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38.5話 めいどいんみけるけるきんぐだむ

番外編みたいなものでちょっと短いです。


始まりはルーが読んでいた分厚い本を借りた時だった。

何読んでるのだろうかと器用に前足でページを捲るルーの頭上からその本を見て驚いた。


「魔導具?」


『ん? そうだよアヤ。 ミケルケル国でマジカル$を使って買えるんだ』


「へー」


読むと不思議な現象を引き起こすと説明されている様々な道具が挿絵付きで書かれていた。

一言断って借りてみると読むだけで中々面白い。

今まで女の子がファッション雑誌を見てキャーキャー騒いでいたのがまるで理解できなかったが、こういった実用品のカタログは見てるだけで興味が出て


くるから不思議だ。

ページの一番最初に豊胸用の魔導具がデカデカと書かれていたが私には関係のないことだ。

……やっぱり思春期の女の子にとって死活問題なのだろうか。


カタログを流し読みした結果、最初に分かったのは人間用とルーのような不思議生物用、そして戦闘用で中身が分けられていることだ。

第一部は魔法少女が報酬で得たマジカル$を使って地球で使うタメの物。

第二部にはルーが地球で暮らす為の補助道具や魔法少女の支援道具が書かれている。

そして最後の第三部は戦闘用で様々な魔導具が描かれていた。

一部には『資格が必要です ※3』とかかれており、第三部の最後のページに『※3 ミケルケル王国で取得できます』と書いてあったが……訓練が必要なの


だろうか。


「でもやっぱりささやかなのが多いねー。 あと面白系」


『ボク達は能力者と違って規律を重んじるからね。 彼らみたいに無闇に社会に影響を与えたりしないのさ』


ルーが能力者をディスってるが、やっぱり仲が悪いのだろう。

私が脳筋君や少年と喋っているのもあまり良い顔をしないのだが、彼ら個人は信用しているのでうるさくは言ってこない。

ただ茜ちゃんは能力者の中でも影響のある立場にいるので本気で嫌な顔をするが。


「ん?」


とある1ページで私は目を留めた。

挿絵には小さな香水のような小瓶が書かれている。

タイトルは──


「くりあまいんど?」


『気になる物でもあったのかい?』


「…………こ、これだっ!」


『?』







ミケルケル王国で買える品物は大前提として社会に大きな影響を与えないようにされている。

特に精神に干渉する系統の魔導具は安全装置がつけられている。

そのうちの一つが全てに効用時間があること。

どんなに長いものでも2時間が限度で、しかも効果が切れた後は効果時間中の出来事を全て忘れるようになっている。

あとお供の小動物が魔法を使えばその効果を即座に消し飛ばすことが出来てしまうので悪用が出来ないようになっている。

しかし……しかしだ、逆に言えば2時間は効果があるのだ。

いや私が買ったこれは1時間しか保てないがジョーク魔導具なのでそんなに値段はしない。


「クリアマインド!」


『…………本来通販なんてやってないんだけどね』


ママに相談すると魔法少女時代の伝手により電話一本で商品を届けてもらった。

こっそり集中して電話相手の声を聞いたけど、やけに若かった……というかロリィ声だったのだが、どういう知り合いなのだろうか。

まぁミケルケル王国関係なのでたぶん現役魔法少女なんだろうけど。

ん?つまりママって他の魔法少女のことを知ってるの?


『魔法少女は繋がりが強いからね。 OBが新米魔法少女のアドバイスをするのは伝統なのさ』


「私はそんな話まったく聞かなかったけど」


『え?』


「え?」


『…………そ、そうだったかな?』


コイツ、忘れてやがったな。

分かりやすく眼を逸らして口笛吹いて──私は吹けないのに小動物の癖に生意気な。


まぁいい。

私は手に入れた小瓶をスカートのポケットに忍ばせて静かに眼を閉じ集中する。

…………なるほど。


「…………」


『え。 何してるのアヤ』


「脱いでるの」


スカートの中に手を入れて片足を軽くあげる。

ルーに嫌味を言われてから……というかそろそろプールの季節なので苦言を言われてキャラ物ではない普通のパンツを脱ぐ。

そしてドアを開けて廊下にそれを放る。


『…………ヨリコ、ボク達の教育は失敗したみたいだよ』


「しっ! 黙ってて!」


『…………』


部屋の隅に行って器用に前足で頭を抱え込んでるけど、いったいどうしたんだろう。

…………かかった!


「姉ちゃんの脱ぎたてパンツゲッ──」


「かかったな! クリアマインド!」


変態がヌケヌケとパンツに飛び込んできたが、すかさずその顔面に向かって香水をシュシュッと吹きかけた。

すると廊下に顔面着陸して鼻が折れるやばい音が聞こえた。

骨折は確か変態だと一時間くらいで治るから軽症なので全然心配していない。


…………まるで変態が不死身みたいだけど、どうやったら懲りるんだろ。


『いいからパンツ穿こうよ。 いくらボクでもノーパンは擁護できないよ』


「あ、そだね」


つい変態を釣り上げるのに確実な手段をとったが、別に私に露出趣味があるわけではない。

スカートなので足元で私を見上げるルーには大変に変態な光景となっているだろう。

え、羞恥心?いや小動物に裸見られても別に……姿形が違えばたとえ裸でも普通は性的な興奮しないし。

世の中には妙なフェチを持つ変態達がいるが、そういった少数派は除く。


「んしょっと。 それでどうかな? 効くのかな?」


『効くはずだよ。 効かなかったらクーリングオフすればいいし』


「出来るの!?」


魔法の世界なのに通販が出来たりとやたら近代的だ。

そのうちテレビ番組を作って魔法少女宅に電波を飛ばすのではないだろうか。


「ぐっ」


「あ、起きた」


頭痛を堪えるように片手を額にあて辛そうにしながらも起き上がる変態。

状況が飲み込めてないのか挙動不審になった後、私の姿を見て安堵している。


「姉ちゃん、いたんだ」


「うん。 気分はどう?」


「最悪……妙に頭が痛いし身体は重いし」


ふーん……ちらっ

膝に手をおき腕は胸を寄せあげるように挟みこむ。

体勢により自然と上目遣いになり、悩殺ポーズの完成だ。


「何やってんの姉ちゃん? いきなり屈んでさ。 ちょっとはしたないよ」


「(よしっ!)」


元変態のリョウ君の顔は赤くなっていなく、どこか呆れたような視線を向けてきている。

クリアマインド……この香水っぽい何かは『綺麗な』人を作りあげる魔導具だ。

つまり今のリョウ君は『綺麗なリョウ君』であり、『汚いリョウ君』は時空の彼方に弾け飛んでいる。

あ、いやただの比喩で別にリョウ君が二分割されていらないほうがポイされたわけではない。


「ガッツポーズ? …………まぁいいけど。 オレは勉強してるから」


「うん、頑張ってね」


「…………? 頑張るけど……?」


姉ちゃんやけにご機嫌だけど何かあったのかな?と呟きながらリョウ君が自室に入る。

それを見て私は再びガッツポーズをし、足元で黄昏てるルーに勝利宣言を告げる。


「初めて魔法少女やってて良かったと思った!」


『良かったね…………大丈夫とはいえ、本当に躊躇なく実の弟にマインドコントロールしたよこの子』


リョウ君に効いたということは私の黒歴史を体言する篠原 明人にも効くということだ。

これから篠原 明人が何かとてつもなくイタい事をしようとする前にクリアマインドすれば……。


「ふっふっふっ」


『その悪役みたいな邪悪な笑みはなんとかならないのかいアヤ? 君担当の僕としてはとても複雑なんだけど』


「はーっはっはっはっ!」


『…………ヨリコに話して花嫁修業の時間増やしてもらおうかな』

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