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33話 ばいおれんすでい

しばらくテンション補充の為に短編集みたいな感じになります

帰宅した私は部屋に設置しておいた虎バサミのトラップに引っかかって絶叫している変態に便器の水を直接飲ませてからソファーで休んでいた。

うん、一文で考えてみて(何で私コイツコロコロしないんだろ)と同時に(あれ、トイレの水ってアレにとってはご褒美なんじゃないのむしろ?)と考えながらママのご飯を待っている。

変態?今隣で寝てるよ。


「あの……お姉様? そろそろ許して頂けないでしょうか?」


「あれ、起きてたの?」


きっと変態の気分は処刑時のキリスト。

魔法で作った茨の十字架に拘束されている彼は裸で全身から血を流しながら何か言っている。


「いくらなんでもオレの再生能力には限界があるんだよ!?」


「いくらなんでも私の堪忍袋には限界があるんだよ?」


『リョウ、確かにアヤのやってることは過激だけど原因は君にあるんだよ』


「…………」


この変態はそろそろ反省したほうがいいんじゃないだろうか。


「そういや姉ちゃん」


「下ろさないよ」


「そうじゃなくて……」


「明日までそのままね」


「このまま寝ろと!?」


超痛いんですけど!

心の雄叫びが聞こえるが微塵も私の心には届かない。


「とにかくさ。 その怪我どうしたの?」


『…………』


「…………」


「え、なんで距離とるの?」


「いや、ひょっとして怪我でも興奮できるリョナフェチかと思って」


「リョナフェチって何、というか何そのゲスい性癖!?」


『ドSの上位版って奴だね。 そもそもボクには性欲がないからよくわからないけど』


世の中にはワケのわからん性癖もあるんだよおとう……変態よ。

中学校時代のクラスメイトでタコに興奮していた彼女、今はどうしてるかなぁ……。

今もまだ触手プレイがどうのとか言ってるのだろうか。


「どうせアンタも知ってるだろうけど、闇の雫(ダークティアーズ)と戦った時にちょっとね」


「あー、あれまだいたんだ」


やはり変態は闇の雫(ダークティアーズ)について何か知っているらしい……が、どうでもいいので別に聞いたりしない。

発生源を消滅とかさせられたら一番なんだろうけど、私一人じゃどのみち無理そうだし。


『そうだよアヤ。 正直、言ったところでどうにかなる問題じゃないから』


「ふーん」


「でさ姉ちゃん。 治さないのそれ?」


治さないのって今治してる最中なんじゃないか。


「いやそうじゃなくて。 ルーは治療魔法使えるでしょ?」


…………あれ


「治療、魔法?」


そういえば私も前世でよく自分に使ってた気がするけど、今世では全然使ってないな。

というか存在自体忘れてた。


『まー使えなくもないかな』


「じゃあ使ってよ!?」


『だって今回はすぐに変身して戦わなかったアヤの自業自得でしょ。 少しは痛みを憶えたほうがいい』


ぬぅ、言っていることは正論なだけに反論し辛い……。


「いいよ自分で使うから……『エイド』」


傷口に手を当てて無詠唱で下級治療魔法を発動──しない。

失敗か?と思いもう一度唱えてみるが魔法が発動する気配はない。


「んー?」


『ボクが治すよ』


ルーが何かを唱えると私の傷口が淡く光り癒していく。

治療魔法の効果が現れている証拠だが、治してくれるんなら今朝の段階でとっとと治してほしかった。


「でもなんで失敗したんだろ?」


「てか姉ちゃん使えるの?」


「そのはずなんだけど」


元々治療魔法は異世界で資格がないと使用しちゃいけないけど私は持ってなかったし、緊急時以外は使わなかったんだけど……変だな。

もしかしたら他にも使えなくなってる魔法があるかもしれない。

一応今度確認しておこう……といっても私の使える魔法ってだいたいが白兵戦用の戦闘用が大半なので確かめられるのは下級魔法が限度だろうが。


『ヨリコ、そろそろご飯が出来たんじゃないのかい?』


「そうね。 アヤ、手伝って頂戴」


「うん」


今日は一日中歩いていて疲れたし、お腹も空いている。

私は早くご飯が食べたいので変態を下ろすのも面倒だと放置し、食器を出した。

ご飯を食べてる最中隣で腹の鳴る音がしていたけど、今日の変態のご飯は空気だ。

量だけは私達の夕食より多いのできっと彼の腹も膨れることだろう。


「姉ちゃんオレは仙人じゃないんだからエアーでお腹膨れないよ!?」


「変態だから大丈夫。 ほら、パンツ目の前に置いとくから」


「まじでっ!? それなら一食くらい抜い──ってオレのパンツじゃんこれ!」


「え、上の下着も欲しい? はい」


「まいあんだーしゃつっ!!!」







例の如く変態が中学に行く為に家を出たのを確認してから登校する習慣のついた私は花梨に合わせてもらい、最近は少し遅めの登校となっていた。

とはいうものの元々私達は結構早めに着くようにしていたので皆の登校時間が被るようになったくらいか。

そういえば脳筋君はよくわかんないけど私達が教室に着いたらいつもいるのだが、何時登校なんだろう。


「脳筋君?」


「うん。 あの筋肉馬鹿」


「あー、白石のこと? ていうか綾さ、さすがに失礼だから脳筋君ってあだ名やめようよ」


花梨が諭すように言うが、今更な話だし変えるのが面倒だ。


「えー」


「…………綾って結構口悪いよね」


「失礼な」


私ほど優しい人は滅多にいないはずだ。

この前だって家にいる変態に優しい声をかけたら泣いて喜んでたくらいだ。

おかげで風呂場が血だらけになったけど。


「白石なら朝の6時には学校にいるって言ってたけど」


「6時!?」


そんなに早く登校して何してるんだあの脳筋は……いやそれよりもなんで花梨がそれを知ってるんだろうか。


「そりゃあよく話すし」


「まじで!?」


「昼休みとか綾はどっかにいくじゃん。 その時によく……ね」


昼休みは茜ちゃんのフレンドコールに応じて生徒会室(茜ちゃんの部屋)にいっているのだが、花梨は脳筋君と実は仲が良いのか。

よく考えたら二人とも考えるより先に行動するという脳筋キャラなので性格は合ってる。


「……何か失礼なこと考えてない?」


「いやカリンも脳筋キャラだったなと思って」


「腹黒で天然の綾に言われたくない!」


「腹黒で天然って言うな!」


「綾が先に脳筋って言ってきたんだろ!?」


登校中の醜い口喧嘩は教室まで続いた。







脳筋君の名前……白石 豪。

彼は高校生らしからぬ巨漢で闇の雫(ダークティアーズ)との戦いにおいてはその巨体に恥じぬように最前線へと立つ男だ。

私はなんだかんだ言いながら彼のことは認めている。

というか男子で私のことをエロい目で見ない人物はわりと珍しいのでそれだけで高得点だ。


いやぁ、女子ってそういう視線は分かるもんなのよ?


なんて理屈では断じてない。

単に前世の貴族生活で誰がどういう感情を自分に向けているのか分からないと即潰されかねない生活を送っていたからだ。

いや救世補正でお家取り潰しはないけど利用する気満々だとかハニートラップだとかが多すぎて……。

よく創作じゃ馬鹿な貴族とかが書かれることが多いけど現実的に貴族の当主で馬鹿というのはありえない。

なぜなら貴族は子沢山なことが多く一番の継承権を持つ長男が愚かなら別の人物が継ぐことになるからだ。

理由は長男が弟妹に謀殺されたり単純に当主が別の子供に継承させたり。


そういうわけで基本的に貴族社会は化け物の巣窟だ。

いやまじで気を抜けない日々で常に他人が自分をどう見ているのかを把握しなくちゃいけなかった。

その副作用というべきか、今は嫌悪感からエロい目で自分を見る視線にはすぐ気付くようになっている。


というわけで私は脳筋君のことは嫌いじゃない。

いや(女子合わせると順位は低いけど)男子の中では五指に入るくらいに好感度は高い。


「ふんぬ!」


高い、んだけどやっぱり脳筋君だなぁと私は思うわけだ。


「はぁっ!」


放課後、茜ちゃんから聞いた対闇の雫(ダークティアーズ)のメンバー達の訓練場に赴いた私は入り口で遠い目をしていた。

旧校舎の体育館倉庫から行ける地下には巨大な訓練設備があったのだ。

茜ちゃん曰く入り口はここだけではないらしいのだが……いや本当に何なんだろうこの学校。


「ふぅぅぅぅ……はーっ!」


今、目の前には脳筋君が能力の訓練していた。

脳筋君がその拳を振るう度に淡い光が発せられ、周囲の人たちの頬が引き攣る。

当然私の頬も。


「い、いやだーっ!」


「安心せい……痛みは一瞬だ」


「ぶゅぇっ!?」


訓練で傷ついた人物が集められた訓練場の片隅、そこで脳筋君は元気に働いていた……治療師(・・・)として。


「…………」


「ぬぅ? おおう、委員長ではないか! 昨晩は怪我だらけで帰ったから心配したのだぞ」


「え、うん」


そんなことより何で脳筋君が殴った相手は皆怪我をしているのだろうか……。


「今日は委員長の怪我を我輩が治そう思っていたのだが、必要がないようだな」


「……その拳で?」


「うむ! 我輩の治療はエネルギーを必要とするのでな……バッテリーを使っても良いのだが、殴ったほうが環境にも優しいのだ」


心には優しくないと思います。

ほら、そこで傷を負った訓練中の能力者の人が「こんな怪我くらいで治療してもらう必要はない!」って叫んでるじゃないか。

だいたい殴って回復って傍から見ればただけが人に追い討ちかけてるだけだよ!

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