13話「防衛戦」
迂闊だった。
見せかけでも柵を取っておくべきだった。
慢心していた。
攻められる可能性。責められた際の対処法と予防法を教えるべきだった。
柵をすべて取っ払った深夜。
皆が寝静まった時に奴らは攻めてきた。
緑色の皮膚に、子供程度の大きさの人型モンスター。
ゴブリンだ。
ゴブリンがゴブリンの集落を襲いに来たのだ。
その数は10匹程度。
何故同じ種族同士で争うのか?
理由はわからないが、奴らは攻めてきた。
柵がない今、一軒の家が気づかないうち襲撃された。
不幸中の幸いか、家を建て直したためすぐに崩れるような様子はない。
物音に気づいた俺達は、その家を守りつつ、非戦闘員を集会所へ集めた。
集会所の周りに戦闘員を配置し、俺とスカルを含めた先鋭ゴブリン何匹かで襲撃された家へ向かった。
べロスは集会所へ預けてある。
クソ。なぜ狙われた?これが普通なのか?
考えても仕方ない。今は襲われた家主達を助けることが優先だ。
おそらくこちらのゴブリンと敵のゴブリンの強さは互角。
俺とスカルが頑張るしかない。
事前にゴブリン達には深追いさせず、ヒットアンドアウェイで時間を稼ぐように指示を出してある。
その隙に俺らが倒す作戦だ。
「スカル。俺の武器にもエンチャント出来るか?」
「自分のより効果時間少なくなるかもだけど、多分できるよ」
「十分だ。助かるよ」
少しでも威力は上げたい。
速攻で決めなくては、ゴブリン達がバテてしまう。
この際家が崩れようと関係はない。
人命。ゴブリン命?が第一だ。
さて、まだ奴らはコチラに気づいていない。
まずは二匹。俺とスカルが気配を消して首を刈る。
そこでやっとコチラに気付いたゴブリン共。
さあ来いよ。
敵が動くまでこちらは動かないよう指示をしている。
知能の低いゴブリン共だ。敵を察知したら攻撃対象をすぐに変えた。
家からすべてのゴブリンが離れた。
その隙に、家主達を逃がす。
逃げ出すゴブリン達に目もくれず、こちらへ攻撃を仕掛けてきた。
よし。今のところは全て上手く行っている。やはりゴブリン達は指示を出すものが居れば上手く動いてくれる。
一匹のゴブリンが、俺目掛け棍棒を振り上げた。
動作が大きい。避ける必要もなく、足払いに蹴りを入れる。
そのままコケたゴブリンへとどめを刺す。
これで七匹だ。
スカルも上手く倒したみたいだ。
これで六匹。
こちらのゴブリンはうまく動いている。
直接戦闘を避け、上手くあしらっている。
よし。この程度なら敵ではないな。このまま殲滅だ。
すべての侵入者を倒すのにかかった時間は、そう多くなかった。
こちらの被害も少なく防衛は終了した。
ふぅ…。問題が出来たな…。
翌日。柵の再設置作業を一時中断させ、襲撃への対策を話した。
対策といっても幼稚なものだがな。
一つ。交代制で集落の四方へ見張りを着ける。
これにより、奇襲はされにくくなるだろう。
そしてもう一つ。武器の作成。
ゴブリンの主装備は棍棒だ。これを変える。
防衛ならば弓が良いだろう。
荒い作りだが、矢を飛ばすものは作れた。無いよりはマシだろう。
ゆくゆくは櫓でも作り、見張り兼射場に出来ればいいが後だな。
近接武器も変更だ。
棍棒のような重いものより、槍にした。
木の棒に石の矛先を付けた粗末なものだが、殺傷能力は言うまでもない。リーチが長ければそれだけ有利だからな。
武器の作成には時間を取られた。素材を新しく入手しに行ったからだ。
その間毎晩襲撃は続いた。
見張りをつけたおかげで、最初よりは楽だが、日を重ねるごとに数が増えた。
無傷で守るのも限界を感じる。
武器の作成を急がせる。
そしてついに完成させた。
効果は劇的だ。
近づかせることなく終わった。
それ以降、攻めてくることはなくなった。
いかに知能が低くとも、ここまで力の差を見せようやくわかったらしい。
この集落にたどり着いてはや一ヶ月。
ようやく集落強化計画を遂行出来るな。
だがまあ、いい事もあったさ。
「ツギ ドコ ハコブ」
一ヶ月聞いていたため、なんとゴブリン語を習得したのだ。
と、言っても話す機能のない俺たちは、結局ジェスチャーなりで伝えるしか無いがな。
会話が消えてきた気がするが
気のせいだと思いたいネ!