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44話 コスチューム

次話まで学園祭の準備期間です

文化祭では結局喫茶店をすることになった。

間違ってもマッスル喫茶ではないので安心だが、ただの喫茶店ではない。

いわゆるコスプレ喫茶をやらされることになった。


おい衣装どうすんだ、という疑問はとある二人の生徒により解決する。


「ふふふ……いつか出来る彼女に来てもらおうと貯めに貯めたコスチュームを開放する時が来た!」

「私の予備でよければ貸すよー」


着せる対象がいないのにコレクター癖でつい色々なものを買った男子。

そして両親がディープなオタクなので子供の頃からコミケでコスプレさせられてすっかり染まった女子。

衣装直しをしたりする必要はあるものの一から作ったりレンタルしたりするよりは時間も金もさほどかからない。


「昨日は多数決をとってコスプレ喫茶になりました。 今日は誰がどの服を着るか選ぼうと思います」


クラス委員長が教壇で代表として進行する。

ちなみに脳筋君が私のことを委員長といまだに呼んでいるが、私は委員長になっていない。


「そういえばさ、何でコスプレ喫茶になったの? 昼休みに教室に帰ったらいつのまにか決まってたんだけど」


「そういえば綾いなかったね。 実はあの後、白石君が強攻策に出てさ……」


強攻策?


「うん。 クラスの皆に決闘を申し込んで無理矢理喫茶店に決めたんだ。 まぁ綾だけは見つかんなかったみたいだけど、そもそも綾を除く皆が負けちゃってるから多数決では負けになるし」


「マッスル喫茶!?」


「いやそれだけは皆で阻止した。 たぶん当日は白石君だけマッスルコスプレだろうけど」


というか決闘制度なんてあったな……入学式当日にやってからずっと聞いてなかったので忘れてた。

いやたまにやってるらしいけど興味がないから見に行ってない。


「じゃあ私が脳筋君をぶちのめして喫茶店そのものを撤回させればいいの?」


「ちゃんと校則読もうよ綾。 泥沼化を防ぐ為に一度決闘で決まったことは本人の同意がない限り決闘対象にならないんだって」


そんなわけの分からない事が書いてある校則だから読んでないんだよっ!


「校長に直訴すれば場合によって許可されることもあるんだけど、そもそも校長がどこにいるのか分からないし……そういえば入学式以来見てないね」


「大丈夫なのこの学校」


たしか茜ちゃんのお父さんだったっけ。

入学してからの記憶を順に整理していくが、確かに入学式以来姿を一度たりとも見ていない。

常識的に考えたら学園祭や夏休み前には会えるはずだと思うが……。


「まず…………」


ちなみに名前はコスプレ喫茶店に決定した。

その時にとある腐女子がが意義を申し立てたが却下されたのは完全な蛇足だろう。

何が「♂を挟むと人が良く来るようになる」だ。

『コスプレ♂喫茶』なんてやるほうも行くほうも関わりたくない。

ちなみにその女の子が片手に男二人が上半身裸でやけに近い絵の表紙を振りかざしていたのは誰もつっこまなかった。


「ナース服から行きましょう」


「待った!」


「はい、何ですか如月さん」


「いや喫茶店でナース服っておかしくない!?」


いくらなんでもアンマッチすぎるだろう……!


「お祭りだからいいじゃないですか」


ちなみに学園祭の後に片付けと休日を挟み体育祭がある。

その体育祭では生徒全員が学園祭で着たコスチュームを着用する義務があるのだ。

つまりナース服で体育祭──いい曝し者である。


「はーい。 私ナース服やってもいいよー」


手を挙げた子の他に委員長は誰かやりたいかを聞きいないことを確認すると黒板に書き込んだ。

というかやってもいいとか正気か。

だいたいどっちの持ち物だ!?


「パーフェクト女医ミラクルたんの抽選で当たったはいいけど棚の肥やしになってたあれが役に立つなんて……!」


…………この男子は教室の女子からの視線がどんどん冷たくなっているのに気付かないのだろうか。


「じゃあ次にメイド服を」


「質問!」


男子生徒が鬼の形相で立ち上がり、全力でアピールしながら手を挙げた。


「何でしょう」


「スカートの長さを聞きたい。 ミニなのかロングなのか、それが重要だ」


「ミニらしいです。 そうですよね」


「私のお古だけどねー」


「おい待て。 メイド服といえばクラシックにロング以外ないだろ。 後に改悪されたミニは淘汰されるべきだ!」

「ああ、ミニのメイド服なんざただ男を誘ってるビ○チが着るものだ」

「何を言う! 健康的な太ももが輝き、その絶対領域で視線を釘付けにするミニこそ至高……なぜソレが分からぬ!?」

「そうだそうだ! メイドがふと落とした物を拾ったり家具をしゃがんで掃除する時にチラチラと見える下着! 男なら惹かれぬ道理はないはずだ!」


…………メイド服談義が始まった。

収集がつかなくなり委員長が困った顔をしていたので仕方なしに間に入ることにする。

茜ちゃん?我関せずと堂々とノートパソコンでお仕事してるよ学校運営の。

校長仕事しろ。


「落ち着きなよ」


「い、委員長……」


「委員長はあっち。 まだ二着目だってのに時間をかけてたらいつまでたっても終わらないでしょ」


決まっているのはまだナース服のみだ。

女子のコスチュームは特定の職の制服を着るものだが、男子は逆に化け物を演じるらしい。

まぁドラキュラとかフランケンシュタインとかちょっとした小細工で何とかなるからね。

ハロウィン用の扮装セットって手もあるし。


「だいたいね、メイドはミニ以外ないでしょ」


「なん……だと……」


「確かにロングの清楚系メイドもいいよ。 でもよく考えて欲しい……エロいメイドとか最高でしょ!? そりゃあ傍に置くなら清楚系だけど学園祭という一日の夢を与えられるのはミニスカ以外ないはず!」


その言葉にロング派だった男子勢がハッとした。

うむうむ、ぶっちゃけ私はロング派なんだけどミニのほうが良いっていうようにしなければならない。

現実として用意されているメイド服はミニなのだから。

だからけっして私の趣味がミニなわけではない。

前世で嫁にミニスカメイド服を着せて楽しんでたけど、断じて関係ない。


「じゃあ委員長がメイドでいいよね」


一人の女子が呟いた一言に私は固まった。


「…………え? え……えっと、委員長は男だからメイド服着ないよ?」


「そうじゃなくて如月さんがメイド服でいいってことですよね」


本物の委員長が確認の意味でその女子に聞くとすぐに肯定が帰ってくる。

まじでか。


「なんで!?」


「だってそんなにメイド服に理解があるなら綾がやればいいでしょ」


花梨の追撃にクラスメイト達がウンウンと頷く。


「ちなみにこんなの」


メイド服の所有者である女子がスマホのスクリーンを私に見せる。

そこには胸の谷間が強調され歩けばスカートが揺れて下着が見えるであろう裾の長さになぜか肩丸出しの、いかがわしい店とかに出現しそうなメイドがいた。


「…………なにこれ。 というかなんでこんなに露出が酷いの」


「元々が陵辱エロゲのヒロインが着る服だから」


「何でそんな服持ってるの!? というか着たの!?」


そんな土下座するかのような低姿勢でカメラを撮られそうな格好をするなんて正気か。

あいつらネットに晒し者にされるのを承知でやってるんだぞ!?

そんなキモイ存在を、蜜に誘われる害虫が寄ってくるのを分かってて着るなんて!


「えっと、如月さんはエロメイド……と」


「待って委員長。 その前置詞はいらないんじゃないかな!?」


現在進行形で黒板に役割を書いている委員長に抗議するが無視してそのまま進行する。

くそっ、難聴系男の子が許されるのはハーレム作ってる主人公だけなんだぞ!


「次は……巫女服誰かやりたいですか?」


「はい!」


「如月さん。 貴方はもうエロメイドに決定……」


「花梨がやります!」


「え!?」


「なるほど推薦ですか。 構いませんよ」


斉藤:巫女


そう書かれた黒板を見て顔を真っ青にした花梨は凄い眼でこちらを睨みつけてきた。


「ひゃっほう! 俺の巫女服が火を噴くぜ!」


「ふぅん。 ちなみにどんなの?」


「ミニなのとお腹が見えるコスプレ仕様だぜ! さらになんと、後ろから衣服に手を入れれば直接胸を揉むことが可の──」


「ふざけんなぁ!」


文字通り花梨が火を噴いた。

無理矢理決められたと思ったらエロ巫女服だったので怒りは二乗である。

あ、委員長が巫女服の前にこっそりエロって付け足した。


「ちなみに水で透けブッ!?」


「もうお前は黙ってろ!」


花梨に殴られた男子は強制的に黙らせられる。

これで私と花梨で揃ってエロ服を着ることになるのだが……そういえば体育祭でも着ないといけないんだった。

当然保護者の方達…………というか変態(弟)と母さんも来るだろうし、どうしよう。

自分は断然クラシック派です

ミニはコスプレ臭凄すぎてイマイチ

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