2話「スカルとケルト」
「大丈夫かい?」
「なんとか落ち着けたわ」
落ち着けたんだが、がっかりはしている。
スケルトンって…。骨って…。
これって生きてるの?死んでるの?どっちだよ…。
まあだが仕方ない。受け入れて第二の人生?骨生?を謳歌してやろう。
ということで、この変にフレンドリーな骨を頼ることにする。
「えーっと…。すまなかった、気が動転していたよ」
「いやいや僕のほうこそごめんよ。話せる同族と会ったのは初めてでね!」
「ほう?なら俺らは珍しいのか?」
「そうだよそうだよ。僕はこの辺でブラブラしてるんだけど、結構新しい仲間が生まれるんだよね。でも、みんなそのまま歩いてどっかに行っちゃうんだ」
なるほどなるほど。俺は転生して、この骨に魂が入ったら自我がある。てことはこいつも転生者か?
「なるほどな。ということはお前も転生者か?」
「てん…せい?」
キョトーンとしたような顔をされる。
といっても、骨に表情はないがな。
「ん?違うのか?俺は別の世界で死んで、ここで生まれ変わった。だから自我があると思うんだが。お前は違うのか?」
「うーん…。僕は生まれる前なんて覚えてないかな?だからきっと違うよ。この骨の持ち主の性格が出てるだけかな?」
「そうか。なら名前はなんだ?俺は坂上 明だ」
「名前はないよ。話をする相手もいないからいらないしね」
「でも、俺と話すときに困るだろ?いつまでもお前ってのもあれだしな…。そうだ、スカルっていうのはどうだ?」
骨だからスカル。なんとも安直な名前だ。
「スカルかぁ…。うん!いいね!気に入ったよ!ありがとう。お礼に僕も名前をつけてあげるよ」
「いや、俺は元も…」
元々持っている。そう言おうとして、やめた。
せっかく転生したんだ。昔の名前を捨てて新しい名前を貰ってもいいのではないか。
「そうだな。よろしく頼むよ」
「よーし!」
その後、ウンウンと悩んだスカルは俺にケルトと名づけた。
ない心臓が槍で持っていかれそうだな。
その後スカルにこの世界のことを聞いた。
転生直後に世界事情を聞けたりするのはかなりアドヴァンテージじゃないか?何に対してかはしらないが。
さて、聞いた情報だが
ザックリと言えばよくある異世界転生の剣と魔法のファンタジー世界だ。
大きくわけで世界は二つにわけられる。
魔族領と人間領だ。
その他細かいのはあるらしいが、そこまでは把握してないらしい。
で、この墓地だが、魔族領に近い人間領のものらしい。
ちなみにだが、正確には元墓地らしい。埋めていた死体が魔族領から溢れる魔素にやられてアンデット化したらしく、ずいぶん昔に放棄された。
ま、そのアンデットってのが俺らなんだがね。
俺たちのようなスケルトンを始め、ゾンビやマミーといった奴らもいるらしい。
変に暴れなければ討伐隊などは出されないらしいが、たまに冒険者などが来るときがあるらしい。
自分がどれだけの戦闘力があるかわからないし、当面は逃げに徹しようと思う。
スカルも基本逃げて生活をしてるそうだから、間違いではないはずだ。
で、この骨の身体。実は利点も多いらしい。
一つは食事は不要。なんでも、大気中にある魔素を吸収してエネルギーに変えているらしい。ほかの生き物などから、魔素を奪い取る事も可能らしいが必要ないだろう。
そしてもう一つ。基本寝る必要がないらしい。疲れることもまずないらしく、魔素を大きく失わない限りは不眠不休で動けるらしい。
アンデットらしいといえばらしい身体だな。
コミュニケーションを取りづらいのがたまにキズ。
致命傷なキズだがな!
「すまない。助かったよスカル。スカルは今後はどうするんだ?」
「んー…?特にやることはないなぁ…。まただらだらしながら、新しい仲間探し?ケルトは?」
「さっき生まれた俺に聞くか?」
「それもそっか!」
まあ、本音を言えば街で冒険者生活!とか憧れるがな。こんな見た目じゃ逆に討伐されるのがオチだ。
てことで、やることが無くなった訳だ。
転生物のセオリーで考えると、この期間は何をしてたか?
そうだ、地道なレベリングだ。
弱っこい転生者でも、下積みをしてオレツエーになる。郷に入れば郷に従えと言うし、レベリングをしてみようじゃないか。
さて、俺達スケルトンは何ができるか?それを手探りで探すのも悪くないが、俺には信用のできる同族の仲間がいる。
聞けば解決するのだ。
ケルトはスケルトンから。
ケルト神話じゃないよ?