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グリフォンを食べる

「つい勢いで買っちまったが・・どうしようか」。

 今日もいつものように市場に向かったのだが、通常あまり目にしない食材を見つけ後先何も考えず買ってしまった。


「・・・グリフォンかぁ」

 それは上半身は鷲、下半身はライオンという生物だ。

 目の前にあるのはそのグリフォンのムネ肉とモモ肉、そうなると当然ムネ肉は鷲であり、モモ肉はライオン肉ということになる。

「流石魔界、何でもありだな。だが、余計にやりがいがある」

 まずは軽く両方の食材に塩こしょうをして軽くソテーしてみる。まずは味の確認だ。

 まずはムネ肉。

「・・・美味しくない」

 確かに肉食類の肉は美味しくないと聞くが、確かに美味しくない。というより味がしない。

「なんかゴム噛んでるみたいだな」

 次いでモモ肉

「固っ!」

 そもそも切り分ける時に感じたのだが、かなり固い。そして赤身だらけで脂肪がまったくない肉。脂肪が少ないせいで噛めば噛むほどのどが渇く肉。

「まぁ珍しい珍獣なのに、異常に安かったから何かおかしいとは思ったんだよなぁ」

 だが嘆いても始まらない。嘆いたとこで肉は美味しくならない。

「まずはじっくり煮てみるか」

 ムネ肉とモモ肉、これをまず豚の角煮風に調理してみる。

 まずは鍋に肉と水を入れ。強火。沸騰したら弱火で下茹でし、肉を取り出し水にさらし表面のアクを洗う。

 鍋に香味野菜と砂糖、酒を入れ、落とし蓋をして、中火で煮込む。ただ今回は特別に脂肪分が足らないので他の動物から取った脂肪分を追加する。

茹で汁が減ってきたら、肉がひたるぐらいまでお湯を足し、魚醤を加えて煮込み、火を止め放置し冷まし、温め直し、盛り付ける。


 と簡単に角煮風で二種の肉を試してみたが、一応、ムネ肉は美味しくはなったが、肉はどうもぱさついて美味しくない。

 対しモモ肉は結構煮込んだハズなのに、相変わらず固いままだった。しかも肉がパサパサになっていた。

「こりゃ強敵だな」

 よく考えれば、この肉にはスジも少ない、つまりゼラチンが少ない以上煮込みという手法は通じないのろう。

「ムネ肉は味、モモ肉は堅さが一番の強敵だな。まずムネ肉は・・・『つくね』にするか」

 まずムネ肉を包丁で叩き、ミンチにする。それに卵と魔界の野菜、魚醤にごま油に片栗粉、それに魔界産の香味野菜、これは日本のショウガに似ている。それを入れ混ぜる。


 これを普通は団子状にするのだが、コレを今回はハンバーグにすることにしよう。なにせムネ肉はけっこうな量買ってしまってる。

 こねて早速フライパンで焼く、あとは通常のハンバーグのように焼けばいい。

あとはオリジナルのハンバーグソースをかけてみよう。

 早速試食する

「・・・うん、美味しい。口の中に肉汁があふれてくる。今回グリフォンのムネ肉だけでなく、他の脂肪分の多い他の肉との合い挽き肉にしたのが正解だったな」

 口の中にあふれる肉汁とそのうま味、実に良い感じに仕上がっていた。


 さて、ムネ肉は一応完成となったのだが、問題はモモ肉だ。一応その固い肉の対策方法はあるのだが、いちいち乗り気になれない。

「でも自分それしか思いつかないんだよなぁ」

 それは低温料理法といい、60度ほどの低温でじっくりと暖める。しかしこの世界には低温で暖める湯煎調理器という便利なものは無い。

「とりあえず限界までがんばるか」

 まずはグリフォンの肉をしっかりとスライムの皮で包む。水と空気が入らないようし、しっかりと縛り、それを60度ほどのお湯の中に放り込む。

「あとは根気と眠気との勝負だな」

 鍋の中でゆっくりと煮込まれるグリフォンのモモ肉の塊、その周りは湯煎の為の大量の湯。その寸胴鍋を下からの炭で加熱する。

 決して熱すぎず、冷たすぎず役60度をキープし続ける。その鍋の中でじっくりグリフォンのモモ肉が新たなる覚醒を待ってる。


 まずは1回目だな、今回投入したモモ肉の塊は6個。

3時間後、まず1つめの袋を引き上げ、試食する。

「少しは柔らかくなったな、低温料理法はいいかもしれない、だがまだ固い」

6時間後、2つめの袋を引き上げ、再度試食する。

「うん、多少は、でもまだ店に出せるレベルじゃないな」

結局合格点だと思われるのは18時間低温で煮込み続けた物だった。

「火の管理に18時間か、これはきついな。そして再度本番に18時間って、こりゃきついなぁ」


 流石そのまま寝ずに18時間連続調理といかずに1回十分な睡眠をとってから再度低温料理法を使いモモ肉を調理した。

 18時間煮込んだ肉は実に軟らかく変化し、その味は濃厚な豚肉ととも言える味だった。

「こりゃあ美味い」

 単純に塩こしょうしただけのソテーだが、十分に店に出せるレベルにまで仕上がっていた。

 となると、あとはソースだな。ハンバーグ、片方はステーキ。ならハンバーグをあっさり和風におろしソース、ステーキには肉に負けない濃厚なソースをかけてみよう。


 さぁ、今日も久々の開店だ。

本日は『グリフォンのムネ肉さっぱりハンバーグ』と『グリフォンのモモ肉濃厚ステーキ』だ。


 さぁ皆さんいらっしゃいませ!

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