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第五十六話『Are you ready?』

ぼふん、布団の上に身を投げ出す。

 今もあれでよかったのかなんて、どこかで疑問に思う自分がいる。

 思い出すことができたのがなぜか、それは過去の僕の想いの強さがあってなのか、それともほかになにか? そんなのわかるわけがない。

『守りたい』と思って、『守られて』しまった自分がいて、思い出せたのはそれだけなのに、それだけで不思議と決意できた。

 ――意味が分からない。

 これは誰だ?

 僕じゃない、それは確かで、ならまだ自分は――。

 ――なんてくだらない。

 なのにこの思考から僕は逃げ出せないのは――。

 彼女の手を払ったのは、僕で追い詰めたのもそうだ。

 ならば止めるしかないのだろう。

 でもこれは僕自身なのか?

 過去の僕ではなく今ある僕なのか。

 僕は本当を知りたい。

 コンコンコンッッ!

 誰かのドアを強く音に意識が戻る。

「今はまだ……分からないか」

 ガンガンガンッ!

「……はいはい、開いてますよ!」

 自身のノックする音で聞こえないのか、ガンガンガンとなおも音は続く。

 それでは何のためにノックしているのかわからない。

「そうだな、……今はまだ考えない方がいいか……」

 ぶつぶつと誰に言うわけでもなく、ふと誰かに相談するみたいに呟いきながら、立ち上がりドアを開ける。

 ガンッ! ひときわ大きな音とドアに何かの反動を感じた。

 つづいて「く、ううう」と唸る声がして、そこには青い着物を着た少女がいて、急に見ても何も思わなかったのは、僕が記憶を無くす前から彼女のことを知っていたからなのだろう。

 それよりも、どうも彼女様子がおかしい。ノックしていたのが彼女なのはそれでいい。

 この家は外見の割に結構強固なセキュリティがあるらしく、鍵がないと家の中に侵入するのは相当難しい。それでいて鍵を持っているのは自分以外に二人しかいないのだから、部屋に訪れる人はそのどちらしかないのだから。

「いや、まあそんなこともどうでもよくて……」

 ともかく目の前の咲は僕を見るなり目は潤ませ、力が抜けたのか、ペタンと尻餅を着くと、次は急に笑いだす。

「ああ……良かった」

「えっと……良くわからないけど、……とりあえず中に入る? ここじゃちょっと……落ち着いて話せないし」

 このままでは僕が泣かしたように見えてしまうし、それ以上に泣いてる彼女をそのままにしておく趣味もない、ともかく彼女の手を引き立ち上がらせ、部屋に招き入れた。

「ああ、ちょっと待って、布団出しっぱなしだから、適当に畳むから」

 敷布団も掛け布団も関係なしに無理やりに半分に折って部屋の端に寄せ、スペースを作った。

「うん、まあ、こんなもんでいいか……、適当に座って」

 僕の出した丸机を挟んで、ドア側に咲が座り、向いに僕が座った。

「……んで、どういうこと? ……いろいろと聞きにくかったりもするんだけど、顔を見て急に泣かれたら……、やっぱ気になるし、でも……言いたくないこともあると思うし、それは無理に言わなくていいんだけどさ……」

 僕を見て泣いた彼女の理由を知りたい。泣かせたのが僕なら、僕だけはその理由を知ってなくてはいけないと思った。

「……ふっ、ふふ、あははっ、はっははは。げほげほ、あはははっあっはっはっはは、げほげほっ」

 耐えきれないと、笑いながら咲が転げ回っていた。

「えっ……何が……えっどうなって……」

「……なんて顔してるのよ。もういいわ、もう何でもない。うん、読人、貴方は記憶を無くして、私は私を見失ってた、ただそれだけ。今思えば恥ずかしい話けど、もう大丈夫。君が君みたいだから、だからさ、あとは私が――、うん。あとはお姉さんに任せておいてよ」

 わけがわからないが、咲はこれまでとは全く違った様子で無い胸を張りほほえんだ。その姿は彼女が本当に年相応も見える。

「――それよりさ、なんとなくだけど、なんとなくなんだけどね、今すごく失礼なこと考えたでしょ?」

 ぴききと言わんばかりに咲の額に血管が浮かんだ。

「……えっと……何の話かな――」

「か・ん・が・え・た・でしょっ?」

 笑顔が素晴らしく、素晴らしすぎる。

「え~……ノーコメントは……ノーコメントはダメ……、ですよね」

「……」

 笑顔で見る彼女の目は座ってしまっている。

「……ごめんなさい、許して下さい」

「……ふふっ、ふふ。なんてね。冗談よ、冗談、許したげる。まあ、次同じことを考えたら――だけど」

 聞こえないぶん、余計に怖いが、知りたいとは思えない。

「うん、やっと私らしくなってきたわ。でもまあ、ふざけるのはここまでね。私の用事は済んだけど……、このままじゃ読人、あなたは納得がいかないでしょう? だから――そろそろ私も覚悟する、いいわよね、優羅も」

 最後に後ろに向けてそう話しかけると、いつから立っていたのかそこに優羅が立っていて、なんでもないように話をつないだ。

「――ああ、それでいい。私も覚悟しよう、そして認めよう、読人が覚悟が足る人物であると」

「ふふ、ありがと」

「いちゃつけとは言っているわけじゃないからな……」

「やっぱり貴方、だんだん混ざって来たみたいね。ずっとそっちだけだと、すこし堅苦しいとか思ってたけど、混ざってきたらきたらで、どうなのかしら」

 僕を置いて彼女らはそんなことを話している。

「――私も優羅も覚悟はできた……じゃあ貴方も覚悟はできた? 知らないふりを止める覚悟はできたのかしら?」

 彼女はなぜか意地悪に笑った。

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