60. 確認
イヒョンは首を傾げてレンを振り返った。
「以前、君の仲間のように怪我をしたり意識を失ったりした人たちを何度か助けたことがあるんだ。」
レンは残りのサンドイッチを一口で押し込んで、もぐもぐと噛みながら言葉を続けた。
「ところが、十人中十人は俺の言葉を素直に信じないんだよ。みんな、どうにかして街に戻って癒しの神殿を探そうと必死になるんだ。」
レンは岩に背をもたれ、水を一口飲んだ後、荒い髭を手で撫で下ろした。
「中には途中で命を落とす者もいたし、事情が許さず仕方なく俺に任せて回復した者もいたよ。」
「残念なことだよ。でも、俺の言葉を疑いなく受け入れる人は君が初めてだ。むしろ薬に興味を示すなんて……」
イヒョンは妙な気分になった。考えてみれば、人間が人間を癒すのは地球では当たり前のことだったが、このエペリアでは事情が違う。
「今はたまたま旅の途中にいるけど、本来僕も人々を治す仕事をしていたんです。方法は少し違うけどね。」
「おお、そうだったのか。どうりでそんな雰囲気を感じたと思ったよ。ははは。」
レンは通じ合う人に出会ったように、気分が高揚した様子だった。
「だから話がよく通じたんだな。君のように興味を持ってくれる人が珍しいんだよ。」
「それにしても、僕の仲間に作ってくれた薬は本当に効果が優れそうですね。」
「前に話したっけ? 妻は草やキノコ、花に触れるだけでその効能をぱぱっと見抜くんだよ。」
「ええ。」
「妻の話では植物たちと会話をしている気分だそうだが、俺にはさっぱり理解できないよ。ははは。妻のコーディウムは俺とは違って本当に不思議だな。」
「素晴らしいコーディウムですね。」
「そうだよ。それより、これを見てくれ。この辺りで採れるあらゆる薬草、キノコ、木の根、果実を使って薬を作る方法だよ。妻が教えてくれたのを細かく書き留めたものさ。」
レンは誇らしげな笑みを浮かべて、袋から手垢のついた手帳を取り出し、イヒョンに差し出した。
イヒョンは手帳を受け取り、一枚一枚めくってみた。
指一本分の厚さほどあるずっしりとした手帳には、薬草、木の実、キノコなどの絵が細かく描かれていて、その効能と精製過程、混ぜる比率、薬の製造法がとても詳細に記されていた。
「こ……これは本当に驚きですね。普通の努力で作り出せるものじゃないですよ?」
“そうさ?”
レンは満足げにしながらも、少し照れくさそうな様子を見せた。
「妻のおかげでこんなものを集められたんだ。俺一人じゃ夢にも思えないことさ。」
「見たいなら貸してやるよ。家に整理したのがあと数冊あるはずだ。」
「本当ですか?」
「もちろんさ。君のようにわかってくれる人になら惜しくないよ。」
「本当にありがとうございます。」
「どういたしまして。罠をあと一つ二つ仕掛けて、家に戻るのがいいだろう。日が暮れる前にまた出てきて確認しよう。鹿が一頭くらいかかってるといいんだが……」
猟師小屋の煙突から柔らかな煙が立ち上っていた。
フローラが台所で何かを準備する気配が感じられた。
イヒョンは家に入るなり、まっすぐ部屋に向かった。
リセラは依然として意識を取り戻していないままベッドに横たわっていたが、朝の時よりずっと楽そうな顔色を帯びていた。
窓の隙間から差し込む陽光が彼女の頰を優しく撫で、部屋の中を穏やかな光で染めていた。
レンは革袋を壁にかけ、罠の入った袋を下ろした後、部屋に入って何かを探し始めた。
しばらくして、彼は手に古びた手帳を数冊握り、イヒョンに近づいて慎重に差し出した。
「これは……」
イヒョンが驚いた眼差しで手帳を開き、内容をざっと目を通す間、台所から水瓶を持って出てきたフローラがその光景を見て、かすかに微笑んだ。
「あらあら、これはどうしたの? その手帳を出すなんて……」
彼女はイヒョンに向かって柔らかく笑いかけると、すぐに夫の方へ視線を移し、悪戯っぽい声で付け加えた。
「ようやくあなたの努力を認めてくれる人が現れたのね。あなた、嬉しいでしょう。ほほほ。」
レンは照れくさそうに咳払いを一つして、視線を逸らしながらイヒョンのかたわらにどっかりと座った。
それから手帳を開き、薬草のリストと調剤法を一つ一つ指さしながら説明を始めた。彼の説明はしばらく続き、その声には誇らしさと興奮が滲み出ていた。
ちょうどその時、清潔なタオルと温かい水の入った洗面器を持って、フローラが部屋に入ってきた。
「レン、この人は本当にすごい人ですよ。」
「え?」
イヒョンが不思議そうな様子で顔を上げた。
「私たちが初めてこの森に入ってきた時、毛布三枚に皿がいくつか、フォーク三本が全部だったんです。それでどうにかこうにか暮らしを立ててきたんですよ。」
レンは照れくさそうに目を逸らしながら、ぼそぼそと呟いた。
「余計なことを言うなよ……」
しかしフローラは気にせず、相変わらず明るい笑みを浮かべて言葉を続けた。
「夫は諦めというものを知らない人なんです。しつこく記録して、また記録して、失敗を何度も繰り返しても諦めずに再挑戦するんです。それがあの人の本当の力ですよ。」
イヒョンはその言葉に静かに頷いた。
ようやく手帳のあちこちに染み込んだ古い跡が、単なる歳月の痕跡ではなく深い努力の証拠だと実感した。
「コーディウムというのは、必ずしも目に見える力だけじゃないんですよ。」
フローラはリセラの額に水気を絞ったタオルを軽く乗せながら、囁くように言った。
「人それぞれ違うコーディウムを抱えているんです。輝く形で現れる人もいれば、感覚で感じる人もいて、一生知らずに生きる人も多いんです。私は運が良かったんです。子供の頃、野原で迷子になって早く自分のコーディウムに気づいたから。でも夫は今も自分の力を知らないんです。でも私は知ってるんです。とてもよく知ってるんです。」
イヒョンは黙って彼女の言葉を心に刻んでいた。フローラの声には温かな確信が滲み出ていた。
「あの人のコーディウムはまさにその意志なんです。粘り強い忍耐と、絶対に折れない根気。派手じゃないけど、その力ほど強いものは世の中にないんです。私は誰よりそれを確信してるんです。」
レンはその言葉を聞くと、顔が赤くなるのを隠そうと頭を深く下げた。彼の肩が少し縮こまるのが見えた。
「薬を作ることも同じですよ。私が口で喋ってるだけだったのを夫が頭に刻んで、手で記録して、結局ちゃんとした薬に作り上げたんです。実際、世に出れば使う機会なんてほとんどないんですけどね。だから誰かが倒れてるのを見ると、夫は迷わず出ていくんです。ようやく自分の薬を使ってみるチャンスが来たから。」
フローラの視線が自然とリセラに向かった。
「私はいつも夫を信じてるんです。だからあなたも彼を信じていいんです。その信じることが、すべてを変えてくれるんですから。」
夫に向けた愛情たっぷりの眼差しでフローラはイヒョンを振り返り、もう一度微笑んだ。そして軽やかに部屋を出て行った。
イヒョンはフローラの言葉の一つ一つが残した温かな余韻を感じながら、毛布の外に少し露わになったリセラの手を慎重に握った。その指先が少し温かくなったのが感じられた。
レンが夕方に罠を確認しに行く前に少し目を閉じて休むために行った間、イヒョンはリセラの傍に座って、レンが渡した手帳を一枚一枚めくりながら読んだ。
本当に驚くべき内容だった。
エペリア大陸のあちこちに咲く薬草についての詳細な知識、そしてそれらを活用して作り出すさまざまな薬の製造法がびっしりと記されていた。ページごとにレンの情熱が刻まれていないところはなかった。
イヒョンが時間の経つのを忘れて手帳に没頭しているうちに、いつの間にか夕方が近づいてきた。
イヒョンはレンと一緒に、日が徐々に沈み始めて暗くなり始めた森へ罠を回収しに出かけた。
鬱蒼とした木々の間にかすかに差し込む橙色の夕焼けの下、イヒョンとレンは軽装で雑草をかき分けながら森の奥深くへ入っていった。
「こっちに三か所あるよ。地面が滑りやすいから足元に注意してくれ。」
レンが低い声で囁くように言い、湿った落ち葉の山と苔の生えた石を踏みしめて進んだ。
彼の手には動物の命を絶つための短い槍が握られ、腰には狩猟用の短剣が吊り下げられていた。
イヒョンは二、三歩後ろから静かに従い、地面に刻まれた跡をじっくりと観察した。
日が完全に沈み始めた森はあっという間に闇が降りた。
「もうすぐだよ。」
レンが立ち止まった場所、木々の間に罠にかかって暴れる鹿が一頭見えた。
「なかなか大きな雄だな。こういう奴らは塩水の匂いに惹かれやすいんだ。」
鹿は恐怖に囚われた眼差しで必死に逃げようともがいたが、脚に絡まった罠のせいですぐにまた地面に倒れた。
「すぐに終わらせてやるよ。すまないな、友よ。」
レンは槍をしっかり握り、身悶えする鹿に慎重に近づいて、苦痛を一気に終わらせた。
彼は袋から縄を取り出し、鹿の後ろ脚を縛った後、近くの枝に掛けた。
「血をすぐに抜かないと肉の味が落ちるんだ。縄を持って引っ張れ。頭が下向きになるようにしなくちゃ。」
イヒョンは縄を引っ張って木に固定した。
レンは腰から短剣を抜き出した。
鋭い刃が胸の革を切り裂き、筋肉を抉る音が聞こえてくると、すぐに熱い血が噴き出し始めた。
鮮やかな赤い液体がレンの手を伝って流れ落ち、地面に染み込んでいった。
まだ温かさが残る心臓が、最後の力を絞り出すようにポンプを動かしているようだった。
しばらくして、血の流れが弱まり、色も薄れていった。
レンは刀を再び握り、鹿の肋骨の間をまさぐった。
「ここまでやらないと、ちゃんとした肉にならないんだ。」
彼は短剣を肋骨の隙間に押し込んだ。
刃先が心臓を貫くと、内側からねばつく血が再び湧き上がった。
「こんな光景は初めてか?」
イヒョンは頷いた。
「こんなに近くで見るのは初めてです。心が重くなりますね。」
レンは刃を布切れで拭き、腰に再び差しながら答えた。
「それが当然の感情さ。申し訳ない気持ちになるのが普通だよ。だから、このやつから得るものはすべて惜しみなく使わなくちゃ。それが礼儀だ。」
「今、縄を解いてくれ。」
レンは血抜きが終わった鹿の脚を縛った後、脚の間に木の枝を挟み込んだ。
レンとイヒョンは鹿を肩に担いで小屋に戻った。
二人が小屋に着いた頃、台所ではフローラが竈に火を起こしていた。
「今晩はちゃんとしたごちそうになりそうですね。お疲れ様。」
鹿肉をぐつぐつ煮込んだシチューの香ばしい匂いが小屋の中を満たした。
火の上から鍋が下ろされると、レンはシチューを皿に盛り、テーブルに置いた。
「さあ、しっかり食えよ。」
レンは明るく笑いながら、息子のテオの頭をくしゃくしゃと撫でた。
テオはシチューから立ち上る香りに鼻を膨らませ、興奮した。
「わあ、ほんとに美味しそう!」
「もう少し待ってて。」
フローラは微笑みながら、まずイヒョンと夫の皿にシチューをよそってくれた。
「今日はおかげでみんなお腹いっぱい食べられるわね。」
「いえいえ、僕の方こそ感謝しなくちゃ。リセラを助けてもらった上に、いろいろ教えてくれて。」
食事を終えたイヒョンは部屋に入り、リセラの傍に座って、ベッドサイドの小さなテーブルに油ランプを置いた。
毛布をかけたまま静かに横たわる彼女。今ではかなり安定した呼吸を除けば、まだほとんど動きがなかった。
フローラが用意してくれた薬をスプーンですくって、彼女の唇にそっとつけた。
唇が微かに動いたが、まだ目覚める気配はなかった。
イヒョンの手つきには、彼女を永遠に失いたくないという切実さが染み込んでいた。
「お願い……目を開けてみて……」
彼は低い声で呟いた。
日はすでに山の稜線を越えて沈み、窓の外には静かな闇がそっと降りていた。
少し開いた窓の隙間から入り込んだ風がカーテンを撫でて通り過ぎると、ランプの炎が軽く揺らめいた。
その柔らかな光の中で、リセラの顔色がほのかに変わっていくのが感じられた。
「……う……ん……」
微かな呻きが彼女の唇の間から漏れた。イヒョンは息を潜めて彼女の顔を近くで見つめた。
「リセラ……? リセラ、僕の声が聞こえる?」
彼女の瞼がゆっくりと上がり、まだ焦点のぼやけた瞳が虚空をまさぐるように少し動いた。
しばらく周囲を彷徨っていたその視線が、すぐにイヒョンを捉えた。
「……イ……ヒョン? ここは……」
その一言が漏れると、イヒョンの胸が込み上げてきた。
彼は無言で彼女の手をぎゅっと握った。
「生きてて……本当に良かった。君が無事で、こうしてまた会えて……」
イヒョンの目元が赤く染まり、涙が浮かび始めた。
喉がつかえてまともに言葉が出てこないまま、彼は彼女の手を自分の額に当て、続いて唇に重ねて強く抱きしめた。
涙が抑えきれずに溢れ落ちた。言葉では表現しきれない安堵感が胸いっぱいに広がった。
「……泣いてるの?」
「……いや、泣いてないよ。」
「嘘つき。」
リセラはイヒョンを見上げて、細い微笑みを浮かべた。彼女は慎重に手を伸ばして彼の涙を拭い、頰を優しく撫で下ろした。
「私も……あなたがいなくなっちゃうんじゃないかって怖かったよ。」
イヒョンは込み上げる声で彼女の手をさらに強く握った。
「ごめん。もっと早く探すべきだったのに。少しでも急いでたら……」
「ありがとう。こうして目覚められたのは……あなたが最後まで私を待ってくれたからだよ。」
「生きてて……あなたの顔をまた見られて……本当に、ありがとう。」
感情というものが人を崩壊させるほど痛くする一方で、同時にこうして耐えさせる力でもあることを、彼は改めて実感した。
二人は無言で手を握り合い、互いの眼差しを交わした。
沈黙が流れるが、その中で互いへの切ない想いが静かに広がっていった。
フローラは部屋にかかった布を少しめくり、中を覗き込んで、好奇心に駆られてついてきたテオを見て「しっ、静かにね」と囁き、布をまた下ろした。
読んでくれてありがとうございます。
読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。