おんなのこ
だれともね おとこのひととはね
そんなおはなし できないのね
さみしいのね
あたしはいつも
すごーい とか
カッコいいー とか
えー それでそれで? とか いって
おとこのひとが きげんよくなるように
ことばを えらぶのね
そして じぶんは バカで
なあんにも しらない
ちっちゃいこ みたいに するのね
にこにこ ふわふわ してるのね
そうすれば ぜんぶ まるくおさまって
みんな しあわせ
それが おんなのこの やくわり
だけどね あたし
ときどきだけど
宇宙の真理や
生命の価値や
生きる意味とか
弱者のルサンチマンや
永劫回帰
そういう いろんな わからないことを
おとこのひとと おはなししてみたいと おもうのね
だけどそうしたら
りくつっぽい
かわいくないって
いわれて それで おしまい
みんな ふしあわせ
だから あたし
口を ぱくぱくさせては
あぶくみたいに からっぽの言葉を ぷかぷか吐くの
まるで 金魚みたいに
ぱくぱく ぷかぷか ぱくぱく ぷかぷか
ああ あたしは クジラならよかったのに
どんな魚より 大きな大きな身体で
堂々と 海を泳ぐの
大きな大きな口をあけて ぜえんぶ なにもかも
海の水ごと のみこんでしまうの
だれになにを言われても そんなこと かんけいないの
海のなかで いちばん 自由なの
だけどざんねんながら
あたしはクジラじゃなくて ただの おんなのこ
だから
うそー とか
まじむかつくー とか
超ヤバイー とか いって
へらへら ぷかぷか
わらって いるのね きょうも
とても なんだか さみしいのね