64. 墓地
街の中心部にいる人々さえ、黄昏の幕が降り始めるとその辺りを避ける、陰鬱で静寂な空間だった。
少し離れた場所に神殿が堂々とした姿を現し、そびえ立っていたが、その巨大な体躯ほどに深い影が墓地の上に濃い闇を落としていた。
息を切らしながら墓地の入り口に到着したイヒョンは、周囲を鋭く見回した。
昼間なら墓守が守っているはずだったが、今この瞬間には人間の気配さえ感じられず、薄れゆく影たちが墓碑の間で絡み合い、舞うように漂うだけだった。
風が擦過し、乾いた草葉の囁きと湿気を含んだ土の香りが鼻を刺激した。
「イアン!」
イヒョンが力一杯叫んだが、彼の声は反響もなく石塚の間を回り、すぐに虚しく散っていった。
彼は急いで墓石の間を縫うようにイアンを探し回った。
斜めに傾いた、苔に覆われた碑石とその下に刻まれた小さく鮮明な足跡が視界に捉えられた。
明らかにイアンの痕跡だった。
その跡を辿っていくと、草が踏み潰された跡が連なり、案内するように伸びていた。
墓地の中央にはかなり規模の大きな墓が密集しており、遠くその前でイアンが体をまともに整えられず、よろめき、ついに膝をつき、頭を抱えていた。
少年の姿は青みがかった黄昏の中、墓地の間を彷徨う亡霊のように、現実と幻想の境界に掛かっているようだった。
イヒョンがイアンを発見し、名前を呼ぼうとしたその瞬間、周囲の闇が奇妙に濃くなり、すぐに黒い霧が四方を囲み始めた。
地面からじわじわと立ち上るその陰鬱な気は影の輪郭をぼやけさせ、四方へ広がり、結局イヒョンの視界を完全に遮った。
イヒョンは目の前で起きているこの現象が決して普通のことではないことを即座に直感した。
背筋を這い上がるぞっとする寒気が全身に広がっていくのが感じられたからだ。
彼は体を屈めて近くの碑石の後ろに隠れた。
闇に慣れた目で遠くイアンの輪郭がぼんやりと浮かび上がった。
湿っぽく重い、まるで命を持ったような霧がゆっくりと凝集し、すぐに異常なほど背の高い黒いマントを纏った人間のシルエットを形作り始めた。
そして、曲がった背をゆっくりと伸ばし、イアンに向かって近づいた。
その動きは氷の表面を滑るように滑らかで、草葉を擦る囁きや小石を踏む軽い響きさえ起こさなかった。
まるでこの世界の大地を踏みしめているのではなく、次元の隙間を歩いているような感覚がした。
周囲を警戒するように見回していたその影の黒いフードが少しめくれ上がり、覆われていたマスクが露わになった。
マスクの中央には赤い光輝が脈拍のように点滅しながら光を吐き出しており、長く垂れ下がった黒いマントからは闇の霧が絶え間なく流れ出し、周囲の霧と混ざり合って溶け込んでいった。
イヒョンはその得体の知れない奇妙な奴に視線を固定したまま、墓石の後ろに体をさらにぴったりと隠していた。
彼がまだ地面に伏せて体を丸めているイアンのそばに近づき、手を伸ばすと、イアンは空中から見えない力に導かれるように引き起こされた。
彼は腰のベルトから剣をゆっくりと抜き取った。
黒い革の鞘から徐々に現れた刃は、短剣としては長く長剣としては短い、淡い暗い青い光を放つものだった。
「未完成のフェルトゥスの限界···」
彼が剣を握った左手を持ち上げた。
濃い青い光を放っていた刃に刻まれた文様が炎のように揺らめき始めた。
「だめだ! イアン、避けろ!」
イヒョンは墓石の後ろから飛び出してイアンに向かって猛然と駆け寄ったが、すでに時を逃していた。
その者の刃がイアンの胸元を深く抉り込んだ。
その瞬間、イアンの体が痙攣のようにびくりと震えた。
貫通した胸から多彩な感情の光の筋が溢れ出し、刃を伝って流れ出た。
愛、悲しみ、喜び、恐怖···
イアンの芽生え始めた感情の輝きが刃を通じてカルヌスへと吸い込まれていった。
再び空っぽの虚空に戻ったイアンの瞳が、駆け寄ってくるイヒョンを一瞬見つめ、それからぽとりと崩れ落ちた。
「イアン! お願いだ、イアン!! だめだ!」
イヒョンの手が腰のバルカを握りしめ、倒れたイアンに向かって彼の足音が地面を切り裂くように駆け寄ると、カルヌスは駆け寄ってくるイヒョンをちらりと横目で眺め、夜空の星がゆっくりと沈むように霧の中へ溶け込んで消えていった。
その瞬間、周囲を包み込んでいた黒い霧が徐々に薄れ、閉じ込められていた空気を解放するように散らばって消え始めた。
イヒョンは床に倒れ伏したまま、微動だにしないイアンの体を慎重に持ち上げた。
子供の小柄な体格とはいえ、今この瞬間感じる重みはひときわ圧し掛かるように重かった。
だらりと垂れ下がった四肢、意識を失って力なく揺れる頭。
それでもまだ微かに残る体温が、せめてもの唯一の慰めだった。
『きっと大丈夫になるはずだ···』
誰に向けた慰めなのか自分でもわからなかったが、彼は心の中で呟いた。
イヒョンはイアンを背負ったまま、墓地の出口に向かってゆっくりと歩みを進めた。空は灰色に染まった濃い暗青色を過ぎ、完全な暗黒に染まっていった。
星の群れも、月の淡い光も雲の幕に覆われて朧ろな夜。都市の街灯たちが一つ二つと荒涼とした炎を灯し始めたが、イヒョンの視界は依然としてぼんやりとした霧に閉じ込められたように暗かった。
『一体、誰が何のために··· よりによってこのタイミングで。』
背中に伝わるイアンの微熱を感じながら、市街地に向かってどっしりどっしり歩くイヒョンの脳裏には、数千本の糸が絡みついた糸玉のように絡み合っていた。
あの奇怪な存在がイアンを刺した時、イアンの体から溢れ出た感情の残滓たち。
そしてイアンの瞳から消え去ってしまったすべての生々しい光たち。
イアンの髪がそよ風に揺らめ、細い息遣いがイヒョンの耳朶をくすぐった。
遠くに宿舎の朧ろな灯りが視界に染み込み始めた。
「イヒョン!」
扉がきしむ音を立てて開くや否や、真っ先に飛び出してきたのはリセラだった。彼女はイヒョンの背中に背負われたイアンを見つけ、瞳が大きく見開かれた。
「一体何があったの? イアンがどうして···?」
「とりあえず中に入って話そう。」
イヒョンは慎重にイアンを部屋のベッドに横たえた。
エレンもすぐに続いて入ってきて、息を潜めてその光景を眺めていた。
イヒョンはイアンの上着を脱がせて胸の部分をじっくりと観察した。刃が刺さっていたその場所に傷跡は影すら残っていなかった。
まるで最初から何事も起こらなかったかのように、肌は滑らかで清潔で、血痕一つ見えなかった。
「傷が··· 全然ないね···」
イヒョンが信じられないというように囁いた。
「正確に何があったの? 詳しく話してみて。」
イヒョンは墓地で黒い霧の中から湧き出たあの怪しい存在がイアンの胸を刺し、蒸発するように消えた話をリセラに打ち明けた。
「確かに刺されたんだ。刃がイアンの胸元を抉り込むのをはっきり見たよ。」
リセラは慎重にイアンの胸に刻まれた文様の上に手を置いた。
しばらくその内側を探るように集中していた彼女が、ようやく低い声で口を開いた。
「消えたわ···」
「何が消えたって?」
「完全に蒸発してしまったの。感情が··· 確かにイアンの内面で感情の芽が芽吹いていたわ。とてもゆっくりだけど、確実に。」
彼女は顔を上げ、複雑に絡み合った視線でイヒョンをまっすぐ見つめた。
「なのに今は痕跡すら残っていない。空っぽの虚空だけよ。」
「···」
「コルディウムの暴走で感情が噴出したなら、少なくとも残渣が残っているはずなのに···」
リセラは信じられないという様子で額を押さえ、頭を垂れた。
「こんなふうに感情が一瞬で消滅するように飛んでいくなんて、常識的にありえないわ。」
「あの墓地で見たあの奴の剣に何か特別な力が宿っていたのか?」
「私が見る限り、前回のコルランで私とセイラを襲ったあの集団と同じ仲間みたい。あの陰鬱な気配がそっくりだったわ。」
イヒョンはイアンに向かって視線を向けた。
イアンの蒼白い顔色は依然として苦痛の残影に染まり、歪んだままだった。
「あの奴が剣でイアンを刺した時、体から何かが出て、あっちの方へ流れ込んでいくのを見たよ。まるで吸い込まれるような感じだった。刃を伝って、多彩な光の欠片が流れ出ていたんだ。愛、悲しみ、喜び、恐怖··· そんな感情の欠片たち。」
「それなら··· イアンは元々感情が欠如した子じゃなかったってこと? ただ抑え込まれていただけ?」
「そんな感じだよ。」
イヒョンはゆっくりと頷いた。
「欠乏していたんじゃなくて、誰かの手によって強制的に封印された状態だったんだ。感情が··· 悪意ある力で抑え込まれ、制御されていた。」
「そして今さっき、その封印が再び強化されたのよ。」
「一体何の目的でこんな残酷なことをするんだ···」
イヒョンは唇を軽く噛み、しばらく考えに沈んだ。
「そういえば··· 前回のコルランで私とセイラを襲ったあの奴も、感情は制御されるべきだって呟いていたわ。」
イヒョンの脳裏にコルランでの激しい戦闘が掠めるように浮かんだ。
「ベルダークという者がそんなことをしているって言っていた。真の平和のために感情は抑えられるべきだという、あの狂った言葉を。」
「世の中に··· そんな狂気が存在するなんて。」
「それに墓地で奴はイアンを『未完成のフェルトゥス』って呼んでいたよ。もしかしてその言葉に心当たりない?」
「フェルトゥス··· 穿たれた者··· 空っぽだという意味かな···」
リセラは深い思索に陥った。
「目的はわからないけど、誰かがこの子を実験体にしているのよ。感情を制御し、抽出して、操るような形で。」
部屋の中に重い静寂が降りた。
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イヒョンは窓辺に座って薬草を手入れしていた。夜が更けても、彼の手つきは疲れを知らずに続けられた。
沸騰した水に整えた薬材を投入し、ゆっくりと煮出した濃縮液を小さな瓶に移し替えて冷ました。
まだ出血が完全に止まっていないかもしれない産婦のための点滴容器は、すでにいくつかが準備されていた。
忙しなく動く手つきとは裏腹に、彼の心の中は混沌の渦だった。
イヒョンの部屋から漏れる灯りを見たリセラが、そっと扉を開けた。
ベッドの上には依然としてイアンが倒れたまま、深い眠りに落ちたように見えた。
何事もなかったかのように穏やかな表情を浮かべていたが、リセラはイアンの内面で芽吹いていた感情の波が今や完璧な静けさに変わってしまったのを感じ取ることができた。
彼女は低い声で口を開いた。
「これからどうするつもり? 正直に言ってみて。」
イヒョンは依然として手を止めずに答えた。
「僕が連れて行くよ。この子を。」
「本当に? 一人で連れて行くつもりなの?」
「そうだよ。今さらこの子をここに置いていけない。そうかといって、君とエレンを巻き込むわけにもいかないし。」
イヒョンは黙々と薬を調合しながら言葉を続けた。
「一人でどうやって耐えようっていうの? 危ないのに。」
「早くラティベールナへ行こう。そして僕がイアンを責任持つよ。セイラが付いてくるかもしれないけど··· その後は僕もまだはっきり決めていない。」
素早く言葉を吐き出していたイヒョンが、長く息を吐いた。
「正直、これからどうすればいいか方向性が掴めない。今僕の頭の中には、君とエレンを安全な君の故郷へ連れて行くことしかないよ。」
リセラはしばらく沈黙した。
「コルランで起きたあの惨事がまた私たちの前に現れたら··· それは本当に想像したくもないわ。」
「でも何となく、僕が帰る道を見つけたらイアンも回復するんじゃないかって予感がするんだ。胸のあの文様もそうだし。」
イヒョンはリセラの方へ顔を向けた。
リセラの視線にイヒョンの複雑な感情が染み込んだ。
彼女は言葉を失った。
イアンの苦痛は誰よりよくわかっていた。そしてイヒョンが今無理をしていることも。でもエレンを思い浮かべると胸が痛んだ。
あの子のことは、二度とどんな脅威にもさらしたくなかった。
「···それでも君一人で耐えられるの? 正直心配だわ。」
「耐えるしかないよ。仕方ないさ。」
イヒョンは努めて視線を逸らし、作業台を凝視した。
「イアンは奴らに操られていた。そしてこの子をこんな風にした連中は僕を狙っていたんだ。きっと···」
「きっと何?」
「きっと絶対にまた現れるよ。僕を追ってくるはずだ。」
「君が··· もし命を落としたら?」
「···」
「さあね。その時は仕方ないんじゃない? でも諦められないよ。」
リセラはそれ以上何も言わなかった。
胸の中で絡みついた感情の糸玉が解けなかった。イアンが可哀想で、エレンが危険にさらされるのが怖かった。そしてイヒョンが去ってしまうのも、心が引き裂かれるほど嫌だった。
外は徐々に夜明けを迎え、闇の幕が朧ろに上がり始めていた。
イヒョンの手つきは一晩中休むことなく続き、いつの間にか机の上には完成した薬剤と点滴瓶が整然と並べられていた。
読んでくれてありがとうございます。
読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。




