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第五十七話『ここはどこ?』

「知らないふり……ね」

 その言葉が何を指すのかまだわからないが、気付けば僕は咲の言葉に強く頷いていた。

「そう、ならいい。じゃ、さっそくだけど優羅、お願いできる?」

 微妙な表情で頷いた優羅は一歩前に出て、僕と咲の手を掴んで言う。

「準備はいいか?」

「あ……えっ準備って」

 返事を言う前に、僕の意識はどこかに落ちた。


 次起きたとき、なぜか僕は見知らぬ草原に一人ぽつんと立っていた。

「う……あ……うん。あーがんがんする。……あーどこだ、ここ……? 何だったんだっけ?」

 体に異常はないが、周りにはあまりに異常な風景がひろがっていた。とろけたもの、切り裂かれたもの、四角いものや、丸いもの、様々な状態なのに全て時計なのだ。それらが所々に点在しているのだ。 まるで有名な誰かの絵の一部のようなそれは、視力の届くギリギリの範囲にまでに数多くある。

「どこというか、何だこれ、んー、あー……」

「そういや部屋に居でだらだらしてたら、咲が来て……」

 なぜ自分は今こんなところにいるんだ?

「そもそも二人はどこにいったんだろ?? いないよなあ」

 見回しても近くにはいないようで、今わかることは、ここがただの現実ではないことと、ここに連れてきたのは二人、もしくはそのどちらかであるということくらい。

 あとは彼女らか、彼女のどちらかは『個人』は、空間を転移するようなのチカラであるくらい。そして、そういう能力者は現実にいたことは、残っている知識が無機質に肯定している。なのにそれが誰かは丁寧に忘れているのだ。

「――もどかしい」

 記憶を無くさなければ、そんなことを思う。

「ん?」

 誰もいなかったずなのに、とんとんと誰かが背を叩く。

「おーい、どうしたの? 俯いちゃって」

 そこにいたのは優羅だった。

「あー無視しないでよー、さては今時の若者ですか、年輩者は敬わない感じですか。ああ嘆かわしや嘆かわしい」

 優羅ってこんなやつか?

「いや、別に無視はしてな……」

 近づいても、やはり優羅は優羅だ。

「何してんのーっ。ツンツン、ツンツンとかいじらしくつついてみたりしてさ。てかねえねえ、ねえねえ、なんか言ってよ。……私一人じゃあ、間ぁ持たないよ、このままじゃ空気悪くなっちゃうよ。それでいいの、いいのったらいいの? いや良くないよね、だめだよ! だから来て、乗ってきて、読人ー、読人くーん! 読人くーん、帰ってきてよー! カムバック! カマン、カマンだよ!」

 早口で話す彼女の顔は、さっきからずっと、興奮しているせいか彼女の顔は徐々に前進してきていて、今では目と鼻の先にある。

 そのことに僕が何か言おうとしても、彼女の早口に上書きされて届かない。

「……てか、読人、顔近いよ。破廉恥だよ、変態だよ」

 そしなぜか非難の目を向けられている。

 呆然と眺めていると、

「……視姦?」

 今度はそんなことを言う。

「まあ、とりあえずこれくらいでやめとくけど、これ以上やったら元に戻ったときに死にたくなりそうだし、おちょくるのもあきてきたし……、まあでもあんまりそんなことしちゃダメだよー、知らない人が見たら眼を付けているようににしか見えないんだからー」

 彼女はあははと笑っているが、半分くらい意味が分からない。

「ははは、やっぱそんな反応だよね~。キャラ全然ちがうもんね」

 あははは~と、笑いながら彼女は頭をぽりぽりと掻く。

「ん~何も知らない人には説明するの面倒なんだけど。こういうことはあっちの間にやっといてほしかった、そういや渡した奴には書いてなかった?」

「記憶無くす前のこと書いてるやつ?」

 完全には目は通せていないが、身近にいた彼女の項目はしっている。しかし特に何も書いてなかった。

「あーそれそれ、それだけど、あーそういや隠してたんだっけ。あれ組織のやつだし、たぶん書いてないか。ん~えっと……あ~しゃあない」

 優羅は腕を組んで何か考えている。

「……うーん、しかたない。大分内容は端折るけど、やっぱ話すよ」

 疲れたように、彼女はふうと溜め息をついた。

「……あのね、簡単に言うと二重人格だったの。もちろん個人の影響でだし、詳細にいうと違うんだけど。まあとにかく、それで読人と会って……いろいろ思うところがあってさ、個人は消えちゃって……」

「個人が消える……」

 聞いたことがない。過去の僕を含めて僕はそのことを知らない。

「そう、それでそのままなら私の人格はひとつになるはずだったんだけど、まだ戻っちゃうんだよね。いやまあ記憶とかは元々共通だからいいんだけど……あれ、どうしたの? 変な顔して?」

「いや、……うん、なんでもない」

 記憶を無くしてから、知識を手に入れてから、知らないものがなかった。

 そんなことに今頃気付いた。

「どうしたんだろうな」

 優羅がじっとこっちを見ている。

「……悪い、本当になんでもない。話をつづけてくれ」

「まあ……読人がいいのなら、いいけどね。気になることがあるならいってよ、友だちの『友だち?』は友だちってね」

「『友だち?』なんだ……」

「いや、それはなんというか、マイナスじゃなくてプラス的な感じで、私が話すのも違う感じだし。あ~でも友だちじゃ向こうは納得しないような……まあいいけど」

 ぱんと、手をたたく。

「よしこの話はなかったってことで、元の話に戻ろう、いずれわかるだろうし、待ったげてよ、うん」

「よくわからないけど、一応わかったことにしとく」

「今はそれでいいよ。――あれそういやどこまで話したかな……? ああ、それで元に戻る条件ってのが、もう一つの私の個人が発動することなの」

 つまりはこの世界を作っている、もしくはこの世界に呼ぶのが彼女の『個人』なのだろう。

「私の説明はこんなところかな。……よくよく考えたら、そんなの後でよかったような気がしないでもないけど、説明してしまった分、もう今言ってもね」

 やれやれと手を振る。

「それよりも……ここがどこか気になるのよね……。さっきからきょろきょろしてるしさー、ちゃんと話聞いてるー?」

 図星をさされて、何となく恥ずかしくなった。

「あ、ああ……ごめん。話を聞いてなかったわけじゃないんだけど」

「まあそれならいいんだけどさー」

 彼女は頬を膨らませている。その顔が優羅のものである以上、その表情に違和感を覚えてしまう。

「あー、似合わないとか思ったなあ、それってどうなの、こう、なんて言うのかな、彼女の私と一緒にいるのに、彼氏が他の女のことを考えている時の心情みたいな」

 その例えは、わけがわからない。

「……えっと」

「……冗談なんだし、あんまり考え込まれても。困るんだけどなー、なんて」

「俺って彼氏だったの?」

 がたがたがた、後ろの方からも物音がする。

「え、いやそういうことじゃなくて、あーっと、どうしたらそうなったの!? いやいや私としても、やぶさかではないのかもしれないけど、だけどだけど……」

 だんだん優羅の声が小さくなっていき、最後には聞こえなくなったが、口はパクパクと動き、今も何かしゃべっている。

「まったーーー!」

 後ろから、聞いたことのある声が響いた。

いつもの倍の日数かかってしまいました。

次はもう少し早く投稿できるよう頑張ります。

誤字は多いかもしれませんが、おいおい直していきます。

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