16話「聖魔大戦」
「貴様がゴブリン共を纏めたスケルトンとやらか…」
今後の事を考えようと、自宅で寛いでいるといきなりそいつは目の前に現れた。
漆黒の鎧を全身に纏った騎士。
一瞬でわかる。こいつはレベルが違う。一瞬で命を刈り取られる。
「ああ…。喋る事も出来ぬ低ランクのスケルトンか…。ふん、こんなものを持ち帰れなど、なにをお考えだか…」
男だか女だか識別しにくい声が響く。
「一応説明だけはしようか。貴様は魔王様に気に入られた。来い」
せ、説明になってないぞ…。
っく…。せめてゴブリン達に説明がしたいが、無理だろうか?
「ま、待ってくれないか?せめて、仲間だけでも連れて行きたい」
だめで元々。アンデットのテレパシーによる会話を試みる。
「ああ。その会話なら出来たか。そう多くなければいいだろう」
「助かるよ」
意外と話がわかるやつでよかった…。
俺は急いでスカルの元へと向かった。
「スカル。出発だ」
「え?なにかあったの?」
「あー…。俺にもよくわからん」
スカルとベロスを連れ、大長へのもとへ移動をする。
そして、出て行くことを伝えた。
えらく困っていたが、そうだろうな。だが仕方ないことだ。すまない。
「すまない。待たせたな」
「そいつらでいいんだな?よし。ではついて来い」
そういって、漆黒の騎士は黒いモヤのようなものを出し、そこへと入っていった。
言われるままついていく。
モヤを抜けると、豪華な部屋に着いた。
「え?転移魔法…?」
スカルが驚く。ふむ…。どえらく凄いものらしいな。
「暫く待っていろ」
そう言って、漆黒の騎士はどこかへ行ってしまった。
時は少し戻る。
魔族領の一番奥地。
魔王が暮らす魔王城がある。
そこへ一人の魔人が現れた。
見た目はガタイの良い男。だが、背中には黒い羽根が片方にだけ生えている。
「魔王様。人間共がこちらへ攻め入るようです」
「確かか?」
「ッハ!すでに今代の勇者も選ばれ、軍の強化もされています」
「ふむ…。貴様が嘘の報告をするとは思えんな…。よし。ではこちらも戦力を集めるとしようか。魔王の名の下に、第六次聖魔大戦の幕開けと行こう」
時代は大きく動いていた…。
暫く待っていると、部屋の扉が開いた。
「貴様が件のスケルトンか?ふむ…。なるほどな…」
色々観察してくるお子様が来た。
見た目はお子様。だが、こいつ、やばいやつだぞ…?
下手をすれば、さっきの騎士より強い。
「あー…。スカル。やばそうだ…」
「言っておくが、聞こえてるぞ?」
ああ。こいつにも普通に聞こえるのか。まあ、さっきの騎士も聞けたんだ。こいつが聞けても不思議はないな。
「ふむ。どうやら正解らしいな。貴様はついてこい」
「ぼ、僕はどうしたらいいかな?」
「ああ、ここで待っていろ」
スカルを残し、このお子様に着いていく。
そして、一つの部屋へと案内された。
部屋に着くなり、お子様はふんぞり返るように椅子に座る。
「貴様も掛けるがいい」
「どうも」
言われるまま腰を掛ける。
「さて、では本題に入る前に貴様の名前を聞いておこうか」
「俺はケルトだ。見てのとおりのスケルトン」
「そうか。ワシは鈴谷涼子だ」
流暢な日本語でそう答えられた。
「は?え?ちょ…?」
「ははは!やっぱり正解だったか!あーよかった。で、名前。なんていうの?」
俺が日本語に反応してから、雰囲気が一変した。
「あ、ああ。坂上明だ…。元就活生だ」
「ふーん…。こっちの生活は長い?」
「いや、たぶんまだ1年くらいだ。で、君は誰なんだ?」
「ふっふっふ…。良くぞ聞いてくれた!花の16でこちらへ転生してきた超絶美少女!今は絶賛六代目魔王やってるシェイナ・ドビンバーンとは私のことだー!!」
えー…。この頭緩そうなのが魔王なの…?
「ちょっときみぃ?今疑ったよね?」
「イエメッソウモゴザイマセン」
「ま、いいわ。さて、あなたを呼んだのも他でもないわ。人間と戦争を起こすわ」
な…?
「お、おい!お前わかって「はいはーい!おーちーつーいーて」
俺の言葉は遮られた。
「もちろん。私だって本気で滅ぼそうなんて思ってないよ。ただ、人間が攻めてくるって言うんだよねぇ…。ほら、わかるでしょ?部下達にさ、面目つかないってか…」
うーん…。それはわかるが…。
「ま、基本は防衛だよ。殺しはするさ。でも、あくまで守るためだけ。どう?わかってくれる?」
まあ、守らねばこちらが殺される。仕方がないことか…。
「で、その情報は確かなんだろうな?」
「確かも確か。初代魔王の頃から仕えてる魔人君の情報よ?」
「初代の部下は初代の部下だろ?本当に大丈夫か?」
「あー大丈夫大丈夫。私ら魔王って、その辺緩いのよ。魔王ってのは引き継ぎ制みたいなもんで、魔王の子が産まれると能力とか記憶とか全部コピーされるのよ。で、そこに新しい子供の記憶が混ざるって感じ?ま、よくわかってないけどねぇ」
ほんとに大丈夫なのかこいつ…?
「まあいい。で、俺を呼んだ理由はなんだ?」
「あー!そーだったね!なんか楽しそうなことしてる骨がいるって言うじゃない?拾ったら同郷じゃん。イマココ」
「えーっと…。つまり…?」
「ごっめーん!あんま考えてなかった!」
あーうん。
コイツだめだわ。
某MTGは関係ありません。
てか、魔王様のキャラぶれっぶれな気がしてこわい