39話 お泊り会
お久しぶりです
色々遅れてすいません
毎度のように部屋の守護者として留守をワーウルフちゃんに任せ、私の焼いた肉を置いていく。
指令は毎度のようにサーチアンドデストロイ。
あ、でも対象は変態だからHENTAIアンドデストロイか。
……おかしい、これじゃワーウルフが変態してる様にしかならない。
ピンポーンと呼び鈴を鳴らし待つこと十数秒
『はーい』
「私だよ私。 ほら、私メリーさん」
『オレオレ詐欺ならぬワタシワタシ詐欺かと思ったらメリーさんかい』
「そういえばメリーさんってメリーさんまでが多分名前だから、敬称で呼ぶ時はメリーさんさんなのかな? さんをつけろよデコ助野郎!」
『さか○くんさん!?』
驚いている未来ちゃんが通話を切ったのを確認すると私は未来ちゃん家である島田家、その隣にある篠原家へと目を向けた。
今日は篠原 明人の両親は海外へ仕事に行っているらしいのでチャンスなのだ。
今夜は変身して二人にスリープをかけて眠りを深くした後、篠原家へと侵入。
気付かれないように篠原 明人にスリープをかけた後にゆっくり部屋を調査だ。
この前は不慮の事態で中断せざるを得なかったが、今日は違う。
『そうやって切なそうに男の子の家を眺めてたら恋する女の子だね』
「ダ マ レ」
『ムギュァアアアァァァァ!?』
素早く鞄の中に手を突っ込み搾るようにして胴体を掴み挙げる。
魔法使いとして無意識的に身体能力の強化を行っている私の握力はリンゴくらいなら軽々と割ることが出来る。
当然ルーのような小動物を力を入れて握れば口から内臓を吐き出させることも可能だ。やらないけど。
「いらっしゃいやでー」
「お邪魔します」
未来ちゃんが玄関を開けたので中に入ると落ち着いた内装が目につく。
今日は混沌な空間に行かなければいけないのだ……和む空間で英気を養うのは必然である。
「花梨は先に来てるんだよね?」
「今ウチの部屋でゲームしてるでー」
ん?ゲーム?
「花梨ってゲームするっけ」
あれで中々少女趣味な花梨だ。
ゲームするより人形遊びな少女時代を過ごしていた花梨は日常的にゲームをするような習慣はない。
たまに私の部屋でゲームをしていくこともあるがそれは私に付き合ってパーティゲームをする時のみ。
「見たら分かるで」
疲れた表情の未来ちゃんに首を傾げながら未来ちゃんの母に挨拶をし、ことわってからカットしたケーキを皿に分けて持っていく。
余りは島田家においていって処理してもらう──いや美味しいから別にいいよね?
これでもこのケーキの材料費はなんと8000円もするのだ。
繊細な味の料理って材料の質が物を言うからおいしくないわけがない。
え、料理の腕も必要?そんなの前提条件で腕もないやつが高い材料で料理するとか論外。
これでも毎週のように甘味を作っているのだ。今風に言えばスイーツ(笑)。
私のスイーツスキルは中々に高いのだ。
惜しむべきはこういった個人のセンスに左右されやすい技術は見ただけで模倣できないので努力するしかないことだが、それが普通なので仕方が無い。
とにかく無駄に材料費に金をかけている私のスイーツはつぎ込んだ金に比例はしていないだろうけどかなり美味しい。
単にお土産に渡すならそこらへんでケーキを買うより私のお菓子のほうが美味しい自負がある。
まぁ売り物としては利益を考えると高すぎて買う人いないと思うけど。
と、未来ちゃんに簡単に私の週一の甘味製作事情と材料費云々の話をすると
「そんなにお金使って大丈夫なん?」
「あ」
忘れてた。
普通の女子高生は湯水のように金を使わない。
当たり前のことを忘れていたが、いったいどう説明したものか。
『というか本当にどうやってお金手に入れてるのさこの前の肝試しの時といい湯水のように使ってるけど。 たまにフラッと出て行くけどバイト?』
『うん。 ボディーガードの』
『…………は?』
『時給10万円で割がいいから大きいパーティーの時とか雇ってもらってるんだよ』
『いやいやいや。 女子高生のアヤを時給10万で雇うってどこの馬鹿なの!?』
どこの馬鹿って私の雇い主に向かって失礼な…………馬鹿なんだけど。
魔法はバレないように最小限しか使ってないけど警棒だけで襲撃犯を数度ボコボコにしてるんだし腕はいいよ!
…………一度雇い主ごと襲撃犯をボコボコにしてしまって罰ゲームさせられた時はやめようかと思ったけど。
一日メイドとかもうまじで雇い主様変態。
まぁ真面目にメイドの仕事の範囲で弄られたので実害がないぶんリョウよりはマシだけどさ……。
『ちょっと縁があってね』
『税金とかどうしてるの?』
『何か勝手に処理してくれてるらしい。 私にはよく分かんないから任せてるけど』
異世界での税金なら貴族生活する関係で学んでるけど、同じなわけがないしなぁ。
とにかく今は未来ちゃんにどう説明するべきか。
「……えーと、バイト?」
「いやなんで疑問系なん」
だってボディーガードって基本はそういう会社の人が担当するけど、中にはフリーの人もいるから一概にバイトとは言い切れなくて。
あと最近になって気付いたけど凄腕と呼ばれるボディーガードの中には当然のように能力者が混じってた……もちろん襲撃者にも。
いつも彼らが前口上を垂れてる最中に反撃を許さず気絶させるから全然気付かなかった。
というか能力者って不意の事態に弱いのね。
雇い主も雇い主で「AHAHAHA! てっきりアヤリンは既に知ってるのかと思ってたYO!」とかムカツク口調で笑ってきたのでとりあえずアイツの靴の中に犬の糞を入れておいた。
お詫びとしてフルコース作らされたけど。
「クソッ、あの似非外国人め」
「え?」
「ううん、なんでもないよ」
思わず心の声が漏れたが幸いにも未来ちゃんはよく聞いてなかったらしい。
とにかくまじで給料良くないとやってらんない職場なのだ。
「何のバイトなん?」
「…………」
よく考えたら普通これくらいは聞かれちゃうよね。
でも何と答えたらいいのだろうか。
まさか正直にボディーガードなんてヤクザな職についてるなんて言えないし……あ、別にボディーガードの皆さんがヤクザだというわけではない。
ただ身体を張るのが仕事なので間違っても私のような女子高生がするようなバイトではないだろう。
「えーと……」
答えにくそうにしている私に首を傾げる未来ちゃんが口を開こうとしたその時
「あああああ! また死んだぁーっ!?」
「「…………」
花梨らしき人物の叫び声が聞こえてきた。
いったいなんだと未来ちゃんの部屋のドアを音をたてずこっそり開くとそこには
「何さこのキャラチートじゃん!」
格闘ゲームのCPU戦で対戦キャラのあまりもの強さに難癖つけてる幼馴染の姿があった。
ギル○ィギアか……イクサ辺りで急に2対2になって迷走してるよね。
新しいのはなぜか似非無双ゲーのアクションだったし。
次はストリー○ファイターの後追いで3Dの格闘ゲームになったりするのだろうか。
『…………ねぇルー』
『なんだい?』
『私の髪って硬質化とかして武器にできないかな』
今、ゲームでは花梨が髪を形状変化させ刃にして攻撃している女性を操っている。
武器に使えるならこの無駄に長い髪にも意味が……
『なにその発想。 だいたい折れたらどうするのさ』
ダメかぁ……。
「未来もう一回勝負しよう!」
「えー……花梨ちゃん弱いからなぁ」
「なんだとーっ!? あ、綾やっほー。 ケーキ? 食べる食べる」
「やけにテンション高いね花梨。 眼も血走ってるし……薬物?」
「いやそんな危険物ウチにないから」
だがあの血走ってゲームをしていた形相は異世界で暗殺者を尋問した時のソレに似ていたのだが。
尋問中にクスリが切れて暴れだすんだけど……あれ、類似点が血走ってるだけだ。
「アタシの代わりに仇を討ってくれ綾!」
「…………んー、別にいいけどさ」
「綾ちゃん強いん?」
まぁやってみれば分かるさ。
「ええい、もう一回!」
「いいよー」
画面に『PERFECT!!』という文字がバーンと出て私の勝ちが確定する。
やってて面白くないないけど未来ちゃんが何度も対戦を強請るから仕方なくやってる。
『このゲームやりこんでるのアヤ?』
『いややりこんでないけどこういうタイミングとか反射神経が物を言うゲームはちょっとね』
銃で撃たれてから弾丸を避ける反射神経に動きの完全再現が可能な個人スキルを合わせればあら不思議。
フレーム単位でキャラを操作し、コンボに入れば理想的なダメージを与えれる。
私が最も使いやすいキャラは通常技でどんなに使い辛くても無敵時間があるキャラだ。
単純に攻撃の発生速度が早いのでもいい。。
そしてフレーム単位で画面を見切るので私がダメージを負うというチャンスはガード上からの削り以外ありえない。
ガード不能攻撃は大抵予備動作が大きいので小パンチで潰せるしね。
だから格闘ゲームとアクションゲームは面白くない……。
RPGもなぁ……主人公以上の魔法とか使えるし。
前まではSFものならやってたけど最近能力者と会ってからやってない。
「けーきうまー」
「今度は遠距離からチクチクいくしかないで!」
「ねぇ未来ちゃんそろそろ別のやらない? 飽きてきた」
「じゃあレースゲームを──」
「パーティゲームでお願い」
ボディーガード:綾の謎の資金力に納得力を持たせるためのもので、前々から何か高額のバイトをしているという設定はあった。綾はどちらかというと脳筋タイプに属されるので魔法技術でNAISEIするよりこっちのほうが説得力あると思います。
料理:実は綾の料理スキルはとあるものを除いてそんなに高くありません。というのも工夫がまるでなく人に食べさせようという気がないからです。嫌々作ってるので材料で誤魔化し向上する気配もありません。