9話「スカルの魔法講座〜1限目〜」
肋骨が生えることが分かったから、たまに自分の骨を犬に与える。
なのだが、俺の身体に噛み付いてくる…。
これも一種の愛情表現なのか…。
「ねぇねぇ。この子なんて名前にする?」
「そうだな。いつまでもいぬっころってのは可愛そうだし…」
転生して二度目の名付けか。
モンスターが飼ってる犬だからな。それっぽいのを付けてやろう。
ケルベロス。
うーん…。いかつそうな名前だな…。
こいつには似合わない。
少しモジって、べロスならどうだ?
どことなく響きが可愛くなった気がする。
後はいぬっころと俺の相棒が気にいるかだな。
「よし。べロスってのはどうだ?」
「うん!ケルトは名前付けるのが上手だね!」
スカルは気に入ったようだ。
では、肝心のいぬっころもといべロスは。
俺の足を今まで以上にガジガジ噛んでいた。
嬉しくてやってるのか、気に入らなくてやってるのかわからないが前者と捉えよう。
「よし!改めてよろしくな。べロス」
頭を撫でたら親指が無くなったが気にしないでくれ。
さて、そんな事をしつつ平原を歩くが、景色が変わらぬ。
どこまで続いてるんだ?
いい加減景色にも飽きてきそうだ。
ああそうだ。スカルに聞きたいことがあったのだ。
「そうだスカル。魔法教えてくれるって言ってたよな。今からじゃ無理か?」
戦闘の選択肢が増えることはいい事だ。時間のあるうちに覚えてしまいたい。
「うん。ケルトならきっとすぐ覚えれると思うから大丈夫だよ。そもそも魔法ってのはね、魔素を元に作ってるんだ。だから、まずは魔素のコントロールから始めないと覚えれないの。ということで、まずは魔素コントロールからやろっか。それが出来たら具体的な魔法について説明するよ。えーっと、何かいいのは…。あったあった」
魔素のコントロールか。いったい何を始めるのだ?
スカルは、近場にあった大きな岩へ移動した。俺もそれに付いていく。
「ねえケルト。ケルトはこの岩砕ける?あ、素手だけでね。道具とかはナシだよ」
正真正銘の岩。これを素手で?
「いや、無理だろう。岩じゃなくて腕が砕けてしまう」
「ボクは出来るよ?」
そう言うと、スカルは手刀で岩を突いた。
スカルの腕は砕けることなく、岩に突き刺さった。
「ね?これが魔素をコントロールするってことなの。魔素は僕達の身体中を巡っていて、意図的に一箇所に溜めると力とか強度が増すんだ。だから腕は砕けず突き刺さったの。でね、ケルト」
ほぉ…。これは使えそうだな。攻撃だけじゃなくて、防御にも使えそうだ。
「えっとね。腕抜くの手伝ってくれないかな?」
なるほど。何だか焦ってると思ったら抜けなかったのか。
岩を突いたときはカッコイイと思ったが、ぬけてるな…。
「気をつけろよ」
「ごめんごめん」
結果的に、抜けなかったから腕は諦めて折った。
岩に突き刺さった白骨の腕という、なんともおかしなスポットが出来上がった瞬間である。
「コホン。じゃぁ具体的なトレーニング方法を教えます」
隻腕になった、スカルは一度咳払いをして説明を始める。
「まずは自分の中の魔素の流れを感じてみて」
と、言われてもなぁ…。
まあ、何となくでやっていくか。
時間ならいくらでもある。
歩きつつ、身体を巡る魔素を認識できるよう意識を向ける。
要は酸素が循環してるようなもんだろ?それを認識するだけだ。
普通無理だがな。
集中…。集中だ…。
「グボァ!!」
またべロスに骨を持っていかれた!!
ん?なんだ?今折れた部分から何かが出た気がする…。
今のが魔素か?
「だ、大丈夫?ケルト?」
「ああ、べロスのおかけで何か掴んだみたいだ!」
一度コツを掴んでからは早かった。
自分の中で魔素が巡るのがわかる。
「よし。スカル。なんとなくわかった気がするぞ。ほら、サクッと覚えてやるよ」