスカル。俺らって死ぬこともないのか?」
「なくはないよ?ほら、前に魔素を吸収するって言ったじゃん?この魔素がなくなったら動けなくなるし、聖属性の攻撃なんかは致命傷になるよ」
前者はエネルギー切れ。後者は良くある感じだな。
「ところでケルト。その人間はどうするの?」
「ん?ああ、殺すつもりはない。だが持ち物は貰った。とりあえず死なれると後味悪いし、起きるまではここにいるよ」
「優しいんだね」
「前にも言ったが元人間だ。出来るだけ敵対はしたくないんだ」
さて、奪った革装備。これは俺にも着られるだろうか?
試しに着てみたが、ブッカブカだ。まあ肉がないんだ、しかたないだろう。
ベルトでなんとか止めて、どうにか着れた。
「どうだ?」
「すごい!人間みたいだよ!」
人間みたい?
「そうかそれだ!そうすればいいんだ」
「え?なに?なに?」
俺はスカルに自分の考えを説明した。
見た目がモンスターな俺らは人間には受け入れられない。
だが、見た目が人間風ならどうだ?ファーストコンタクトは成功するだろう。
うまく行けば、そのまま異世界転生生活を満喫できるかもしれない。
じゃあどうする。簡単だ。服を着ればいい。
だがただ着るだけじゃダメだ。顔は隠せないし、明らかに変になる。
それに触られたらアウトだ。
そこで俺は考えた。
全身を覆う、プレートアーマーのような装備ならどうだろうか?
見た目は完全な人間に見えるだろう。
説明が終わったあたりだろうか?冒険者が目を覚ましたようだ。
なぜ自分は生きているのか。殺されてないのか。
そう動揺している。そして、俺を見つけ、何かを喚いているが、生憎と言葉が通じないんだ。
俺はシッシッと手を払う。そして、墓の出口(と言っても、何処が出口か知らん)を指差した。
自分の装備を奪われて何とも言えない冒険者だが、一言何かを呟いて去っていった。
「ありがとう。だって」
「ん?スカルは何を言ったのかわかるのか?」
「え?ケルトはわかんなかったの?」
どうやら、意思疎通出来ないのは俺だけらしい。
ここであの疑問を思い出した。
なぜスカルとは会話が成立しているか。
俺はスカルへ問いかけた。
答はこうだ。
俺達アンデット系は元々発声をする機能がないらしい。
そら骨しかないからな、当たり前だ。
ではどうやって意思疎通をはかるか。
そこは流石ファンタジー世界。テレパシーのようなもので会話してるらしい。
これはスカルの憶測だが、意思を直接送ってるようなものだから言語は関係ないのでは?とのこと。
うん。便利だな。
便利だが、それ以外の意思疎通が難しいな。
これではこの世界の言葉を覚えても発音できないじゃないか。
まあ、この問題は後回しにすべきか。今はどうしようもないからな。
今やることは別にある。
「すまないな。話がそれた。さて、話を戻そうか。なぜ人間の街に行きたいか。面白そうじゃないか?今の生活には娯楽はない。だが人間の街ならどうだ?退屈はしないだろう?飽きたらまた考えればいいんだ」
本音は別にあるが、ほぼ本音みたいなものだろう。
「うーん…。たしかにここで新しい仲間探すのも飽きたしなぁ…。楽しそう!」
よし釣れた。
さて、これで問題はこの身体を隠すことだけだな。
どこかに落ちていないだろうか?
駆け足やけど、勘弁して?