スライム(毒)を食べる
信じられ無いよマイハニー!
先日おどくべき事があったんだ、聞いてくれるかい?
実は、先日こっちに住んでるブラサーのとこに行ったのさ。そこで驚くべき事があったのさっ。
何だと思う?
まぁ正解を先に言うよ。なんとそれは”料理”なのさ。
そう・・・自分の想像外で、ある料理屋でとんでもない料理に出会ったんだ。
まぁ事の起こりは、ブラサーの会話の中で自分が驚くような素敵な料理屋があり、で・・・その料理屋が珍しく今日開店してるって話なのさ。
話を聞くに、その料理屋はいつも臨時休業の看板が掛かってはいるが、ひとたび開店すれば誰もが驚くような素敵な料理がテーブルに並ぶそうだ。
そこまで勧めるのなら一度言ってみようじゃないか!
で、勢い勇んで、我々はその料理屋に向かった。で、その店メニューをみて自分は我が目を疑ったね。
なんと、そのメニューには『スライム(毒)』ってあったのさ
ワォー
俺は驚いたね。
そもそもスライムだぜ、あんなドロドロの物誰が食べるってんだ。
アレなら近所でもマズイと評判のロングホーンのすね肉のほうがマシってもんだ。
しかも(毒)ってきたもんだ。
なんだい? マイブラザーを含め店に並ぶ君たちは自殺志願者か何かかい?
毒って、スライムの中でも猛毒を持つあの緑色のスライムだぜ
正気のサタじゃないよ。
しかもみな店の前に行列まで作ってやがる。
アハハハ、どうやらこの町の奴らは皆想像以上に狂ってやがる。
文句? 無論言ったさ
『俺を殺すならこんあ直球ではなく、せめてもうすこしジョークをきかせ』ってね。
だが、マイブラザーはそんな俺の言葉を鼻で笑いやがる。
そんな自分にブラザーは反論するんだ。この店は今までにそんな猛毒系モンスを出してるが、今まで死んだ奴はおろか、具合の悪くなった奴なんかいないっいてね。
しかも、あまりの旨さに大ファンだらけの奴らばかりだそうだ。
自分は信じられなかったね。なにせスライム・・・しかも毒だぜ
あれをこんな列をなして食べるなんてクレイジーすぎるってもんだ。
しかし、そんな会話をするうちに俺たちの番に回って来やがった
本日のメニューは
『スライム(毒)のステーキ トラッセルソース』と『スライムの(毒)の煮込みシチュー』だ
俺はしばし悩んだね。
正直、毒なんぞ好んで口に入れたくはない。しかしブラザーのあまりの押しに、まぁ土産話に・・と思ってね。
仕方なく『スライム(毒)のステーキ トラッセルソース』を頼んだ。
しばらく待つと、その問題のスライム(毒)のステーキとやらがやってきた。
まぁ、確かにステーキだ。
色は緑、確かに毒タイプのスライムの色だ。ただ、若干色は濃い。
それにトラッセルという赤く多少酸味の来た野菜のソースがかっけてあるそうだ。
確かに緑のステーキに赤のソースは見た目も鮮やかだ。
「しかし毒・・・」
とりあえず自分は観念しステーキにナイフを入れる。
「あれ、案外固い?。だが、何だこれは?」
自分はまず驚いたね。
スライムってこんなに固かったか?
まるで普通の肉よりも若干柔らかい堅さまでにだ。ドロドロのスライムの身がまる肉のように固まってる。
口に入れるとその味は軽い塩味、しかしその後に怒濤のごとく押し寄せる濃厚な旨味。しかも、その濃厚は肉とも魚とも違う今までに経験したことのいない味。
・・・・ずばり、メチャクチャ美味い
その濃厚な肉の味にトラッセルの軽い酸味のきいた味が実にバランスがいい。
「なんだこれブラザー、メチャクチャ美味いじゃないか!」
自分のそのセリフにブラザーはしてやったりと笑顔を返す。だが、本当に美味いので言い返す事もできない。
いやそれよりも毒は? いやスライムの毒ならピリピリとした感触がすると思うのだが、我が舌にそれらしい感じはしない。
これがスライム(毒)?・・・いや待て、スライムだぞ、そもそもこのステーキ色は似ているが全くスライムに見えないじゃないか
(ははーん、何となく理解できたぞ)
「ハハハ、ブラザー騙すのはよくないな、おおかた他の緑の肉をもってきてスライムといってるだけだろう、そのやり方はいただけないな」
「まぁそうゆうと思ったよ、何なら店主にに聞いてみてはどうだい?」
「それは良い考えだ、さっそく厨房にいこうじゃないか」
我々は早速厨房に向かう。そこには人間族らしき調理人が汗をかき、先ほどのスライムの肉を調理していた。
「おやどうしましたお客様?」
店主は厨房に入る我々2人を見つけると、人の良さそうな笑顔で声をかけてくる。
「君が店主かね、ハハハ嘘はいけないね、嘘は」
「おや、嘘と申しますと?」
「先ほど食べたスライム(毒)のステーキ実にうまかった。それには脱帽だし、敬意も払おう。しかし、あれは断じてスライムなどではない」
「いえいえ、紛れもなくスライム(毒)タイプですよ」
「冗談はいけないね、スライムなんて調理できるわけがなく、ましてやあんなに美味しくなるハズがない」
そうあれが、スライムなど自分の常識ではありえない。
「ふーむ、まぁたまにそのようにお疑いになるお客様もいますからね。確かに人様の口に入れる物ですし。では調理方法を説明させてはもらえませんか?」
「あぁいいだだろう」
店主はゆっくりとスライムについて説明を開始する。
「まずスライムなのですが、当然毒がありますので、まずは毒抜きをするところから始まります」
ふむふむ
「まずはスライムをこのような塩の中につけこみます。これで1年、スライムの中の水分が抜け同時に毒も抜けます」
そう言い店主が指し示したのは大きな樽。
そこには何か白い、いや、あれは見たことがあるな”粗塩”だ。
今は別の物が漬けてあるというが、確かにあんな塩の中にスライムを入れれば中の水分は脱け、固くなるに違いない。
しかも、1年だ・・・これは実に手間がかかる。
「そして取り出したスライムを綺麗な真水につけ1週間、毎日水を交換し、塩抜きをします」
ふむふむ
「そして再度 塩に漬け1年。こうして2回計2年つけこみます。そうするとスライムの中の水分と同時に毒もぬけ、引き締まった肉に変わります」
(計2年か・・すごいな)
「その肉がこちらになります」
そう店主が指したのは今も鉄板の上で焼いている。色鮮やかな緑のステーキ、つまりはスライムだった。
「しかし、毒はどうなのだ?」
「無論、皆様にお食べ頂く前に専門の魔法技師の手によって調理前のスライムのステーキは無毒という事を確認されています」
「なるほど・・・2年もかけて準備をするとはな」
確かに2年もかけ、スライムの中の水分と毒を出し尽くせば可能だろう。しかし1つの料理に2年もかけるとは、自分の常識からすればあり得ない事だ。
「・・・・ふっ、完敗だぜ!」
「ありがとうございます、今後も当店をよろしくお願いいたします」
そう店主から返事を頂くと自分は素直に厨房から出て、席にもどった。
ステーキは若干冷めてはいたが、それでもその味は十分に美味しく、堪能できた。
「なぁブラザー、自分この店のファンになっちまったぜ」
「そうだろ兄弟。俺はとっくにこの店のファンだけどな」
そう言うと、俺たちは大声を出し笑いあった。
そして、肩を抱き合い十分に料理を満足た後し、この店を出た。
無論、再度ブラザーとこの店に来る事を約束したもんさ。
本日のメニューは
『スライム(毒)のステーキ トラッセルソース』と『スライムの(毒)の煮込みシチュー』だった。
さぁみんな心ゆくまで楽しもうじゃないか