第2話 少女
「うおおおああああああぁぁぁ」
ガサガサッ、ガッ、ガゴッ、ガンッッ、ベチャッ
木の上に落下し少しスピードが緩んだ状態で佑斗は背中から思い切り地面に叩きつけられた。
「ゲホッゲホッ、っつつ…もう少しいい落下方法は無かったのか…?ちくしょう。」
どうやら木がクッションになるというお決まりのパターンで無事だったらしい。木にひっかかれて擦り傷や打ち身が出来ているのは…まあ置いておこう。
「わふっ、あ、あなた何者なの?」
「え?」
不意に背後から声をかけられるとそこにはナイフを構えて背を向けたまま驚いた顔ででこちらを見ながら話しかけている少女がいた。その正面には目の赤い巨大な猪。しかし佑斗の知っている猪には紫色の毛並みをした種類なんてものはいない。禍々しく捻じ曲がった牙なんてものも無いはず。全長は2~3mくらいだろうか。荒々しく鼻息を鳴らし後脚で地面を蹴りながら臨戦体制を整えている。
佑斗は少女の方をみた。髪は軽くウェーブのかかったツヤのある赤毛。重たい鎧ではなく金属の胸当てに皮のアーマーなど、軽くて動きやすそうな装備をしている。わきから見えるナイフはダガータイプだろうか。元の世界であれば確実に銃刀法違反で捕まるサイズだ。
そしてその少女には普通の人間には無いパーツが付いていた。獣耳に尻尾だ。
「猫娘?」
「違う‼ってそれはいいから‼取り敢えず手伝ってくれないっ?」
「はぁ!?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。この世界にやって来てから5分と経ってないのに戦闘に巻き込まれるなんて心の準備も出来ているわけがない。考えこむうちに少女が再び叫ぶ
「それで手伝ってくれるの!?」
「無理だ!戦闘経験なんて俺には皆無なんだよ!」
「無理なんだったら逃げるよ!合図したら後ろに向かって走るから!」
「お、おう!わかった!」
とりあえずここは素直にあの少女の言うことを聞いておいた方がいいだろう。
「3!2!1!煙玉っ!」
掛け声と共に少女がポケットから出した球を投げつけると真っ白な煙があたりに広がった。
「さっ、今のうちに逃げようっ!」
少女が手を掴んで引っぱる。
握られた手から少女の体温が伝わってくる。
佑斗は少女に手を引っぱられたまま森を抜けた。
初戦闘かと思いきや離脱 そしてヒロインの登場