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第1章 プロローグ
「華澄、この鍵はね乙川家に代々伝わる大切な鍵なんだよ。
これは江戸時代に私たちのご先祖様が遠い異国からやってきたという王子様にもらった鍵」
「王子様?」
「そう。王子様。
当時のご先祖様と王子様はお互いを想い合っていたのに、身分や国の違いから一緒になることは叶わなかった。そのとき、王子様が自分を忘れないで。二人が想い合っていた証に。とこの鍵をご先祖様に渡したんだよ」
「そうなんだ。この鍵、持ってると何かあるの?」
「お守りだよ。華澄。私たちを守ってくれるお守り」
「お守り・・・」
「そうだよ。だから華澄。いつもちゃんと持っているんだよ」
まだ私が小さかった頃、おばあちゃんが話してくれた話。
ご先祖様と王子様の話。
昔、遠い昔のお話で私には、単なるおとぎばなしにしか思えなかったんだ。
ご先祖様が恋した王子様とこの鍵の運命も。