ピアノを弾きに行くやつ
「以上でよろしいでしょうか?お待ちくださーい」
注文を終えた俺たちは無敵だ。そんな顔をする彼に俺は微笑み、言葉をかける。
「最近何か面白いことあった?」
「聞いてほしいことあったんだよ。駅にピアノあるじゃん?昨日、あれ弾きに行ったんだよ。そのせいで今日眠くてさぁ」
「眠くはならんだろ。どんだけ弾いてたんだよ」
「ほんの一時間くらい? 激動の一時間だったわ」
「なおさら眠くならんだろ。軽い緊張でむしろよく眠れるわ」
「一時間ってすごくね?一ミスで交代しないといけないから」
「友達んちでゲームする感覚!?コントローラー独占しすぎじゃない?」
「そもそも人いなかったからなぁ」
「人いる時にやれよ!チーズの乗ってないピザ!見てもらえないと意味ないだろ!!てか、駅に人いないことないだろ!」
「深夜二時だし」
「深夜!まさかの深夜!もっとも人に見せる気のない時間!」
「練習しにいっただけだからなぁ」
「練習終わった後!駅まで行くのは完璧になった後!練習は家!」
「うちピアノないし」
「買おう!披露する前に買おう!」
「高いじゃん」
「そうだけど!駅で練習する難易度の方が高い!」
「みんな優しいんだよなぁ。パキパキって称えてくれてさ」
「パチパチな! 折れちゃってるから! 拍手のしすぎで骨が折れちゃってるから!」
「ちなみに弾いたのはモツレク」
「聞いたことねえ!反応に困る!」
「モーツァルトって聞いたことない?」
「あるけども!友達みたいな略し方するなよ!」
「モーツァルトのレクイエムな。地元じゃ常識だけど」
「いや地元一緒!小中高一緒!」
「喜んでもらえたからいいじゃん。その証拠にさ」
「証拠に?」
「称えてくれたんだって」
「どんな音で?」
「ハキハキ?」
「いい態度だけど!」
「ペチペチ?」
「弱そう!あまりにも弱そう!」
「トクトク?」
「もはや関係ない!」
「パキパキ?」
「だから折れちゃってる!」
「じゃあパチパチでいいよ。パチ派過激すぎるわ」
「パキ派お前だけだから!」
「とにかく、誰かに聞いてもらえて嬉しかったわ」
「おう。時間あったしな」
「真夜中だったのに」
「ピアノの方ね!」
「みんな顔も足もなかったけど」
「幽霊見えるタイプかよ!」
「お待たせしましたー。ミックスグリルでーす」
こうして俺の待ち時間は消えてしまった。
てか、この飯うま。帰ったらレビュー書こ。
私はなんの楽器もできません。楽器できる人うらやましいなぁ←練習もしない人




