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恋咲く季節  作者: 銀 歌月
第一章 うつり変わる季節
12/19

11 演劇部

 夏瀬先輩と別れて校舎に戻って来た。

 

どうしよう。このまま帰ろうかな。どうせ部活には入らないだろうし。でも昼を済ませただけで帰るのはなんか負けた気がする。せっかくの高校生活だし部活ぐらいは見学してもいいかな。お母さんたちも高校生なんだから部活入ればって言っていたし。

 どこから行こうか。まず、運動部は対象外。きつい練習なんてする暇はない。それなら、吹奏楽部と合唱部、演劇部もダメか。文化部の比較的活動がないのか、個人で活動するかのどちらかになる。あれ、そしたらわざわざ部活に入らなくていいような気がしてきた。

 考えたらごちゃごちゃしてきた。なんとなく目についた部活に行けばいいかな。


 高等部の校舎に行く。運動部の部活等はグラウンドの隣にあり、文化部は特殊教室がある校舎の教室が使われている。

 運動部は今日は見なくていいかな。ひとまず、一階から見ていこう。


 一階には茶道・華道部、漫画研究会、ゲーム研究会があった。茶道・華道部は空気がなんか苦手だった。堅苦しいといえばいいのだろうか。いかにもお嬢様って感じ。漫研とゲー研はしゃべってばかりで休み時間との違いが見つからなかった。あと入って行ったらすごい緊張された。なんでだろう? まあ、ゲームも漫画も1人で楽しむものだから入るつもりはないが。



 

 一階の最後は演劇部だ。中から声が聞こえるから人はいるだろう。教室のドアを開ける。そこには練習風景が広がっていた。まだ入学式初日なのに、前の2つとは比べたらいけないほど真剣だった。


 ――すごい……


 練習していたのはなぜか梅霖くんだった。セリフの言い方から間の取り方、目線、歩き方など細かいところまでうまい。言葉が出ず、思わず見とれる。

 入った時に感じた真剣な空気は梅霖くんを中心に広がっていた。新入生のほとんどは見入っていたが。


「あなたも、入部希望者?」

 先輩の1人に話しかけられる。

「入部希望ではないんです。まだ決めてなくて。 今日はいろんなところ見て回っているんです」

 失礼だが、梅林くんから目が離せなくて返事が遅れてしまった。謝っておく。先輩は気にした様子はなく、私の視線を追って梅霖くんを見た。


「彼すごいわよね。一年生なのに私たちよりもうまいから先輩の立場がないわ。あと、謝る必要はないから。あなたはまだいい方よ。さっきまでみんなあの子のこと見ていて練習どころじゃなかったもん」

「引き込まれるっていえばいいんですかね。見入ってしまいます。でも、なんで一年生が練習をしているんですか?」

 さっきから気になっているんだが一年生が練習して先輩たちが教えている。いくら入部希望者でも初日から練習は少しおかしい気がする。あと、女子が多い。

「ああ、今日から一週間は体験で一年生にっちょっとした寸劇をしてもらおうと思って。もう少し早く来たら私たちがやっていたんだけど、今は練習中ね。あなたもやってみる?」

 他のところも行く予定だから遠慮しときますと言おうと思ったら邪魔された。原因はさっきまで真ん中にいたはず梅霖くんだった。


「結愛ちゃん、今来たんだ。せっかくだから一緒に練習しよう。僕の相手役やってよ。はいこれ台本」

 何も言えないまま台本を渡される。梅霖くんは笑顔で、断られることを考えてないのかわざとなのか分からない。でも、周りの女子からの視線が怖いことと自分の顔が引きつりそうなのは分かる。


「私今来たばっかりでどんな劇かわかんないし、無理だよ。それに、ほかの部活も見てまわるつまりだし。練習していた子にやってもらえばいいんじゃないかな、相手役」

 できるだけ自然に見えるように断り、台本を返す。

 ちなみに、今の発言でこっちを見ていた女子はさっきまで見とれて練習をしていないのを隠すように練習し始めた。ほら、私なんか誘わなくても君と練習したい人はたくさんいるようですよ。周りを見てください。何とか視線で伝えようとするが気づかないのか気づいているのか。


「それじゃ、僕が教えてあげるよ。寸劇だからすぐ終わるし、他をまわる時間もあると思うよ。それなら大丈夫だね」

 キラキラの笑顔で言われた。何が大丈夫なんだ。全然大丈夫なんかじゃない。呆れて何も言えない。

「それとも、僕じゃ嫌かな?」

 なかなか返事をしなかったからか悲しそうな顔で聞かれた。きれいな碧い瞳を伏せ悲しそうに立つ姿は絵になる。だが、やめてほしい。罪悪感が半端ない。

「違うよ。ただ演劇するのが恥ずかしいだけだから、梅霖くんのせいじゃないよ」

 別に恥ずかしいわけではない。これでも声優志望なのだ。演技だって小さいころから習っている。人前で恥ずかしいような演技をするつもりはない。しかし、断るための言い訳をこれ以外に思いつけなかった。本当に


「そんなのみんな一緒だよ。練習すれば大丈夫だよ。ですよね先輩」

 隣にいた先輩に同意を求める。先輩はもちろん肯定。

 変わり身が早いと思う。手を引かれて中央まで連れてこられる。また台本を渡される。いや押し付けられたという方が正しい。もう逃げられる気がしない。ここで断ったら私が悪者になってしまう。だってまた梅霖くんが悲しそうな顔したら私のせいになる。さっきの悲しそうな顔の時視線が痛かった。なんでそんな顔をさせるんだって視線。いったい私にどうしてほしいんだ。


 やっぱり、梅霖くんは苦手だ。ペースを崩される。

 ここまで来たら諦めて演技に集中しよう。うん。現実逃避って素晴らしいよね。

結愛ちゃん壊れました。

最初は演劇部はすぐ終わるはずだったのに、シリルが出てきてこんなことに。作者もシリルは調子が狂います。


書き上げたばかりなのでもしあったら誤字脱字の報告お願いします。

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