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第六十話『昔話』

「そう偉そうなこと言っても、咲自身あまり詳しくわかってるわけでもないだろうけどね」

 優羅はやれやれと手を振る。

「わかってることだけでも聞いておいて損はないだろうし、ま……当然話すのは私じゃなくて咲なんだけど、……だってめんどくさーー、えっと咲の方がこういう話は向いてると思うわけよ……」

 いたずらをした後の子供のように優羅はうつむきぎみに咲の顔を見る。

「そんなに怯えなくても、何もしないわ……、まあ納得はいかないけど。いい加減話進めないと……、今の時点で、大分時間かかっちゃってるし……」

「もう気にしたら負けだと思うけど……」

 僕がそういうと咲は呆れた顔をする。

「ふう、どうして当人がそんなにのんびりしてるのかしら……。まあ、それくらいで丁度いいのかもね、それがあなたらしいとも思うし」

「はあ……? 俺らしい……ね」

 なぜか恥ずかしくなって、咲から目を反らす自分がいる。

「ふふ、そうかしら。とにかく私は知っていることを貴方に教えましょう。そうね、じゃあ貴方が記憶を失う少し前から始めましょうか」


「――とりあえずはそんなところかしらね」

 咲の話したことはそんな難しいことではない、ただそう簡単に納得できる話ではなかっただけで。

 まとめると長い話ではない。僕の暴走は『未確認物質』という組織によって仕組まれたものであり、超越者がこの世界にいる限り、あの事件はなくてはならず、ただそのために利用されていたのがウェイブ、つまりは流であった、というだけ。

 ダン!! 床をグーで叩く。

 手が痛いだけで、その行動に意味なんてない。

 ただ、どうして今頃……あいつは。

 どうしてそれが自分の所為だと……。

「……読人、読人? どうしたの?」

 かすかな咲の声がに、嫌な考えを打ち切る。

 まだそれは推測に過ぎないのだからと自分を誤魔化した。

「いや何でもない。ごめん、ごめん」

「そう、……ならいいんだけど、それより問題はこれからのことなのよ。そうでなくちゃこれを今話す必要なんてなかったわけだしね。わかってると思うけど、このことは絶対に外で話しちゃだめよ。組織の中でもほんの一部しか知らないことなんだから」

 真剣な目で咲はそう話す。

「まあ、咲に話しちゃったのは私なんだけど」

 舌を出して優羅が笑う。

「あの時はただの興味本位だったけど……、聞いて後悔はしたわね……。あっさり教えちゃだめでしょ……」

 咲がギロリと優羅を睨みつける。

「いやまあ、だれでもかれでも教えたりはしないけど……あはは。でも、まあいいじゃん? こうやって読人の役に立てるんだからさ」

「そう言われると……あれだけど……」

 なぜかだんだん咲の顔が赤くなって、一度ぶるりと震えると元に戻った。

「読人ごめんねー、咲はまだまだ乙女だから。いやまあ見た目は完全に乙女なんだけど、中身は実際、ババ……、ごめんなさいッ!!!」

「いいわよ……、とりあえずそれは後よ」

 ピクピクと咲のこめかみが動いている。あ、後でってなにが待ってんの……、優羅ががくがくとおびえていた。

「とにかく問題は、どうして貴方を暴走させる必要があったのかってことなのよ。それにウェイブ……流さんが、今貴方に正体を明かした理由もわからない以上うかつにうごけないし」

 咲は首を傾げる。

「とにかく私の持っている情報はこれだけね。私個人でも調べては見たけど、優羅が調べた以上のことは出てこなかったわ」

「ま、そうだよねー。完全に把握してる人なんて、手の指ほどもいないと思うよん。それに今はそれだけで十分」

 のほほんとした顔で優羅はそう話す。

 そして僕と咲が何か言う前にこう話した。

「ま、他にも知ってることはあるけど、まだ知るべきじゃないだろうし、話してないじゃなくて、話すべきじゃないからね」

 今まで何度もふざけていたのに、本当に真剣な表情だった。

「はあ、ま、そういうことらしいから、読人は自分で答えを出すといいよー。君がその答えを信じるかぎり、私は君を信じるから。君はチカラを持ってるんでしょ」

 まるでスキャナではなく、修羅のように、昔僕を追い詰めたセリフで、僕を肯定して、なにもなかったように笑いだす。

「私らしくないね、こりゃ」

「確かにそうね。でも優羅の言うとおり、私も貴方が本当に悩んで出した答えなら、それを裏切ることはしないわ」

 けらけらと笑っていた優羅は疲れたように大きく欠伸する。

 空は晴れているが、現実では今真夜中なのだろう。

「あとは貴方の宿題だから、きちんと考えておくのよ、きっと日は近いから。ま、今日はここまで答え合わせはまた今度かな」

「外で話しちゃだめなんだから」

 咲に漏らしてしまった優羅がそう言うのもあれだが、本当は咲に話したのもうっかりではなく故意なのだろうな、不意にそう思った。

「はいはい、気をつけますよって」

 だから僕の口から出てきたのはそんな言葉で、

「じゃあ元の世界に戻すから、あー読人は慣れてないから目つぶってた方がいいかも」

 何言ってんだ僕は……、なんて思っている間にもとの世界に戻っていて。

 「おわわわわっ」

 そして気付いた時には僕は咲を押し倒して、部屋にはパチーーン!! という音がに響いていた。

いつの間にか六十話達成。

だんだん書くのが遅くなってる気がします……。

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