8話 説明された、お菓子も食べた
五日間連続更新の四日目です。
今回は説明回なので、覚悟して読んでください……!
12/10 ポイントの設定の修正と説明の修正をしました。
数字で頭がどうにかなりました。
「さあ、本格的に委員会と能力について説明していくぞ。
大仁くん以外はもう常識になっているかもしれないが、復習だと思って聞いてくれ。
それと、フォローも出来たら頼む」
そう言うと、ノートの表紙をめくった。
そこには前回も見た表があり、それを上から指で示していく。
「上から順番に、風紀委員会、体育委員会、生徒会、学校歴史委員会、ボランティア委員会、交通委員会、学級委員会、選挙管理委員会、放送委員会、保健委員会、美化委員会、植物委員会、図書委員会だ。
現在は全部で、十三委員会ある」
この時点で大仁は苦しんでおり、隣にいる逸勢と
「これ、全部覚える必要あるんっすか?」
「基本的には覚える必要はないと思うよ」
「あ、よかったっす……」
などとヒソヒソ会話していた。
その会話を受けて、会長はうなずく。
「確かに、逸勢が言うように全部を覚える必要はないと思う。
もちろん、覚えられるなら覚えていた方が得だがな。
まあ、とりあえず、上三つを覚えておけば良い」
上三つの委員会は、風紀委員会、体育委員会、そして生徒会である。
それを見ていた大仁が、挙手して質問をする。
「あのー、これって何の順番なんっすか? 委員会の名前の左に、数字が書いてありますけど」
「これは昨年度の委員会の順位だ。毎年、風紀と体育と私たち生徒会は、上位争いを繰り広げているんだ。
よし、じゃあちょうどいいから、その順位付けとポイントについて説明しようか」
ノートを数ページめくる。
「まず順位についてだが。大仁くん、前に一位になるとどうなるか、教えたな?」
「はい。確か、学校がなんでも望みを一つ叶えてくれる……でしたっけ?」
「その通り。だけどな、その望みを一つだけっていうのが、大切なところなんだ」
これを聞いて、大仁が珍しく悟る。
「もしかして! 委員会でまとめて一つっすか!?」
「ご明察。委員会のメンバー一人一人の望みを叶えてくれるわけじゃあないんだよ。
だから、いざ望みを決めるときに、内部分裂することも珍しくないんだよ。
その分裂を防いだりするために、委員長がいるんだが……。委員長についてはまた後で説明するよ」
だけどなと、ノートをわかりやすく見せながら話す。
「委員会はそういうデメリットよりも、メリットの方が多いと思うんだ。
高順位を狙うためには、他の委員会よりもたくさんポイントを集めなきゃならない。
そのポイントは、委員会に入ってないと自分自身のポイントだけでしか評価されない。
だけど、委員会に入っていると、そのメンバーが稼いだポイントの合計で評価されるんだ」
「え、それって、委員会に所属しているほうが圧倒的に有利じゃないっすか!」
「その通りなんだけど、さっき言ったように、自分自身の願いが必ず叶えられるとは限らないからな。
それに、まあめったにない事なんだけど、個人でものし上がってくる人がいるからな……」
この言葉に、逸勢と空海の顔色がサーッと青くなる。
それを心配そうな目でみつめる淳和と、一匹狼カッコイイ……と思っている大仁。
「とはいえ、やっぱり委員会は大切なんだよ。
それで、次はそのポイントについて話さなきゃか。
というか先に話すべきだったかなあ」
そういうとノートを逸勢にパスした。
「じゃあ次はお前が頼む」
「僕ですか!?」
「ああ、俺より説明上手だろ? そして、空海よりも話すのが上手だ」
「私だってー、それくらい上手く出来ますよー」
「いえ、本当に先輩は結構っす!!」
空海に渡りかけたノートを大仁が全力で取り返す。
不満そうな空海をそのままに、逸勢がポイントについて説明を始める。
「えっと、ポイントは、獲得できる状況が二つあるんだよね。
一つ目は、勝負開始の合図の後に勝敗が決すること。
これには、双方が合意したっていう前提が含まれているよ。
あ、ちなみに、勝負の内容って、実はなんでもいいんだよね。命がかかってるとか、そういう物騒なこと以外は、ね。
そして、二つ目は、合意を得ていない相手を一回だけ攻撃して、戦意を奪うか、意識を奪うか、とにかくその一回だけで決着をつけること。
つまり、不意打ち、奇襲ってことだね。
これにはデメリットもあって、その一回が失敗したら、不意打ちをかけられた側が出す条件で、正々堂々と勝負を受けないといけなくなるよ。
この二つどちらかの場合で、ポイントが獲得できるよ。」
「補足すると、増減するポイントは基本的には相手の人数×10ポイントだ。
細かく言うと、一対一の場合は、合意してやるやつで勝った場合は10ポイント。負けた場合は-10ポイントだ。
そして、奇襲した場合も同じだ。奇襲が失敗したら、さっき言ったとおり、そこから先は普通の勝負になるから、難しく考える必要は無いな。
だけどな――」
「ほえー」
武留会長の言葉をさえぎり、身の入っていない返事をする大仁。
それは真剣に聞いていないからではなく、処理が追いついていないからだ。
大仁の視界には今、色々な数字が浮かんで見えている。もちろん幻だ。
その数字が好き勝手に飛び交い、暴れまわる。パニックパニック。
「……少し休憩するか。ちょうど今日はな、パンダのサンバの期間限定白桃味を買ってきたんだ!
甘い物でも食べて、ゆっくりするといい」
そう言っておもむろにカバンから六箱取り出し、一箱ずつ渡し、会長自身の手元には二箱残した。
六角形の箱をベリリと開けて、可愛らしいパンダが印刷されたお菓子を食べ始める。
それを見てちょうどいいといった感じに、淳和が口を開いた。
「私は皆さんにお茶を持ってきましたよ。今の時期にぴったりなココアです!」
その言葉に逸勢と会長が吹き出す。
パンダのサンバ(白桃味)が散らばる。
「え、春のぽかぽか陽気に、ココア!?」
「しかも、お茶じゃないしな」
だがしかし、その言葉には首をかしげて
「えー、ココアは春から夏にかけてが一番美味しいですし、れっきとしたお茶ですよー!」
と、主張をするだけだった。
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「さて、休憩もそれなりに取ったし、大仁の頭も正常に動き始めたから、説明をまた始めようか。
とりあえずはさっきの続きだな。
ポイントについてはもう少し細かい設定があってな……」
逸勢からノートを受け取って、めくる。
「ポイントは、基本的にはさっき言った数で増減をするんだが、あくまでそれは一対一での話なんだ。
例えば、合意のやつで一対二で戦った場合、二人の方が勝った場合はそのまま二人に、それぞれ10ポイントずつ入る。
ここで大切なのが、委員会としてみても、10ポイントしか入らないって所だ」
「え、でもさっきメンバーが稼いだ合計って言ってたっすよね?」
「ああそうだ。正確にはその勝負で一人が得たポイントの合計ってことだ。
そうしないと、大勢で勝てば勝つほど大量のポイントが手に入ってしまうだろ?」
「な、なるほど……」
わかったのかわかってないのか、どちらとも判断しにくい声のトーンだ。
「続けるぞ? 対して一人のほうが勝った場合では、その一人に20ポイント入る。これは委員会としてみても20ポイントの獲得となる。
こうすることで少人数委員会や無所属の人でも、上位に上がれる可能性があるってことだ。」
「なるほど! ようやくわかった気がします! でも、これは少人数の方が勝つ事が前提になってないっすか?」
大仁もようやく頭が慣れてきたのか、それとも甘い物パワーなのか、鋭いところに気が付いた。
「その通りだ。で、ここで大切になってくるのが、負けた側のポイント減少なんだ。
さっきの例で言うと、二人の方が勝ったら20ポイント獲得するが、逆に負けてしまったら-20ポイントだ。
だけど、一人の方が負けたとしても、減少するポイントは無いというルールになっている!
結局、勝負は多勢に無勢ってことだ。基本的には人数が少ないほうが負けやすい。」
「すみませんっした……」
「ああ、いや。責めているわけじゃあないさ。
最終的に大所帯が勝つみたいな状況を防ぐ為にあるこのルールを、身をもって学べたわけだしな。
それに、次はしっかりと勝ちを取ってきてもらうからな!
しっかり30ポイント! 獲得してもらおうか!」
責めるつもりはないと言いつつも、プレッシャーをかけていくスタイル。
「まあとにかく、数で負けている時はポイントの減少が無いってことを覚えておいてくれ。
かと言って、常に数で負けていると勝負自体に勝ちにくくて、なかなかポイントを獲得できない。
だからといって常に大人数だと、何人もかけて数10ポイントしか獲得できないし、万が一負けた時には大量にポイントを失う可能性もある。」
「えー……つまり……どういうことっすか……?」
必死に考えているようだが、まとまめることが出来ていない。
「うん、難しいよな。結局、どうするのが効率がいいか、私も、というか大体の人はわかってないと思う。
とにかくわかっていればいい事は、何度も言っているが、少人数で負けた場合はポイント減少が無いって事だ。
そして、ずっと少人数だとほとんど勝てないって事もだ。
結局、同数勝負が一番良いのかもしれないな」
その言葉をゆっくり受け止め、そして理解してうなずいた。
「もう少し細かいこともあるんだが、これは簡単だから安心してくれ。
一つは、全員の初期ポイントは100ポイントということ。
もう一つは、ポイントを確認する方法は、自分の学生証を見るだけだということだ」
そこまで言い終わって、ノートを見返す。
「たぶん、ポイントに関してはこんな感じだと思うが……。何か質問は?」
「あの、俺、委員会に入る前に角眉先輩に倒されたと思うんっすけど、そのポイントってどうなりますか?」
「あー……。それは、委員会に入っている間は合計ポイントとしてはカウントされない物になるな。
だから、その委員会の中で戦い続けて、ポイントを稼ぐという方法は取れないのさ。
だけど、そのポイントは消えたわけじゃあなくてだな。この場合だと、逸勢が持つポイントとして残っていて、大仁くんは10ポイントを失っているわけだ。委員会を抜けたりしたら、しっかり反映されるぞ」
「なるほど……ありがとうございます」
何か大仁くんが僕を凝視しているような気がするのは気のせいだ、と、逸勢は思い込むことにした。
「さて、ここまで長々と説明してきたが、基礎となることは一応、次で最後だ」
ノートをパラパラめくる。
最後という言葉を聞いて、会長に見えない位置でガッツポーズを決める大仁。
が、もちろん会長には見えており、その証にガッツポーズを決めた手にスポットライトを当てられていた。
「その最後というのはな、委員長についてだ。さっきもちょっと話に出てきたな。
まずは、委員長の見た目の違いから話そうか。まあ、違いといっても委員会章が金色ってことくらいなんだけどな」
「あ、本当だ!」
「うむ、お手本のようなリアクションだ」
強調する為に、自分の委員会章に光を集める。
「委員長は金色、その他の委員は銀色なんだ。
見た目は本当にそのくらいの差しかないんだけど、出来ることがちょっと多いのが委員長だ。
俗に言えば委員長権限というやつだ」
「委員長権限……!」
語感が気に入ったのか、大仁は口に出して繰り返す。
「と言ってもその内容は、自分の委員が受けた勝負で、代わりに負けを認めることが出来る代理降参と、委員長のみが出席できる委員会会議への出席権……くらいなものだけどな」
「なるほど。簡単で助かりました……」
大仁がほっとして髪を直す。
「お、余裕があるな。じゃあついでに委員会章の話でも……」
「ああああああ! 無理無理! もう精一杯っす!」
ノートを能力で引っ張って、自分の腕の下に隠す。
「はは、冗談だよ。今回は基礎的な、どうしても必要な物だけ話せればよかったからな。
後のものは、必要になったときに話していくくらいで十分だろう」
部屋の明かりを勉強用から、普通の照明に戻すと、席から立ち上がった。
「さてと、ずっと話しっぱなしで疲れたし、足腰が痛いし、帰るかぁ」
手を頭の上で組んでぐっと伸ばす。
会長はそのまま大きなあくびをすると、お菓子の箱をしまって荷物を持った。
「はいはい、今日の委員会はここまで。お疲れさんー」
「お疲れ様」
「お疲れ様ー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様っす! ありがとうございました!」
各々が動き出す。その様子を満足げに見守る会長。
それを見た大仁と淳和は
「あ、先輩方、お先にどうぞ」
「あとは俺たちが片付けておくんで!」
と、気遣いを見せた。
しかし、それに対してやや申し訳なさそうに
「あ、いや、君たちが先に出てくれないと困るんだよね」
と言った。
「いやいや、私たちは新入りですし、こういうことは」
「えっとそうじゃあなくてね」
「なんっすか?」
スポットライトで大仁と淳和周辺と、会長が今現在いる場所を照らす。
「君たちが出てくれないと、私、机の下をはいずって出て行かなきゃならないのよ」
「「あ」」
そう、通路が狭かったのである。
わたわたと二人が支度をして出て行き、その後ろからついて出て来た会長が、振り返りざまに
「あ、大仁くん。明日、今日やったことのテストやるからね」
と言い残して帰っていった。
会長の背中を見ながら、ゆっくり膝をつく大仁だった。
ポイントのところだけ、これから算用数字で書かせてもらいます。




