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第四十三話『見え始めたモノ』

「はじめまして、来訪に感謝するよ」

 男はスーツをきっちりと着て、社長室のような部屋の真ん中に我が物顔で座っている。側には仕えているらしい老人が背をピンとして側に立っていた。二人のどちらにも面識はないことが自分を安心させているようで、それだけ自分がなぜここにいるのか不可解で不安にさせていた。

「とにかく長い話になるし、そこにでも座るといい。そのほうが僕にとっても話しやすいしね」

 ソファに腰かけて、初めて男をまっすぐに見た。男から超越者をあらわす白いオーラが、老人からは一般人のそれが揺らめいた。

「んっと、いきなり要件から入ってもいいんだけど、まずは自己紹介。とりあえず僕は『魔術師メイジ』って呼ばれてる、正しくは『呼ばせてる』になるんだけど、まあどっちでもいいことだよね」

 はははと男は子どものように笑って、頭を掻いた。

「で、こっちは萩原さん、一応未確認物質のメンバーなんだけど、事実的には僕が個人的に雇っているお手伝いさんってところ」

 萩原と呼ばれた老人が頭を下げた。

「あんまり細かいことは言えないけど、それなりに幹部? ではあるよ。お手伝いさんなんてついている以上、分かるかもしんないけどね」

 魔術師は手を持て余し気味にパキパキと鳴らした。

「ま、少ないけど、こんくらい。聞きたいことが他にあるなら答えるけど、何かある?」

 魔術師はトントンと指で机をたたく。

「ん……質問もないみたい、……じゃあここからが本題、今日来てもらったのは――、あっそうそう、スキャナさんは紅茶とコーヒーどっちがいいです?」

「紅茶とコーヒー?」

「そう、紅茶とコーヒー」

 男の顔をじっと見たが、ニコニコと笑っているだけ。

「……どちらかといえば紅茶か」

「オッケイ、じゃ萩原さん、コーヒーと紅茶一つずつ」

 戸惑っている私を尻目にして、頼まれた老人は一礼して、扉へと消えた。


 魔術師は立ち上がって、老人の出て行った扉に鍵をかける。

「……これでよし」

 緩んだ空気がぐっと締まった様な気がした。

「この部屋の防音は保障できる、お目付け役の爺さんも排除した」

 にやと男は今までより遥かに低温な笑みを浮かべた。

「それじゃ本音で話そう、スキャナ。いや修羅、優羅、ユラ、どれがいいのか?」

「……!」

 自分しか知らないはずの切り札を、魔術師は軽く切った。

「大丈夫、安心していい、これは僕しか知らないし、漏らす気もないから。交渉のカードにする気すらないしね、ただ信用のひとつにでもしてくれれば十分。君がここに居れるということは僕が情報を漏らしていないことは分かるだろ?」

 区切るように机を指で強く叩いた。

「時間もないから、はっきり言おう、君は組織ここをどう思う? どう答えてもいいから、とにかく本音で話してくれるか?」

 質問の意図は分からない。

 でも自分の過去すら知るほどの情報力を持っているなら、嘘は無駄なのだろう。それに何にしろ過去を知られている以上、拒否権は無いに等しい。

「……何かを隠してはいるだろうな、それが何なのかまでは知らないが――組織は根本的なところで昔のあのときと何も変わっていないのだろうな」

 正直に思うところ告げると、魔術師は黙って頷いた。

「そうか……やっぱり――」

 何かを言おうとしたが、ドアがガタガタと揺れてそれを遮った。

 魔術師は舌打ちをして立ち上がる。

「……ここまでか、とりえず話を合わせて、今日の続きはメールで、解読法はこれ――」

 魔術師は手で数字の四を作る。

 扉が開くと、魔術師はまるでいままでがなかったかのようにふざけた様子を取り戻している。話を合わせ、メールアドレスを交換した。

「今日はどうも。呼びつけたわりに大した話ではなくてすいませんね。埋め合わせはまた後日、楽しみに」

 ふざけた調子で男はウインクをする。

「お気になさらず」

 ピシャリと打ち切っても男は気にした様子はない。

「ではまた、そのときに」

 魔術師は手を大きく振る。しかし男の目は秘めた何かをくすぶらせている。

 それが何か予感めいていて、私はそれを誤魔化すように急いでその場を後にした。 

 今回家がごたごたしていることもあって、1か月以上時間がかかってしまいました。次からは2週間で一話投稿できるようがんばります。これからもよろしく。

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