第3話 握手
走って十数分ほどだろうか。木も少なくなり開けた土地に出た。
少し離れたところに人工の壁とおぼしき建造物もあるのをみるとどうやら安全な場所まで来れたらしい。
「さて、ここまで来れば大丈夫だよね」
少女は安心したようにため息をついた そしてこちらを向いた。
どうやら敵意がある様子は無いがお尻についた赤い尻尾を立たせているところを見ると若干警戒はしているらしい。
(しかし、初めて会う人間が獣耳に尻尾のついた女の子なんて本当に違う世界に来たんだな しかもめちゃめちゃ可愛い)
「キミも…大丈夫?」
若干変な目で見られたような気がする。まずい、顔に出てたか?
「ああ、さっきは助かった ありがとう、えーっと…」
「そういえば自己紹介がまだだったね 私はアンジェリーナ・オーウェルだよ。アンジェって呼んでね」
「俺は水薙佑斗だ よろしくな アンジェ」
そういって手を差し出す アンジェも手を伸ばし…
「うん、よろしく ユート」
この世界に来て初めての知り合いが出来た。
「ところで、ユート?キミ、ここの街じゃ見たことない顔だけど…というか何で木から落ちてきたの?」
「ああ、それは…それはだな…」
そこで佑斗はふと考える。果たしてここで『違う世界から落ちてきた』なんてことを言って信じてもらえるのだろうか 。もしも頭のおかしいヒトだと思われたら面倒だ。
少し考えこんでいる佑斗を見てアンジェは言った。
「まあ、今は言わなくてもいいよ。初対面の相手だと説明しづらいこともあるだろうしね。」
「そうか、そいつは助かる。俺もまだあまり飲み込めてないんだ」
「…?よくわからないけどとりあえず街に入ろうか。私もギルドに一旦行かなきゃいけないし。」
そこでアンジェは何かを思いついたようで尻尾を大きくふりながら言った。
「そうだ!ユートもギルドにおいでよ!おじいちゃんなら何か分かるかもしれないよっ!」
ということで街の中へ