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第四十話『崩壊』

「ああ、そうだ……やはり私のせいだ」

 修羅は光となって消えた少年に届かない言葉を小さくつぶやいた。

 やっと彼女は、彼の死に気付いた。

 同時に悟った、初めから自分が全てを知っていたこと、そして巻き込む自分に対しても彼がフェアで有ろうとしていたことに。

 『この世界のものに対して、チカラを使うことができる』

 何の気もないように少年の吐いた言葉。でもそれが全てだったのだ。

 言いかえればそれは『この世界のものではなければ、チカラは働けない』、つまりは『彼女が原因で生じた傷は治らない』と、そう言ったのだ。

 きっと彼は幻覚でその傷を覆い隠して、治っているように見せかけていた、修羅はそう気づいたのだ。

 結局、彼を殺さないためには修羅はそのことに気付かなくてはならなかった、もし気づいたなら、たとえ望まれないとしても、彼の死という結末はなかったはずだから。

「どうして彼は死を選んだのだろう?」

 やはり誰も答える者はいない、そこには修羅しかいないのだから。

 ――なのに気づけば、答えは頭の中にあった。

 それはただの偶然、でも過去となった今では、それも必然。

 世界に光と溶けた少年の欠片が、偶然にも修羅に流れ込んだ。それは彼女の頭の中に入って、ぐるぐると回り、そして溶けた。喰った肉が血になるように、修羅に知識として同化した。


 それは……


 この世界に封印のクサビとして存在するようになってからの日々。

 変化なく続く世界をただ茫然と眺める苦痛。気が狂いそうな日々を僕は世界を監視しながら生きてゆく。初めは苦しい、でもすぐに何も思わなくなって、精神は冒されていった。

 時間は飛ばし飛ばしに、過ぎてゆく。時間の感覚は日に日に長く、感情はそれに合わせて消えてゆく。

 ――読人が超越者に目覚め、自分は内からそれを見た。

 驚きはしなかった、長い日々の中でその可能性を幾度も考えていたから、でもそれ以上に感情がなくなってしまっていたのかもしれない。

 予想通り、世界は変化を始め、僕はロボットのように内部から封印を守るために行動を起こす、読人の『個人』を封じ、他にも多くの手を施した。計算通りなら、封印は守られ、そして僕は再び苦痛の日々に戻れる、いや戻ってしまう、戻らなくてはならない。

 でも、そうはうまくいかない――始まりは自分が完全に封印されていなかったこと。

 それだけならいい、それよりも読人はそのことに違和感を覚えてしまっていた。

 ひとつの歪みは連鎖的に歪みを生み、世界の構造をブレさせる。そして、根本から揺さぶるその歪みに、世界の芯ともいえる部分に置かれた封印すら歪み始めた。

 放置すれば封印は解けてしまう。僕は失った感情の内、焦りを取り戻し、きっかけに僕は失った自身を取り戻せた。

 解決策は一つあった。それは運任せで頼りにない、それ以上に問題のある悪手。

 そんなときに限って、すぐにチャンスはやってくる。

 『この世界以外の存在に、自分を殺させる』という手

 それは誰かに自分の死を他に押し付けてしまう悪手。

 気にしないならそれでもいい。でも父を殺した自分にそれはできなかった、それには死の重さを知りすぎていた。

 幾度に考えを巡らせても、それ以外に策はない。だから相手に一度だけ回避のチャンスを与えることで納得したのだ。こじつけ以外の何でもない、でも仕方ない。

 だから、自分は卑怯なのだ。

 そして、そう思うと世界が憎くなって、憎む自分を嫌悪する、そして弱さを嘆くのだ。

 でも、それも仕方ない。


 それが、解答で残った思い出。


「強いな、お前は」

 修羅は急に沸いた思い出に、弱さを嘆く少年に、そう呟いて、少年の消えた場所から反対方向に向かって歩き出す。

 ――そして振り返ることなく去ってゆく。

 彼女がこれから何に向かっていくのか、それは本人すら分からない。

 この世界に広がる空のヒビは大きく、世界は崩壊しようとしている。まずはそれから逃げなければならないのだ。当然、巻き込まれたら、どうなるか分からない。

 それでも彼女の瞳は問題を容易く跳ね除けられる位に、強く輝いていた。


 タッタッタッタッ。

 修羅は走る、世界はいつ完全に壊れてしまうのかわからない。後ろからはガラガラと崩れる音が聞こえても、修羅は振り返らない。自分が入ってきた場所を目指すだけだ。世界に出入り口はただ一つしかない。

 もし、この世界の崩壊に巻き込まれたならどうなるか、それは修羅自身もわからない。なんせ世界が崩れるのなんて、修羅にとっても初めてなのだ。だから今の彼女はとにかく逃げることが第一。死を背負う以上、今は死ねない、背負う死には少年の想いも詰まっているのだから。

 そう思えば、いくらでも走れる気がする。

 広場が見えた、確かここがスタートライン。

 走ったままで、修羅は『個人』を発動させる。

 決意をした時からスキャナはいない、スキャナの力は今全て修羅が受け継いでいる。

 そして修羅は、現れた光の輪っかにそのままの勢いで飛び込んだ。

内容が少しだれてきましたが、もうすぐ一新できそうです。

 やはり後書きは苦手です。

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