10
あれから三か月。
何かが変わったのかもしれないし、何も変わっていないのかもしれない。
けれど。
どん!
再び花火が上がり、長い間退屈そうに待ち侘びていた輪廻が顔を輝かせた。
「わああ! ねえねえ、すごいよ! 先生、甘ちゃん! すごいよ、すごいよ!」
「輪廻さん、さっきからすごいしか言ってないんすけど――すごいのはわかりましたから」
大興奮の輪廻に肩を掴んで思いっきり揺らされ、甘斗はげんなりとして答えた。
真っ暗な夜空にはこうして大輪の花が咲き、隣には誰かがいる。
「やあ、お嬢さん。夜道は暗くてかよわい女性は危険が危ないですよ? よければ、花火が終わった後で僕が送っていって差し上げましょうか?」
と、年上の美人に話しかけている鈴代を半眼で見つめて、甘斗はため息をついた。
たまに大いに後悔することもあるけれど、そんな日もある。
けれど、その明日はどうなるかわからない。
歩みさえ止めなければ、どうとでもなる。
たとえば。たまたま弟子に出された先で、こうして花火を楽しむこともできる。
「え、浅草の方にお家が? ちょうど良かった。あそこの界隈は僕の庭みたいなもので、良いお店を知ってるんですよ。よろしければお嬢さんも一緒にどうです? こうやって会えたのも何かの縁。そう、運命みたいなものですから」
ともかく――
女性からこの後の予定を聞き出している師を殴って止めるべく、甘斗は茶店の席からゆっくり立ち上がった。
どうも。こんにちは、楽浪です。
この話が時系列上は一話に相当するものとなります。
春にやってきて、もう真夏になっています。
そういえば、前の二話分は六月ですが、この話は五月の終わりになってます。
少し時間の混乱ありますね。
もう少しで話は一段落する予定です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また、次の話でお会いしましょう。




