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恋咲く季節  作者: 銀 歌月
第一章 うつり変わる季節
11/19

10 不意打ち(響視点)

最初の数行が書きたくて…

続きがなかな書けなくて大変でした。

 結愛ちゃんが去って行った方を見る。まだ顔が熱くなっていた。

「あの不意打ちはないでしょ」

 呆然とつぶやいた言葉は誰に向けての言葉なのだろうか。

 あれで天然って狙っているより質が悪いような気がする。暁君が食堂で言っていた言葉を思い出す。


 ++++++

 やっぱり、今日の食堂は混んでいた。毎年入学式の日は部活を見学に来る1年生がほとんど食堂に来るため混んでしまう。いつもは弁当の人も初日ということで忘れている人が多いのも原因の1つだ。

 クラスの仲のいい奴らと来るまではよかった。しかし、弁当を持ってきているのは僕一人だった。

 この中で席をとって食べるのはと思っていると中等部のサッカー部が集まっているところを見つける。なんとなく見ているとキャプテンと副キャプテンの2人が何かを持って話していた。もしかしたらと思い友達に承諾を得て2人のところに行く。


「ねえ、2人とも弁当なら一緒に食べない? みんなここで食べるらしくてなんか食べづらくて」


「響先輩もですか。毎年入学式は混むのにみんな忘れるンッすよね」


 大輔君が少し崩れた敬語で答える。大輔君は中等部のキャプテンでたまにある合同練習などで一緒に行動することが多い。やんちゃという言葉が似合う明るい奴だ。その隣にいるのは副キャプテンの暁君。サッカーはもちろんのこと勉強もできて穏やかな性格の少年だ。

 しかし、今はどこか別のところを見ていて話しに入ってこない。暁君の様子に気付いた大輔君が声をかける。

「暁? どうしたっす、話聞いてたっすか?」

「ああ、もちろん先輩はいいんだけど姉さんも誘っていいかな? 困っているみたいで」

 少し苦笑して答える暁君の目線の先にいるのは高等部1年の団体だった。人数が多いからクラスで来たかもしれない。


「もちろん。暁君のお姉さんなら話してみたいし。困っていたのは僕も一緒だからむしろ誘ってあげなきゃ」


 暁君がありがとうございますと答え携帯を取り出すとメールを打った。

 いくら兄弟でも先輩に話しかけるのはあんまりしないのかな。まあ、あの団体に入るのは勇気がいるだろうし。それにしてもみんなで来るなんて初日から仲のいいクラスだな。

 そんなことを思ってみていると長い黒髪の女子生徒が立ち止まり携帯を取り出した。あの子が暁君のお姉さんなのかな。ここからではあまりよく見えない。


「結愛先輩と会うのなんか久しぶりな気がするっす。最近暁の家にいってないからな」

「大輔君は知っているの?」

「ええ、すごいっすよ。兄弟そろって頭がいいし容姿もいいしで。しかも優しくて料理もできる。俺もあんな姉がほしかったすね」

「へえ、あの黒髪の子かな」

「はい。そういえば、俺が初めてあった時から髪型変わってないっすね」

「ああ、あれはなんかこだわりがあるらしくて、僕も短い髪の姉さんは小さいころしか見たことありません」

「何のこだわり?」

「なんか憧れだったとかしか聞いたことないですね」

「結愛先輩の憧れってなんすかね」



 なんとなく会話を続ける。どうやら、暁君のお姉さんは結愛ちゃんというらしい。大輔君は知り合いのようだ。

 クラスメートと話しているからこっちに来ることを話しているんだろう。

 取り留めのない会話を続けていたらこっちに向かって歩いてきた。


「あっ、先輩。姉さん時々天然なとこあるから気を付けてください」

 なぜか急に奇妙なことを言いだした。忠告みたいだけど何の忠告だろう?聞いてみようとしたら本人が来て聞けなかった。 



「ごめんね。助かったよ、暁」


 暁君とはあまり似ていないけど大輔君の言っていた通りかわいかった。なんか不思議な雰囲気を持っている。どういっていいかは分かんないけど他とは違う感じっていえばいいのかな。暁君に話しかける姿は本当に信頼しているらしいことが分かる。

「大丈夫。こっちも混んでる食堂で弁当食べるのは遠慮したかったし。ちょうどよかったよ」

「ありがと」

 ただ、満面の笑みの破壊力はきつかった。僕に向けられているわけでもないのに顔が熱くなる。暁君が少しうらやましいと思った。当の本人は慣れているのか全然気にしていなかったけど。


 そのあと少し話して食堂を出る。歩きながら話すと他とは違うと思った感じは全然なく普通の女の子って感じだった。少し他人行儀なところがあるけど会ったばっかりの先輩に対する態度としてはおかしくはない。


 半分ぐらいのところで飲み物を忘れたことに気付く。結愛ちゃんが買いに行こうとしたけど、すぐ暁君に止められてそのまま暁君と大輔君が走って行った。一応初対面同士で残ってしまう。でもなぜか気まずいとは思わなかった。


 そういえばなんか大勢で食堂に来ていたな。それを聞いてみよう。

「飲み物はあの2人に任せて先に行こう。せっかくだから結愛ちゃんの話聞きたいな。そういえばなんか大人数で食堂に来ていたね。けっこう目立っていたけど」

 聞いてみるとすぐに答えが返ってきた 

「最初は私を含めて3人で部活見学一緒にしようって。そこに男の子が1人声をかけてきて、一緒に行くのはいいんですけど女子の中に男子1人で大丈夫か聞いたんです。そしたら近くにいた男子が声をかけてきてくれて、5人で行こうとしたらいろんなとこから声があがちゃって。結局行きたい人みんなで行くことになって、クラスの大半で行くことになりました」


 結愛ちゃんの表情は苦笑い。たしかにそんなことになったらいくらなんでも呆れちゃうかな。でも、元気なクラスだな。

「へえ、みんな結愛ちゃんたちと行きたかったのかな? 人気なんだね。でもそれなら僕たちと来ちゃってよかったの?」

 みんなが付いてきたくなるなんてきっと人気なんだろう。


「違いますよ。最初に話しかけて来た男子が人気なんです。フランスから来たらしく祖父に日本人がいるクウォーターって言ってました。留学生は珍しい上に綺麗な子だったのでみんなお近づきになりたかったんじゃないですか」

 否定する。でも、その留学生だけじゃなくて結愛ちゃんと一緒に食べたかった子もいるはずだ。結愛ちゃんは美少女だし、性格もいい。きっと仲良くなりたい男子も女子も多いはずだ。分かる気がする。


 確かに団体のきっかけはその留学生だろう。その子もすごいのかな。

 でもさっきの言い方からして結愛ちゃんはあまりよく思っていないみたい。

「そんな子がいるんだ。僕もあってみたいな。部活まわるなら明日はもう噂になってたりして」

 なんとなく思っていたことを言うと小さく笑った。面白かったのかな?


「あっ、でも結愛ちゃんはその子と一緒に食べなくてよかったの? 最初に話しかけられたんでしょ」

 さっきの話を聞いていると最初に話しかけられたのは結愛ちゃんたちになる。留学生の子は結愛ちゃんと行きたかったのじゃないかな。

 ふと疑問に思ったことを聞いてみる。結愛ちゃんの方を見ると髪がなびいていて表情が見えない。さっきまでこっちを見て話していたのにどうしたんだろう。




「嫌いなんです。にぎやかなの。まさかあんなに多くなるなんて思ってなかったですし。それに、梅霖くんはなぜか危険っていうか近づきたくないっていうか」

 少しの間が空いて聞こえてきたのは呟きにも聞こえるような答えだった。

 なぜか、足が止まる。自分でも情けないと思う声が出た。

「にぎやかなの嫌いなの?」

 一緒にいたのは少しだったけど、楽しくはなかったのだろうか。僕は楽しかった。話せてよかったと思った。友達になれたと思ったけど結愛ちゃんは違ったのだろうか。答えがすごく気になる。せっかく仲良くなれたのに、思い違いだったらどうしよう。そんなことを考えていると答えが返ってくる。


「はい。にぎやかなのも騒がしいのも苦手です。それなりの付き合いはできますけど踏み込まれるのは嫌なんです。

 ……でも、なぜか先輩の明るいところは好きです。ちょっとしか話していないけどなんかそばにいて心地いいというか、どういっていいかは分かんないけど」


 予想外の回答に何も言えなかった。なんていうか恥ずかしいていうか照れくさい。勘違いじゃなかったんだ。


「先輩?」

 声をかけられて正気に戻る。焦って言わなくていいことも行ってしまったけど。



 ++++++

 そのあとすぐに休憩所について他愛もない話をした。

 最後の不意打ちは吃驚したけど、仲良くなれてよかった。


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