5話「邂逅」
自我のないスケルトン。俺たちがやったように、こいつは初心者にとってはいい練習台だ。
それは冒険者にとっても同じなんだ。
忘れていた。スカルもここには冒険者も来ると言っていたんだ。
そう、スカルの首を落としたのは冒険者だった。
幸いなことに、相手は1人。
若そうな男の冒険者だ。革の装備に安そうな片手剣。
どう見ても駆け出し冒険者って感じだな。
俺も元人間だ。人間とは争いたくないし、出来れば共存したいとも思っている。
だが、スカルを殺され、俺も狙われている。
倒さなければ倒される。
やるしかないのだ。スカルの事で取り乱している暇はない。
すまない。絶対に仇は取る。
「おい!いきなりとは卑怯だな!」
「?×○□■●!!」
おっと、どうやら言語は通じないらしい。
ん?だったらなんでスカルとは会話できたのか?いや、今は関係ないな。
とりあえず、こいつを倒さないと…。
冒険者は剣で俺を斬りつける。
速い。いや、今までのが遅すぎたのか。
ギリギリでそれを避けた。
なまくらで受けてもよかったが、折れる可能性もあるからな。出来るだけは避けたい。
冒険者はビックリしていた。そらそうだな。今までは自我のない雑魚ばかりだったのがいきなり避けたんだ。
だが腐っても冒険者。動揺したのは一瞬。すぐに集中をした。
さて、今の俺に勝てるのだろうか?まあ、強い敵と戦いたかったのだ。いい機会だと思えばいい。
まずは出方を見ようか。
剣を構えて様子を見る。
それは相手も同じだったようで、お互いに動かない形となった。
先に痺れを切らしたのは冒険者の方だった。
俺はそれを冷静に避ける。
よし。この程度ならまだいける。
縦振り。縦振り。それにあわせて攻撃を避ける。
まだまだぎこちないが、この程度の冒険者なら当たらないな。
モンスターとして生まれてスペックも上がったのか?
俺に当たらないことに苛立ちを覚えてるのだろうか?冒険者の攻撃にアラが目立ってきた。
避ける事にはなれた。そろそろ攻撃にうつるか。
冒険者の攻撃を避ける、避けると同時に横腹を斬りつけた。
うまく当たったが、目立った外傷をつけることは出来なかった。
錆付いたなまくらじゃ切れ味は期待できないって事だな。
だが、それでもダメージは与えれたようだ。よし。この調子でいけば勝てるな。
ま、だがそううまくは行かないよな。一度当ててからは学習したのか、慎重に動くようになった。
カウンターで当てるのは難しくなったな。
なら、こちらから行こう。
俺は初めて自分から剣を振った。
結果としては失策だったようだ。
難なく冒険者はそれを剣で受けた。そして、その衝撃で俺のなまくら剣はポッキリと逝ってしまった。
やってしまったと後悔するが、やってしまったものは仕方ない。
体術のみで対処するしかないな。
冒険者は俺の剣が折れたのをチャンスと斬りつけてくる。
チャンスといえばチャンスだが、俺は先ほどまで剣に関係なく避けていた。
つまりは、折れたところで避けるのには関係ないのだよ。
チャンスと焦ったか?所詮は駆け出し冒険者ってことだな。
冒険者の攻撃を避け、ローキックを出す。
いきなりの攻撃に、冒険者は対処が出来なかった。体勢が崩れ、その場に倒れこんだ。
右ストレートを顔面に叩き込んだ。
これがこの世界の人間との初の邂逅となった。
戦闘って難しいね