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3話 従者という名の奴隷

 従者にならないか、かぁ。まぁ、貯金はあると言っても働き口があったほうがいいだろうし、紙袋さんも妙齢の女性だし。もしかしたらワンチャンあるかもしれないし。…でもまぁ、やるのはいいにしてもさっき監督から言われたばかりだし、条件面をしっかりと確認しとかないとだ。

 紙袋さんは僕がそんな事を考えた事を悩んでると思ったのだろう、色々と話し始めた。



「こ、こう見えても我はこの国の第七王女だ。王位継承権を放棄する代わりに多額の禄を貰っているし、冒険者もしていて充分な収入もその活動から得ている。働かなくても贅沢出来るだけの財産を築けているから、お主に支払う給料が滞る心配もないぞ。」

「そんな高貴な方がなぜお供も無く冒険者なんて…。」



 ああ、と紙袋さんは笑顔を浮かべた。…鼻が台無しにするなぁ。



「それはな、そもそも体を動かす事が好きだって事はあるのだが、王族は血統的に魔力が莫大なことが多くてな。我もその例に則っておって、それを活かさぬ手は無いと思ってな。それに、黙って暮らしていると放棄したとはいえ、金を払うのが嫌なのかそれとも返り咲く可能性があるとでも思っているのか、刺客が送られて来るのだよ。その過程で従者どもは逃げ出してしまってな。それに、刺客は冒険者暮らしになってからは送られて来ないからな、うっかり死ぬとでも思っているのだろう。そういう意味では身を守ってくれる従者は要らんし。」

「えっと、僕は今まで一度も戦った事がありませんしそういった訓練も受けてませんから、戦闘能力は全くありませんよ? 足手纏いになるかと。」



 また爽やかな笑顔で紙袋さんが、それでもいいんだ、と笑う。…鼻さえカッコよければ最高なのに…。



「鉱山で生き抜いたんだろう?素地は出来ているはずだ。従者としての教育をする過程で戦闘の手解きをしてやろう。」

「あ、いえ、まだ決めた訳では。条件面をはっきりさせましょう。それ次第です。」

「そうか、わかった。…そうだな、こちらから提供するのは、危険手当を含んだ給料、道中の食事及び、宿に泊まれる際の宿泊費、冒険者として最低限必要な装備、そして従者としての教育だな。」

「えっと、従者として着任する期間と、給料の額は。」



 初期投資なし、飯と宿に、辞めた後も活かせる教育の類…。これで期間が短めで給料がよければ中々いい条件じゃないの?と思いながら肝心の事を聞こうとすると、紙袋さんは真っ赤になって一瞬小声で、一生、とか口に出したかと思うと首を振った。



「そうだな、まずは三ヶ月だ。それで問題が無ければ一年単位で契約をしないか? それで、給料の額なんだが…。」



 紙袋さんはちらり、と僕の胸元の身分証を見る。



「鉱山ではどれ位の額を貰っていたんだ? 本人なら身分証に記載されている額を確認出来るだろう?それとも鉱山に行く前に残っていた残額とかが分からないから計算出来ないとかなのか?」



 使い方がわからないと言うと、えーと、と身分証の使い方なんかを凄い勢いで隣にピッタリとくっついてきた紙袋さんに教えて貰いながら、鉱山で初めてお金を稼いだことを伝え、鉱山に五年居た事とか稼いだ額なんかも伝えた。…紙袋さん中々いい匂いがするなぁ。



「よし、この額なら余裕で払えるな。お主が戦えるようになれば、もっとお金も稼げるだろうし尚更問題ない。一ヶ月単位だが同額を支払おう。」

「…冒険者ってそんなに儲かるんですか?」

「ああ、これでも我は高ランクな冒険者だからな。魔物の素材なんかも高く売れるし、討伐依頼やら何やらを片付けると莫大な金が手に入るからな。」



 あら、そうなの? という思いが顔に出てたのだろう、紙袋さんは苦笑するも少し頬を赤らめながら催促してきた。



「それで、お主は我の従者となってくれるのか? なってくれると嬉しいのだが…。」

「なりましょう。」

「…!」



 紙袋さんが僕に抱き着いてきた。物凄いスピードだったから、避けようもないけど、そもそも避ける気もないというか。革鎧を着てるとはいえ、剥き出しの部分とかしなやかで柔らかいし。いい匂いもするし。よし、と便乗して手を紙袋さんの背中に回し、ポンポンと軽く背中を叩いた。



「…ひょわっ!?」



 自分のした事に気付いたのか、真っ赤になった紙袋さんはガバッと離れてアワアワしている。…せっかくいい感触だったのになー。仕事も決まって万々歳、と言いたいところなのだけれど、さすがにもう眠くて仕方がない。僕はそういえばお互い名乗ってもいないなぁ、と思い出し、名乗りを上げた。



「ええと、王女様。僕は五島 健人(ごしま たけと)です。よろしくお願いします。」

「あ、ああ。我はオリビア・リジェレーンだ。それでは契約を結んでしまおう。」



 紙袋さんは何かを呟きながらハンドサインのようなものを何度か繰り出すと、光がその手から色々な形で噴き出しては僕に向けて幾つかの層を形成した。最後に紙袋さんが両手を前に突き出すと、その手の間から僕に向かってその層を突き抜けて光が迸った。それは首の下で首輪の様に丸まると、首の中へと消えて行った。



「よし、これで完了だ。ふふっ、これでお主は最低でも三ヶ月、我のものだ。」

「もの、って。」

「ああ、制約はありえないほどとても少ないが、一応奴隷契約だ。まぁ、我から一定以上離れられないだけだから心配はいらん。」



 紙袋さんは真っ赤になって嬉しそうに言ってるけど……今度は本当に奴隷ってかー! 従者って奴隷の事なの!?とか聞いてみるも、本当は違うらしいんだけど僕に相当側にいて欲しいというか逃げられたくないらしい。奴隷契約の魔法自体特殊であまり使える人もいないらしいのになぜこう偶然にも紙袋さんが使えるんだろう…。

 まぁでも、なってしまったものは仕方がない。高給取りだし、三ヶ月後に更新の是非も決められるわけだし。取り敢えず、非常に寝たい事を告げると、なぜか紙袋さんはもう赤を通り越して黒っぽくなりながら長い事フリーズしたかと思ったら、僕を抱えて超絶ダッシュし始めた。あばばばばばばば。


 物凄い勢いで流れていく景色と加えられるGに意識を半分飛ばしながらも辛うじて紙袋さんにしがみつくと、少々柔らかい感触が手のひらに感じられたりもしたんだけど、正直堪能する余裕なんかは全く無かった。恐らく宿だろうという施設に飛び込まれた後、震える体を立て直そうと踠いている間に部屋へと連れ込まれたらしく、背中に少々硬いもののベッドらしき感触を感じた。

 何事かを小さな声で囁きながら紙袋さんは僕の服を脱がしたり匂いを嗅いだりとか忙しそうにしている。これから起こる事は男ならウェルカム的なアレだろうと思い、紙袋さんの髪を撫でてみたりとか抱きしめてみたりとか思いついた事をしていく。…意識が飛びそう、飛びそうと思いながらあはーん的な感じにというかしっかりと乗られながら途中で僕の意識はブラックアウトしていった。気持ちイイ?うん、えがった…。



◇◇◇◇◇



「はっ!?」



 ガバリ、と毛布を押しのけて体を起こすと、当然服は何も着ていなかった。そおっっと隣に視線を向けてみると、僕が急に飛び起きたせいで目が醒めたのか、紙袋さんが体を起こして目を擦りながらどうしたの?とばかりに首をかしげていた。

 くはっ、お胸様がっ!素敵なくびれがっ!思わず手を伸ばしてしまった僕を責める人は居ないだろう。むにむに、とお胸様を触ると、紙袋さんは真っ赤になってもうっ、とばかりに毛布でお胸様を隠した。



「…おはようございます。」

「おはよう、タケト。」



 真っ赤になりながらも嬉しそうな紙袋さんはやっぱり鼻がとても台無しにしていると思う。マスクとかこの世界に無いんかな。

既に空は白んでいて、そのまま起きる事にした僕は身を寄せて来た紙袋さんを抱き締めてみた。…ムラムラしちゃって致してしまったのは若い男子なら仕方ない事だよね? 昨晩までDTだったとしてもね?

 それでも紙袋さんは早速僕に戦闘技術を仕込みたいという気持ちがあったらしく、二回戦には突入せずに夜に貰っていたらしい水を紙袋さんが魔法で少しあっためて、体を拭ってから宿の庭に出る事になった。

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