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恋咲く季節  作者: 銀 歌月
第一章 うつり変わる季節
15/19

14 癒し

 3階は静かだった。

 本来なら吹奏楽部とか軽音部の練習の音が聞こえるらしいがその2つの部活は今日はホールで練習しているとパンフに書いてあった。意外だが吹奏楽部と軽音部は仲がいいらしい。同じ音楽だけど吹奏楽は規律がありそうで軽音部は自由そうと考えていた。だから仲がいいのは意外だったのだ。文化祭だけでなく昼休みなどにミニステージを開いている。中等部も合同らしいが見に行ったことはない。だってわざわざ自由時間を使って人の集まるところに行きたくはない。今日も新入生向けのステージの準備や練習をしているのだろう。


 他に3階にある部活は文芸部と天文学部。


 まずは文芸部に行く。眼鏡をかけた先輩が相手をしてくれた。ネクタイの色から2年生なのが分かる。顔は整っているが派手ではなく、普通という感じの男子生徒。でもよく見たらカッコイイみたいな感じ。隠れて人気があるタイプだと思う。だがあくまで平凡。

 いくつか作品を見せてもらったが結構面白いものからあんまりってものまであった。特に面白いと思ったのは相手をしてくれた先輩が書いたものらしい。つい感想を長々と言ってしまった。またほかの作品も読んでみたい。

 正直にそういうと、将来は作家になるのが夢と言って恥ずかしそうに笑った。不覚にもその姿に癒された。今日は美形との遭遇率がいつもより高いから平凡っぽい人に癒しを感じたらしい。

 だいぶ疲れているのかな。早く帰った方がいいのかもしれない。でも、ここまで来て帰るのはもったいない。あと一つ周れば文化系の部活コンプリートなのだ。吹奏楽部と軽音部は別としてだが。


「そんなことより、どう? 文芸部入ってみない?」

 意味のない思考を戻したのは少し照れくさそうに言う先輩の声だった。今は先輩と話しているのに失礼だったな。

 それよりも文芸部か。先輩には悪いが私に文才はない。いや、作文で賞をとったことはあるが、自分で新しい物語を作るのは無理だと思う。誰かの人生ものがたりを読むのは好きなんだけど生み出すことはできない。隠しても意味はないから正直に話す。


「読むのは好きなんですけど、私が新しい物語を作るのは無理だと思います。せっかく詳しく説明してもらったのにすいません」


 あれ、入るつもりがないのに見て回って相手の時間を使わせるなんて、結構悪いことしてたかもしれない。いや、冷やかしのつもりなんて全然なかった。高校生になったんだから部活も悪くはないかなと思っていたしいいかな。まあ、必要以上に関わらないようなところなら入ってみたい気もするけど。

 その点ここの雰囲気は好きだ。ここは落ち着いた雰囲気が漂っている。相手をしてくれている先輩の他にも5.6人の生徒がいるがみんな集中している。本を読んでいたり何か書いていたり、結構マイペースな人が多いのかもしれない。今までのところのように構ってこない。そこは私にとってありがたい。


「なら仕方ないね。でも読むのが好きならまたここに来る? 感想とかも聞きたいし。さっきの作品の感想も参考になったから」

「いいんですか!」


 ついうれしくてはしゃぎ気味になってしまった。なんか今日は調子が悪い。いつもならこんなことしないのに。でも学校に落ち着ける空間があるのは貴重だ。


「すいません。ここの雰囲気が心地よくてまた来れるのがうれしくて…」

 照れ隠しで曖昧な笑みを浮かべてしまう。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。2回目の高校生にもなってこんなことではしゃいでしまうなんて情けない。


 先輩は少し目をそらした。気に障ったのかな。しかしすぐに何でもないように取り繕う。


「あ。まだ自己紹介がまだだったね。僕は高橋樹たかはしいつき。これからよろしくね」

「小春ゆあです。こちらこそよろしくお願いします」


 お礼を言って部室から出る。あとは天文学部だけだ。早くいってしまおう。


 

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