22話「魔王様の授業〜三限目〜」
もはや何が起きたかわからなかった。
俺は出方を伺うように構えていた。
そしたら身体が真っ二つになっていたのだ。
「ふぅ…。これで満足ですか?帰りますね。っと、私の事は今後クレナイと呼ぶように。キララと言ったら殺すからな」
そういい残して、キララ。もといクレナイは出て行った。
「あちゃー…。面白いくらいに惨敗したねぇ」
そう言いつつ、俺の下半身と上半身をくっつけるシェイナ。
「まあほれ。後は自分でしてみ?接合点に魔素流してればくっつくから」
「なあ、俺はどうなったんだ?」
「ありゃま。まったく見えなかったの?キララって面白い子でね。どこで見つけたのか刀使ってるのよ。でも、普段は異空間に閉まってて、抜くときにだけ見せるの。で、あの子の一番得意なのが居合い。何もないところから神速の居合いだからね。初見じゃまず避けれないね。うん」
うん。じゃねーよ…。
そんなやつをスパーリング相手にしやがって…。
「とりあえず、せめて一番隊の末端に勝てる程度は強くなってもらわないとね。後半月もないし」
ん?半月?
「予定でもあるのか?」
「え?言ってなかったっけ?後半月もしたら開戦だから、それまでにはモノにしないとって話」
…。
「聞いてねーよ!!」
「ありゃー…。ま、なんとかなるっしょ」
だめだわ…。お子さ魔王様には何をいっても通用しそうにない…。
ならやる事はひとつ。
「はいはい魔王様。だったらそっそと強くなりますよっと」
ただ従って行くしかないのだ。
身体はくっついた。コントロール程度ならもう出来る。
「よし!いい返事だね!」
「っと、その前に。鎧。どうするの?」
クーリングオフとか効かないしな。
どうするつもりなのか?
「え?えー…。か、考えてるよ!てか、その身体に合わせたら人間として不自然じゃん?だからわざとあーしたのよ!どうよ!」
ふむ。その場で考えた言い訳にしてはたしかに理にかなっている。
「なるほどな。で、どうやって着るわけ?」
理にかなっているといっても、着れなかった意味はない。
「ふっふっふ…。魔王様を舐めるなよ?ちゃんと考えているさ!魔素で擬似的な肉を作ればいいのよ」
魔王の説明ではこうだ。
鎧と骨の間に魔素を込めれば、いい感じに見えるよね?
といった感じだ。
上手くはいきそうか?
実際にやってみた。
維持がムズいな。
「うわ、冗談で体外固定って言ったけどできそうね」
シェイナが何か言ってるが、気にしたら負けだろうな。
別に悪いアイディアではないのだ。今後の課題としようか。
「あーそうだ。魔法の適正検査やってみる?」
職業適正検査的なノリで問いかけてきた。
「一応どんなものか聞いときたいな」
こいつのことだから。頭とか吹っ飛ばされても不思議じゃない。
「あー簡単簡単。ここに水晶玉があります。ここに魔素を流します。周波数変えます。色が変わります。以上」
説明不十分じゃね?
「それで何がわかるんだよ」
「まず、どの周波数を使えばどの属性の魔法が出るのか。それと、色の濃さとかでその魔法に向いてるかとか向いてないかとかがわかるのよ。はいこれ水晶」
またしてもどこからか出した水晶。
まあなるほどな。これなら危険はなさそうだな。
俺は水晶に手を当てて魔素を流し込んだ。
「ん?色変わらないぞ?」
「だってなんもいじってないでしょ?それは純粋な魔素だから属性とかないんだって」
ああ、普通の身体強化系のは無属性なのね。
えーっと…。周波数を変えるコツは、ダイヤルをイメージだったな?
カチリカチリと回していく。今回は、目的の周波数を探すわけではないから楽だな。
脳内のダイヤルを回していくと、次第に色が変わっていった。
赤。緑。青。土色。
「どれもパッとしないねぇ…。やっぱ魔法適正は薄めかなぁ…?」
脳内のダイヤルを回しきった感覚がある。
どうやらここが限界のようだ。
水晶は黒く染まっていた。
「うん。まだ闇魔法に適正ありそうだね。でもまあ、種族的なのが強いかな?」
「じゃあ逆に、種族的に聖魔法は無理って事か」
「そだね。色も出なかったし」
「そうだ。シェイナはどのくらいなんだ?見せてくれよ」
ふと思い、水晶を渡した。
「えー?見てもつまんないよ?」
と、言いつつ魔素を入れてようだ。
次第に水晶が黒くなり、そのまま弾け飛んだ。
「あー…。やっぱ加減ミスったかぁ」
そういえば腐っても魔王様だったな…。
加減をミスったとシェイナは言った。
だが、それは違うということを本人は把握していた。
(こいつ。全部の色に黒が混じってた…。それに返ってきた水晶はぼろぼろだったし…。種族的なもの?杞憂ならいいんだけど…)
どちらも見た目ではわからないような変化だった。だが、魔王であるシェイナは見逃さなかった。
適正が薄く、色が出ないというより別のなにかに邪魔をされていたようだった。
そして、水晶は中で暴れまわったようにボロボロになって、シェイナが少し流すだけで砕けた。
そんなこととは、ケルト本人はまったく思っていなかった…。




