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恋咲く季節  作者: 銀 歌月
第一章 うつり変わる季節
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4 新しいクラス

 入学式は特に何もなく終わった。

 しいて言えば攻略キャラの生徒会長の獅冬海翔が在校生代表で、秋月蓮が新入生代表で挨拶した時少し会場がざわついたぐらいだ。

 校長の話は短くも長くもなく要約すると勉強もスポーツも自分のペースで頑張ればいいというものだった。特に面白みがない普通の入学式だった。何かあっても困るが。いくら進学校といっても居眠りしている者もいたくらいだ。


 ホールから教室に移動する。教師が先頭にいるので話す人もいない。そこまで校則が厳しいわけではないから少しくらい話したって怒られるわけではないだろうが受験組はあこがれの桜坂学園ということで緊張しているのが見てわかる。持ち上がりの方はその雰囲気につられていたり、緊張している受験組を面白そうに眺めていたり。

 ここで誰かの緊張をほぐそうとする人がいないのは人間としてどうなんだろうか。私も同じだが。


 1-Aの教室に着く。黒板に座席表が貼ってあり、窓の方から五十音順だった。私は運がよく窓側の一番最後。特等席だ。

 江梨香は相田という名字で窓側の一番前だった。秋月くんはその後ろ、お弁当とかの時は江梨香にこっちに来てもらった方がいいかな。

 そういえば、ゲームでもこの位置で小春ゆあが寝ていた。あれ、席替えってなかったような。いつもここで寝ているか、たまに起きていると思ったら窓の外を見ていたことしか思い出せない。


 全員が席に着いたのを確認してこの教室まで案内した教師が自己紹介をする。

「このクラスの担任になった里山秀樹。理科全般を担当しているが地学が専門だ。天文学部の顧問をしている。興味があるやつは3年の部長のところに行け。オレのところには来るな。

 あと、席替えはしない主義だから周りの奴は早く覚えて仲良くなった方がいいぞ。窓側の方から自己紹介始めてくれ」


 なんか気が抜ける挨拶だ。席替えなし宣言に文句をいう生徒もいる。私は特等席だからいいが周りの生徒とはそれなりに仲良くした方がいいかな。


 まず、江梨香が立つ。

「相田江梨香です。よろしくお願いします」

 それだけ言うとすぐに座る。

 空気が凍った。予想していたし、江梨香の性格から考えて不思議ではない。しかしトップバッターがこれではって思っている人が半分はいるだろう。江梨香は成績はいいし顔も整っている方だが性格がきつめということをマイナスと見る人が多い。もちろん私はそんなこと思わないが。


 そんな空気を気にせず、秋月くんが立つ。

「秋月蓮」

 うん。もっとひどかったよ。名前しか言わないなんて、予想はしていたけどこの後の人大変だな。

 女子はそんなこと気にせず見とれている。さすがイケメンだ。きっとクールだと思われているのだろう。間違ってはいないはずだがイケメンは世の中得だよな。


 改めて、秋月くんの方を見る。整った容姿が鋭利なまなざしと相まって冷たい印象を受ける眼鏡男子、といったところだろう。この上学年主席なんてモテないはずはない。


 中等部からの人は2人の挨拶にやっぱりかという苦笑をしている。

 秋月くんは言わずがな、江梨香も結構有名だったし知っている人はこうなることを予想していたのだろう。


 次の人は持ち上がり組の人だった。あらかじめこうなることを予想していたのかそこまで困った様子はなく普通に挨拶して場の空気をもとに戻した。それどころか笑いもとっていて、2人のフォローまでしている。すごいな、私にはできない真似だ。


 すぐに私の番が来た。前の人が座ると同時に立ち上がる。

「小春結愛です。持ち上がりになります。趣味は読書で部活は決まってません。もし同じような人がいたらよかったら一緒に部活まわろうね。一年間よろしくお願いします」

 短いが私にはこれくらいがいい。最後は笑顔で言う。これで印象は悪くないだろう。

 部活のくだりは半分が本心だ。江梨香は中等部から美術部だから一緒にまわることはない。だから一緒にまわるというのは本心。でもどの部活にも入るつもりはない。面倒だし。

 それに演技の先生が最近厳しくて忙しいのだ。きっと彼氏に振られたからだろう。八つ当たりだ。あれがなかったらとても良い先生なのに、もったいない。

 でもみんなと仲良くしますよという建前は必要だろう。一応このクラスで1年間は過ごすのだ。印象は良い方がいいに決まっている。


 半分以上終わったところで、梅霖くんの番が来た。立ち上がった瞬間から場が湧き立つ。

「シリル・梅霖・モロ、こっちでは梅霖シリルって言います。フランスからきて祖父が日本人なので名字があるんだ。梅霖は梅雨って意味だったはず。言いづらいし気軽にシリルって呼んでね。

 日本はあんまり来ることがないから分からないところとか教えてほしいな。向こうで演劇やってたからもしかしたら演劇部に入るかも。これからよろしくね」

 すべて笑顔で言い切った。女子と一部の男子までもがその笑顔にやられている。まあ、綺麗だけど溜息つくまではないと思うな。

 中性的で実は女の子といっても信じてしまいそうだ。外見は天使、性格もフレンドリーで人気になるだろうな。でも会話してわかったのは人をからかうのが好きみたいだ。私の正直な感想はさらっと鬼畜な宣言しそうで怖い。


 でも、梅雨って季節のことではないよね。時期のことだよね。あんなキャラいなかったし勘違いならいいけど。もしものために近づかないようにしなくちゃな。

 もう遅いかもしれないけれどまだ、ただのクラスメート。これから近づかなければいい話だ。大丈夫。私ならできる。だって今までだってそうしてきたんだ。


 だから私には彼氏がいない。興味がないしまず第一に必要性を感じない。

 前世でもそうだったけど恋というものが分からないのだ。好きという気持ちはわかる。家族のことも江梨香のことも好きだ。断言できる。

 恥ずかしかったら顔だって赤くなるし照れたり焦ったりもする。

 恋愛小説を読んだら主人公の気持ちは理解できるしドキドキする場面だって分かる。

 理解はできる。納得もしている。でも共感できないのだ。家族に対する好きと恋人に対する好きの違いが分からない。

 だから、恋愛シミュレーションである『恋サク』が最後までできなかったのだろうか。初めから無謀だったのだろうか。

 私のあの評価は間違いではない。的を射ている。



 次の男子は普通だった。そして、次に立ったのは亜麻色の髪ショートカットの女の子だった。

 この席から顔は見れない。その子がどこか聞き覚えのある声で話し出す。

「受験組の花宮花凜。勉強よりか運動が好きで部活は決まってない。どちらかというと男っぽいとこあるけど気にしないでくると助かるかな。これからよろしく」

もうほとんどの人が分かると思いますが…


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