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第十四話『デート』

 トゥルルルル…トゥルルルル……

 僕は慌てて起きた。いつもケータイの音を切っていたこともあり、かなりびっくりした。大慌てでケータイを探したが、どうしてだろう、こういうときに限ってなかなか見つからない。布団の中からケータイを発掘すると、すぐに通話ボタンを押した。

「もしもし〜」

 喉からいつもの三倍くらい低い声が出る。

「咲ですが、読人君であってる?」

 耳からケータイを離して画面を確認した。それだけ通話相手にびっくりしたのだ。しかし画面にはしっかりとタイムと表示されていた。

「もしもーし、おーい、読人君だよね?」

 ケータイからは、咲の声が引き続き聞こえていた。 早く電話に出なくては。

「はいはい、読人ですが、何の用です? そういやあだ名は使わなくていいんですか?」

「いいのよ。これは私的な用事だからね〜。実は読人君をデートに誘おうと思って」

「はあ、デートですか?」

 いったいなんの目的があるのだろう。なんか嫌な予感。

「そう。一緒に買い物にいきましょ。今日はスキャナが用事で、誰も付き合ってくんないのよ。ひとりだと御嬢ちゃんとか言われてまともに取り扱ってくれないこともあるし」

 年より若くみえることは良いことだと勝手に思いこんでいたが、程度が過ぎると、若いということも障害になってしまうようだ。勝手に若いことが良いことだと、思い込んでいた自分に腹が立って、咲に申し訳なく思った。

「いいですよ。付き合います」

 そう言ったのは、その結果だった。

「じゃあ30分後に私の家に集合でいいかしら?」

 顔が見えないため、確信はないが咲の声は喜んでいるような気がする。

「分かりました。チャイムを鳴らすので中で待っていてください。じゃ切りますね」

 ピッ電話を切ってすぐにケータイの着信音の音量を0にした。もうケータイに起こされるのはこりごりだ。すぐに身支度を済ませ家をでた。待ち合わせに遅れるのは好きではないのだ。

 20分も歩くと、すぐに咲の家に着く。

 ピンポーン

 十分前ではあったが、「早めに来る分にはいい」と、彼女は言っていたはずだ。

「はいは〜い」

 ドタバタしながら咲が出てくる。咲は前と同じく青い着物を着ていた。しかし、今日はクマのぬいぐるみを持っていなかった。

「読人君、やっぱり早めに来るのね」

 少し呆れているようだ。

「すいません、待たせるのはどうも性分に合わないみたいで」

「いいんだけどね。たぶん早めに来るんじゃないかって思ってたから。じゃあ少し早いけど行きましょうか」

「で、買い物ってどこ行くんですか」

「その前に」

 咲は自分の手を僕の方に突き出した。

「……」

 僕は咲の手をただぼーっと見ていた。

「貴方も手を出して」

 言われた通りに僕も手を差し出す。

 ぎゅっ。

 そんな音が聞こえた気がした。咲が僕と手をつないだのだ。免疫のない僕は、一瞬身動きが捕れなくなってしまう。

「言ったでしょ、『デート』って。デートなら手を繋ぐものでしょ?」

 咲の顔はいつもより少し赤らんでいた。ごまかすように、すぐ咲は歩き始めた。僕はただただそれについていった。

 手をつないで並んで歩く。なんとなくどこか気恥ずかしかったが、懐かしくも感じる。

 そういや最後に手をつないだのは小学校の帰りだったか、相手は確か流だったかな。でもその時のそれは本当に友達としての意味の方が強かった。本当に異性として、意識して手をつなぐのは初めてだ。

 咲の顔を見る。見た目は子供だが、もう僕には大人としてのイメージが確立しているのか、目線が重なったとき、僕は恥ずかしくて、慌てて目を背けた。

「ねえ読人君。実はね、私初めてなのよ。こんな風に男の子と手をつないで歩くの」

 咲の顔はさっきより赤くなっていて、それを見ると僕も余計赤くなった。

「なんだか意外です。いろいろと経験しているもんだと思っていました」

 僕は正直にそう言った。なぜか咲は顔を膨らませる。

「どうしたんです?」

「敬語……」

 咲はそっぽを向いた。なんか今日の彼女は本当にただの子供のようだ。

「敬語ですか?……ああ確かに。でも時宮さんのほうが年上だから普通じゃないですか。それに今までだってずっと敬語でしたよ」

「それでも今は敬語はやめてほしい、それに『時宮さん』っていうのも。咲って読んでほしい」

 彼女の顔は真っ赤だった。

「時宮さ……、咲がそういうならやめるけど。それなら、俺のことも呼び捨てにしてください。それが条件です」

 僕は歪に微笑んだ。

「ありがと。それで読人……」

 咲は耳まで真っ赤。

「な……なんだ?」

「別にたいしたことじゃないんだけどね、読人には私のことも知っといてもらいたくて」

「でも、なんで俺なんだ? 今日を入れても、まだ会うのは三回目だろ」

 気付かぬ内に変な日本語になっていた。

「読人は覚えてないかもしれないけどね、初めてあった時に貴方は私を精一杯助けてくれようとしたでしょう。そんな貴方だからよ。今日も貴方じゃなくても、誘おうと思えば他にも誘える人はいたわ。でも貴方と、貴方と話して見たかったの。超越者なんて単語なしにね」

「なんか照れくさいな。でもそういうことなら聞かせて。実際、興味ってのもあるし」

「じゃあ、私が超越者になったときの話から始めようかしら……」

後書きをキチンと書こうと宣言した次の話なので頑張ろうと思います。今回の話は咲についての身の上話を進めるための準備ってところでしょうか。細かく話を切りすぎて話数ばかり進んでしまっていますが、引き続きよろしくお願いします。

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