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第五十二話『初対面の再会』

「んあ?」

 コンコン

 誰かが部屋をノックした気がして、布団から顔を出して、時計を見るが、針はまだ午前五時を指している。

「気のせいかあ、ふあ〜あ」

 再び布団を頭からかぶって、眠りにつく……。

 コンコンコン

 夢でも見てるのかな……そんなことを思って、そのまま眠る。

 ガンガンガン

 どんどんドアをたたく音は大きくなっていく。

 ドンドンドン

 「読人ー! 遅れるぞー」

 そんな優羅だっけかの声まで聞こえる気がする。

 しかも、やたらリアルな……。

「夢だ、夢」

 そう誤魔化して、ドアと真逆の方向に寝返り打つ。

「おーい、もう入るぞ。鍵が開いてるといいんだが」

 そんな声が聞こえて

「昨日鍵閉めったっけ?」

 そんなことを考える。

「あー閉めてないなあ……」

 そのうちにドア開く声が聞こえて、体をゆっさゆっさ揺さぶられる。

「おい起きろ! 学校に遅れるぞ」

「ガッコ〜?」

 目を開けて振り返ると、そこには優羅が仁王立ちしていて、機嫌が悪そうに呟く。

「今日が入学式なんだが……、咲の奴…伝えるの忘れていたな」

 僕が起きたことに気付くと、その表情もなくなる。

「そうだ、ガッコだ、ガッコ。おまえが大学生なのは知っているだろうが、今日がその入学式だ」

「入学式? ……え?」

 確かに、自分の資料にはそんなことも書いていたが、試験をうけたことだけで合格かどうかすら書いてなかった。それなのにもう入学式らしい。

「てか準備してないし。 スーツとかないよ?」

 苦し紛れにそんなことを言うと、

「ああ、それはそこだ」

 そう言って部屋にあるクローゼットを指さす。

「私たちからのお祝いだ。ほとんど、組織から経費で落とすから、金のことは気にしなくていい」

 何がどうなっいるのかわからないが、つまりはそういうことらしい。

「あ、そっちの鞄には今日必要なものは全部はいっているから」

「じゃあ着替えるだろうし、私は下に行く。早く準備するといい、九時にここを出れば間に合うはずだ」

 それだけ言って優羅は階段を下りていく。

「えぇッ……」

 微妙に情けのない自分の声は誰にもきこえず、今日もいろいろありそうな、そんな予感だけをひしひしと感じる。

 十時前、無事に大学についた、というよりつかさられた。

 目を通しとくように言われて、いきなり、同じ大学に進学することになった元同級生の情報をわたされたり、家を出るとなぜか黒塗りのいかつい車が止まっていて、優羅と咲は平然とその車に乗って自分にも早くのるように促してきたり、と随所に突っ込みどころがあり、どうにか無事大学についた今の喜びは大きいものがある。

 そして今校門に入って、すぐのところに立っている。

 優羅たちはここで待っていてとだけ俺に言って、俺を残したまま、どこかへ行ってしまった。

 どこで入学式があるのかも知らない以上、言われたまま待っているしかない。

 しかし、こんなところで誰を待つのだろう?

 そう思っていた途端に誰かが肩を叩く。

「よしよし、ちゃんと待っていたわね。読人の癖に女の子を待たさないのはいいことだと思うわよ」

 振り向くと長い黒髪のきれいな女性が意地悪そうな笑みを浮かべて立っていた。

「? ……どうしたの? 黙っちゃってさ。あー、前のあれは忘れて……。ちょっとした気の迷いだから」

 少し悲しそうな顔をした彼女の名前は分かる。

 僕の過去を振り返るのに彼女を避けて通ることはできなかったからだ。

 元友だちで、元同僚で、元彼女で、元幼馴染。

 変な順番で変化した僕たち。

 でも、これが俺と彼女、水野流との関係の正しい順番。

 俺との接点が最も多くて、最も秘密の多い人。

 組織にとっての『秘匿シークレット』で、例外を除いて組織の超越者が直接接触することや、その情報を意図的に調べることが禁じられている人。

 秘匿である、そのことすらも秘匿、彼女に触れようとして、はじめて組織はその行動を防ぐ為に動く。

 僕がそれを知れたのは、例外の中に『僕自身』、『僕のための行動を起こす者』という条件があったからだ。

 全ては彼女が僕のために、前もって含めていた例外。

 彼女が組織を離れることとなった僕のために作っていた例外。

「読人? どうしたの?」

 気が付くと彼女はすごく近い距離で、僕の顔をのぞきこんでいた。

「いや何でもない。ちょっと考え事を……な」

 緊張を誤魔化しながら、彼女の顔から距離を開ける。

 彼女は僕が記憶喪失であることを知らない、そして咲や優羅に言われるもなく、僕は彼女にそのことを教える気はない。

 二度も彼女に悲しい想いはさせたくなかった、例えその思いがどこから来るのか僕自身が覚えていないとしても。

「でもなんかひさしぶりな気がすんな、こうして歩くのも」

 記録を頼りにそんなことを話す自分の罪悪感は大きい。

「そう言えばそうかも、顔見たら言い合ってた気がするし。あ、そういえば読人いつの間にか、勝手に引っ越したでしょう!」

 彼女は思い出すように怒りだす。

「あー、そう言えばいってなかったっけ? 言ってたと思ったんだけど」

「ええっと、うん。でも聞かなきゃいけないわけでもないんだけどね……」

 途端に正反対のことを彼女は言い始める。

「つまりよ、そう義務よ、義務、幼馴染としての。勝手に死なれたら、寝覚めが悪いじゃない」

「日本は戦時中かよ……。まあ、うん、分かったけどさ」

「やけに素直ね、ほんとうに読人なのかしら?」

 そんなことを言いながら彼女は僕と頬を両手でつかんでひっぱる。

「何すんだよぉ。やーめろーよ、やーめーろー」

 前の僕はほんとに鈍感だったのだと思う。

 どうして僕は彼女の本心に気付かなかったのか。

「んあ、もう入学式始まっちゃう。読人早くいくわよ」

 僕の頬から僕の手に彼女の手は移り、握り締めて彼女は走り始める。

 引っ張られていた僕の頬は赤い、それに釣られたように横目に見えた彼女の頬も赤かった。


 ただ、気付くのが遅すぎた。

遅くてすいません。最近こればっかり後書きで書いているような……、そんな気がしますが、次こそ早く書きたいです。

 しかしなかなか思いつかない。うーん、毎回思いつきで書いているのがいけないのかもしれない気がしてきました。

 次こそは。

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