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恋咲く季節  作者: 銀 歌月
第一章 うつり変わる季節
7/19

6 カオス

今回から会話が多めです。

 いろいろ考えているうちに全員の自己紹介が終わった。

 里山先生が学園の決まりや授業について説明する。

「教室の場所とか体育館の入り口で配ったパンフに載ってるから各自で見とけ。案内なんてしないからな、高校生にもなって迷子になるなよ。

 分かったら帰っていいぞ。あっ、今日からもう部活見学始がまっている。見たい奴は食堂で昼を出しているからちゃんと食べてからまわれよ。はしゃいで倒れるな、面倒だ」

 そう締めくくると、解散といいそのまま教室から出て行った。

 態度はあれだが、結構生徒のこと心配しているらしい。それとも本当に面倒なだけだろうか?

 まだよくわからないな。はずれではなさそうだけど。


 帰る準備をすると江梨香が来た。

「結愛。私は今日から美術部顔出すから。先輩が来いって。あんたどうする?」

 手を止めて考える。特にしたいこともないけど、部活ができるのは高校までしかない。

「私はどうしようか。暁の部活あるからお弁当は作ってきたんだけど。特に行きたいとこないしな」


 悩んでいたら中等部でも一緒だった森真紀ちゃんと高杉紫苑ちゃんが話しかけてきた。2人は比較的仲がいい方だ。どこにでもいる感じの女の子だがしつこいこともなく、明るくおおらかな性格の真紀ちゃんと少し引っ込み思案な紫苑ちゃんのコンビはちょうどいい感じで、一緒にいて心地いい。

「結愛ちゃん。せっかくだし、うちらと一緒に行こうよ」

「真紀ちゃんと紫苑ちゃんって手芸部じゃなかった? そっちはいいの?」

 たしか2人とも手芸部だったはずだ。ぬいぐるみもらったことあるし、すごくうまくできていたんだよね。私にはできないよな。

「うん。せっかく高校生になったんだからいろいろまわろうと思って。昼は食堂になるけどいいかな」

「もちろん。人が多くなる前に行く?それとも時間ずらそうか?」



「私は先輩からすぐ来るように言われているから。それじゃ、またね」

 江梨香はそのまま部室に行くようだ。きっとお弁当持ってすぐにくるように言われたんだろうな。

「先輩も変わってないんだね……。お疲れ。

 あとで見に行くかも。またね」



「ねえ。僕も一緒にまわっていいかな?」

 どうするか3人で話し合っていたら梅霖くんが声をかけてきた。

「もっもちろん!」

 真紀ちゃんが顔を赤くして答えて、紫苑ちゃんは私の背中に隠れる。

 たかが話しかけたくらいでこれとはさすがとしか言いようがない。


「ありがとう。結愛ちゃんもいいかな?」

 人なつっこい笑顔で聞いてくる。これ断ったら罪悪感がすごくしそうで断れない。まあ女子はその前に笑顔にやられてそうだ。

 しかし、なぜそこで私に振る。もしかして顔に出てたのかな。どちらかといえば答えはNOだ。こんなのと一緒にまわったらお姉さま方からの猛烈アプローチを受けてしまう。そうなったら、隅っこで見守るぐらいしかやることなくなる。


「私はいいけど…

 女子の中に男子一人で大丈夫?」

 相手の心配をしているようだが、遠まわしに女子の中に入るなと言っている。

 一応、空気は読むが自分の考えは曲げない。それが私のスタイルだ。

「心配してくれてありがとう。 確かに君たちと僕1人で周ったら男子に恨まれそうだね」

 正直、引きました。

 そんな斜め上で解釈されるなんて思ってもいなかった。わざとなのか、天然なのか分からない。

「そんな意味で行ったわけじゃ無かったんだけど」

 私以外の2人と近くで会話を聞いていた女子は一斉に顔を赤くして照れている。なんでそうなるんだ?


「なら俺も一緒に行っていいか?」

 そんなカオスな空気を破ったのは、隣の席の名前はたしか戸松くんだったと思う。

「食堂って中学でも一緒だったんだよな。俺初めてだから案内してくれると助かるんだけど」

 梅霖くん一人と行くよりかはだいぶいいと思う。主に女子の嫉妬とか。クラスのほぼ全員がこっちを見ている。視線が怖い。男子まで虜にしたのだろうか。恐るべし、梅霖くん。

「じゃあ。先に食堂行こうか」

 早くこの話を終わらせるためにせかす。この雰囲気だと次から次に希望者が来そうだ。

 あんまり、人ごみは好きではない。早く教室から抜けな来れば。


 しかし、その願いは叶わなかった。

「俺もいいかな」

「私も一緒にいきたい」

「抜け駆けはずるいぞ!俺も行く」

「じゃあ私だって」


 話を聞いていたほとんどの人が名乗りだしてくる。こうなったらもうどうしようもない。



「それならせっかくだしみんなで行こうよ。あたしたちもよくわからないし。クラスの親睦も深めたいし。行きたい人全員でいちゃおうよ。ねっ、花凜ちゃん!」

 その場を収集したのはゲームではヒロインの親友になる松島理央まつしまりおの一言だった。


 すでに仲良くなったのか花宮花凜に笑いかけている。当の本人は急に話しかけられて顔が引きつっている。嫌だったのだろうか。


 気が付いたらクラスの大多数が行くことになっていた。自己紹介でもう部活決めていると言った人までいる。君たちの目的はいったいなんなんだ。私たちは部活を見に行くだけのはずなのに。初めに話していた私たちは蚊帳の外でみんな盛り上がっている。

 ふと、隣を見たらいつの間にか梅霖くんがいた。困ったように笑ってこっちを見ている。きっと私も同じような顔をしているだろう。


 どうしてこうなった。

「はは…」

 乾いた笑いが漏れる。これだけいれば一人ぐらい抜けてもきずかれないよね?


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