ゴーレムを食べる
最近どうも分からなくなる。
食べてはいい物と 食べてはダメな物の境界線だ。
そりゃあ、いままでいろいろな物を食材にしてきた。
しかし人間界とは違い、ここ魔界では人間の常識では計り知れないものが市場に並び、同時に食卓に並ぶ。
基本どうしても肉系が多く、次いで魚や穀物などだ、あとは各種パン。無論チーズなどの乳製品、発酵食品もある。逆に少ないのはナマモノだ。
それはやはり寄生虫の心配があるからだろう。火を通せば寄生虫は死ぬからな。それは同時にあまりナマモノはここ魔界では敬遠される風潮にあるという事。
そして・・・今、自分は人があまり食べない物を美味しく調理するという手法で人気を得ている。
しかしそれは同時に常に新しい物へチャレンジを続けなければならないという課題がある。 無論それは苦しい物ではなく、実にチャレンジしがいがある実に楽しいものだ。
ただ、問題はどこまでその食材を追求すべきか? という問題。
そこで改めて食材となる物をいくつかに分けてみた。
1.火トカゲ や サソリ
通常の市場にも並び普通の家庭や料理屋にならぶ品
これは普通の食材。
調理法もある程度確立し、別に目新しい物はなにもない。普通に食べて美味 しいのは確かだが、わざわざ自分が挑戦する料理ではない。
自分が調理せずとも、この魔界では誰もが普通に調理する食材に興味はな い。
2.スライムやミミック
調理や加工が困難で、だれも作ろうとしないもの
これが今の自分のメイン、魔界に多く存在するが、誰も食べない。基本的 に美味しくない素材。だからこそそれらを加工し美味しく食べる物にするこ とは料理人の腕が試される。
・・・ここまではいい、問題は此処からだ
3.ワイトやゾンビ
そもそも食えるのか?
それさえも不思議な物。
栄養の前に、食べる所があるのか? 又、そもそも食べたら死ぬんじゃない か?
と食べるという完全な想定外の物。
実に調理が難しく、困難を極めるが、実に調理の試しがいのある素材といえよう。
問題は
4.『ドラゴニュートやリザードマン』など亜人系だ。無論これは通常2.
に当たるが、そもそも作ってもいいんだろうか?
いやこれは倫理の前に、亜人のお方は客として来店する。
もし家族や友人など調理してお出しすれば、怒って店のみならず自分の命さえ危うい。
つまり、客は調理してはいけない。だが、逆に言えば『客にならないものは全て食材である』と断言できよう。
なら客ではない亜人族となると、これがまた居ない。
ゴブリンやコボルトのお客様も無論いらっしゃいますし、ラミアやハーピーな どの少数民族の亜人のお客様もいらっしゃいます。
となると、亜人族の方々を食材にするのは諦めるのが無難です。流石に魔界といえど、お客様をそのまま食材にするのは流石にマズイ。
一応ごく一部の例外はある、例えば『天使』だ。
天使が魔界で食事をするはずがない!
つまり天使は食材といえるのかもしれないが・・・さすがに天使を料理するのは躊躇われる。
一応魔界の亜人や悪魔は人間を食べる種族もいる。その中で自分を食べないのは 自分は魔界に認められた人間だからだ。
つまり魔界に認められないなら 天使どころか人間でさえ調理可能!
ただ、、人間は、人間はなぁ・・・なんか心の奥で葛藤が起きるのですよ。
うん、人間や天使は保留にしておこう。
わざわざ調理しやすい物を選択するより、この魔界では様々な未知の食材に満ちている。まずはそれを試そう。
今回は当初の予定通り2か3の選択肢にしよう。
そこで今回チャレンジするのは ゴーレムだ。
この自分のもやもやを解消する為、せめて人型のモンスを選んだ。
さすがにゴーレムは文句は無いだろう、そもそも生物すらないのだから。
となると次の問題、生物ですらないのに食えるのか?
という問題だ。
しかし、調べてみると各種いろいろなゴーレムがある。
まぁこれはダメだろうと思ったのは鉄製のアイアンゴーレム、石製のストーン ゴーレムなどだ。
意外とゴーレムは種類があるみたいだ。
ここで注目したのは屍肉を使用したフレッシュゴーレム、骨を素材にしたボーンゴーレム。
こうなると、以前のスケルトン、ソンビののように調理が可能だと思う。しかし同あまり新鮮味みがない。
あと1つ未だチャレンジした事のないゴーレムにしよう。
となると、木 ウッドゴーレムか?
木食えるのか? シロアリじゃないし我々にはムリか?
うーん木自体はムリだが、しかし土や石、鋼などはもっと無理だ。なんとか加工できないか考えよう。
木・・・木・・・木か? 木材やオガクズなんてまずは食えない。ん?あれ? 木の皮なら昔、飢饉の時に食べていた書物を昔見た気がする。
なら食えるのか?
改めて思い出すし、考えてみる。木の皮か・・食えるのか?
ただ普通に食ったら渋いし、固いと思う。
しかし、昔の戦国時代 籠城し、食料が無くなったら木の皮を食った。というのは本で読んだ記憶がある。たしか食えたのは、松の皮だったと思う。
だけど、どうやって食えば良いのだ?
いや、その前に唯の松の皮を調理すれば詐欺になってしまう
ウッドゴーレムの松の木を使用した物を捜さないと・・。
結果
そんなものはありませんでした。
ですよね、松なんて曲がって、あんな加工しにくい木材でゴーレムなんて
作りません。
ならは敢えて作りましょう。
動物の骨を使用したボーンゴーレム
動物の屍肉を利用したフレッシュゴーレム
そして松の木(皮ごと利用した)ウッドゴーレム
今回は3種類を準備しました、少々お高くつきましたが仕方有りません。
そしていよいよウッドゴーレムの加工です。
その前に、ウッドゴーレムの松で実験してはお金がかかりすぎます
まずは普通の松で実験です。
とりあえず松。今回は赤松を選択しました。赤松、そう秋には松茸が生えるあの赤松です。
とりあえず赤松を入手し、皮をはがしますと・・あれ?
松の皮を剥ぎ取ると、中に白い部分があります。もしかしてこれを食べるのでしょうか?
松の皮と、それにつく白い部分・・・どうみても皮そのものは固くごつごつして食べるのには向いてない模様です。
まずはその白い部分を食べてみるとしましょう。といっても皮そのものとは言いませんが固い、いわゆる繊維質の塊です。
当然です、木なのですからね。
少し気って口に入れたのですが、味も渋くこのままでは食用に向きません。あく抜きが必要でしょう。
まずはあく抜きをするとしましょう。
今回は、燻す、牛乳につけ込む、水で煮込む、とにかく色々試してみます。
実験の結果 煮込むが一番良かったです。流石に木ですので牛乳とかでは内部のアクは抜けませんでした。
因みに煮込むと白い皮が真っ黒くなりました。
それをほぐします。さすが繊維質がびっしりですよ。労力と根気が必要ですね。実にきついです。
まぁトチの実とか、アクの強い植物の加工は根気が居るのは分かってますし、煮込むのも栗の渋皮煮とかけっこう共通のようです、勉強になりました。
やはり植物系はうんと煮込めばなんとかなるものですね。
で、できあがった松の皮は まるで石炭のようで全く食欲をそそりません。だが、それでも口に入れない訳にはいきません。
だけど、食べてみると柔らかく僅かな甘みがあります。
意外です。渋いのかとおもっていました。
その代わりその黒い物が手につき、手が真っ黒になりました。こうなると出来た物もイカスミのようにかなり黒くなりそうです。
しかし、これで目処が付きました。今回は3品です。
一応先に2品はきまってます。
まずは『ボーンゴーレム』
これは前回と同じのソテーにしました、ソースは趣向を変え今回は『ヴァン・ルージュ ソース』を選択しました。 赤ワインを煮詰めて作ったソースです。濃厚な肉料理に合います。
そして次は『フレッシュゴーレム』
前回は火トカゲでしたが、今回のメイン2品が両方とも肉では差がありません。
しかし腐肉というからには肉しか選択肢はありません。
そこで趣向を変えて、火トカゲとは全く別の海に住む『シーサーペント』を選びました。これに『オランデーズソース』を選択します
一応魚になるんでしょうか? そもそもシーサベントって何なんでしょうな?
両生類? 哺乳類? 魚 それとも爬虫類?
まぁくわかりまませんが食材には変わりません。それに魚に合うソースを選択肢しました
これで魚と肉、メインが2品そろいました。となるとあとは今回一番苦労したウッドゴーレムです。
この苦労した松の皮を使いましょう。
なら副食ですかね? メインはあるわけですし、しかしこれは見た目が悪くサラダには向きません。何かと混ぜるのがよさそうですね
松の皮なら日本食ぽいが、ここではあまりご飯を食べる文化はない
なら米粉を使用したパンにしましょう。
米粉に松の皮をまぜて焼き上げる パン
ウッドゴーレムの黒パン でいいかもしれないですね。
さぁ、今日も久々の開店です。
本日は『ボーンゴーレムのソテー の ヴァン・ルージュ ソース』と
『シーサーペントのフレッシュゴーレムのオランデーズソース』だ。
そして一番苦労した『ウッドゴーレムのもちもち黒パン』が付けあわせだ
さぁ皆さんいらっしゃいませ!
今回はゴーレムだよ