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58. 猟師

傍らで静かに様子を眺めていた猟師が、不意に尋ねてきた。


「知り合いか?」


「私の仲間です。」


喉が詰まったような感覚の中で、かろうじて言葉が漏れ出た。言い終えた瞬間、イヒョンの胸が再び締め付けられるようだった。


意識を失い、ベッドにほとんど死体のようにぐったりと横たわるリセラの姿を眺めると、胸を圧迫する重い圧力が押し寄せてきた。


リセラを見つけたという安堵の裏側で、失った妻と娘の姿がちらりと重なるように見えた。


『・・・私が遅すぎたのか・・・』


イヒョンはベッドの傍らに膝をつき、彼女の手を慎重に握った。


その手は冷たい氷のように冷え切っていた。


「まだ希望はあるはずです。少し待ってみてください。」


猟師はイヒョンの心情を察するように肩を軽く叩き、妻とともに居間に引き下がった。


イヒョンは崩れそうな心を奮い立たせ、リセラを細かく観察した。


急いで外傷がないか、体中を隅々まで確認した。幸い、軽い擦り傷が数か所あるだけで、大きな傷は目立たなかった。


細いが、息遣いは規則的で、胸に耳を当ててみると呼吸音が安定していた。肺に水が入った痕跡はなさそうだった。心拍も弱いが規則的に動いていた。不整脈のような異常は感じられなかった。


しかし、意識は戻らず、まぶたさえ微動だにしなかった。


正確な体温を測ることはできなかったが、手足が非常に冷たく、唇が微かに痙攣していることから、中等度以上の低体温症だと考えられた。


『急いで体温を上げてやらなければ。』


診察を終えたイヒョンは居間に出て、猟師に熱い水を入れるのに適した革袋があるか尋ねた。


「すでにベッドの中に温かい湯たんぽを入れておいたよ。君の考えはわかるから、少し待ってみなさい。」


猟師は野生の生姜に様々な薬草を混ぜて煎じ薬を作っていた。暖炉の上の小さな鉄鍋から香ばしい薬の香りが立ち上っていた。


少し後、猟師は煮出した薬をリネンの布で濾して絞った。


「ちょっと手伝ってくれないか?」


猟師がリセラを半分ほど起こすと、イヒョンは彼女が倒れないよう支えながら、口を少し開けてやった。


猟師はスプーンで薬を慎重に流し込んだ。


「きっと効果が出るはずだよ。だから安心しなさい。」


薬をすべて飲ませた後、猟師はリセラを横向きに寝かせ、毛布を何枚もかけてやった。


「すみませんが、仲間が目覚めるまでここにいさせてもらってもいいでしょうか?」


猟師は振り返って妻を見た。


妻は何でもないというように頷いた。


「いいってさ。元々はうちの息子の部屋だけどね。」


「今は持ってるものが何もないけど、必ずお礼をします。」


「好きにしなさい。君も見ての通り疲れ切ってるみたいだし、何か食べますか? 遅い時間だけど、夕飯の残りのシチューが少しあるよ。」


「ありがとうございます。」


少し後、猟師の妻が温めたシチューを持って来た。


イヒョンは慌ててシチューを平らげ、再びリセラが横たわるベッドの傍に戻って床に座った。すると猟師の妻が入って来た。


「旦那さんですか?」


「いえ、仲間です。」


「じゃあ、家の裏の小屋で寝てください。」


「失礼じゃなければ、ここで私が看ていたいんですが……ダメでしょうか?」


「ただ見てるだけじゃ、体温が早く上がらないわよ。あなたが直接抱いて温めてあげるのはどう?」


「あ……」


猟師の妻はくすっと笑って、イヒョンに厚い毛布を手渡した。


「裏口から出ればすぐ見えるわよ。うちの息子がもう行って寝床を準備してるはずだから。」


イヒョンは毛布を受け取り、裏口から外へ出た。


小屋の扉を開けると、先ほどの少年が藁の山で居心地のいい寝床を整えていた。


イヒョンは少年に感謝を伝え、藁の上に体を横たえた。


胸の内の動揺が収まらなかった。神を信じないイヒョンだったが、何故か自分の願いが奇跡のように叶ったのではないかと思った。


「あんちゃん、気にしすぎないでよ。うちのパパ、見た目と違って結構腕がいいんだから。」


「どんな腕?」


「パパが前に森で倒れた人たちを連れて来たこと、何度かあったよ。道に迷ったり怪我した人たちが時々いるからね。」


少年は伸びをして毛布を引き寄せ、体を丸めた。


「だから心配せずにあんちゃんも少し目をつぶりなよ。明日になったら全部良くなるよ。」


イヒョンは少年の言葉に腕枕をして横になった。夜通しの捜索と狼との闘い、ようやくリセラを見つけた安堵、そして温かい一食。これらが一気に押し寄せ、極度の疲労が襲って来た。




どれだけ深く眠ったのだろうか?


小屋の小さな窓の隙間から差し込む陽光にイヒョンが目を開けると、すぐに意識がはっきりした。


「あ、リセラ。」


彼はびっくりして飛び起きた。隣の場所はすでに空っぽだった。少年が先に起きて出て行ったようだ。


リセラの安否を確認しようと急いで家の中に入ると、猟師の妻が台所で朝食の支度をしていた。


「あんちゃん、昨日は疲れ切ってるみたいだったから、起こさないでおこうかと思ったのよ。もう少し休みなさいって。」


居間の椅子に座って足を前後に揺らしながら遊んでいた少年が、イヒョンを見て明るく笑って言った。イヒョンは軽く頭を下げて挨拶し、急いで部屋に向かった。


さっきは青白く紫がかった彼女の顔色が、今はかすかに生気が戻っていた。体はまだ寒さにぶるぶる震えていたが。


『いい兆候だ。回復が始まったよ。』


イヒョンはリセラの肩を軽く揺さぶり、急いで彼女の名前を呼んだ。


「リセラ、しっかりして。リセラ!」


彼女はまだ目を開けられなかったが、何か呟こうとするように唇を動かしていた。イヒョンの心に淡い希望が芽生えた。


「そうだ、少しだけ耐えてくれ。俺がここにいるから。」




セイラはエレン、イアンとともに夕食を食べ、平然と後片付けをしていたが、リセラを探しに出たイヒョンが気になって心が落ち着かなかった。


すでに日が完全に沈み、村を少し離れるだけで道が見えないほど深い闇が降り、雨まで降り始めた。


まさにその時だった。


セイラの傍で彼女を黙って見守っていたイアンが突然席から立ち上がった。


彼の動きは遅い時計のゼンマイのようにゆっくりと流れていたが、顔には妙な緊張感が染み込んでいた。


セイラはその異様さを感じ、イアンを見上げた。


「イアン… イアン、どこ行くの?」


イアンは答えず、ゆっくり頭を回してセイラと向き合ったが、彼の瞳は光を失ったように空っぽだった。


文字通り空の殻のような眼差しだった。


セイラは何かがおかしいと本能的に察知した。


その瞬間、イアンが突然膝を折って床に崩れ落ち、頭を抱えて体を丸めた。


見えない何かが彼を押しつぶすように感じられた。


セイラは急いで近づいた。


「イアン、大丈夫?お姉ちゃんも、ルメンティアもすぐ帰ってくるよ。少しだけ我慢して。」


しかし、イアンは言葉を理解できないかのように激しく首を振った。


息遣いが荒くなり、唇が青白くなった。


セイラはリセラがしていたように毛布で彼を包み、背中を軽く撫で始めた。


しかし、イアンは依然として落ち着かず、体を縮こまらせ続け、突然跳ね起きてドアを開け、外へ飛び出していった。


セイラが慌てて彼を捕まえようとしたが、あまりに素早くて、彼女はバランスを崩して転んでしまった。


セイラは痛む膝を少し握りしめた後、イアンを追ってドアの外へ出た。


しかし、すでに彼の姿はどこにもなかった。


セイラは慌てて1階へ降りた。


「あの……10歳くらいの男の子、見ませんでしたか?」


ギルドの管理人がドアの方を指差した。


「さっき出て行きましたよ。ああ、止める間もなく矢のように行っちゃって。この夜に外へ出るのは危ないのに。」


セイラは我を忘れて外へ飛び出した。


リセラは川に流されて消え、イヒョンは彼女を探しに行ったまままだ帰ってこないのに、イアンまでおかしな兆しを見せるなんて、セイラは頭が張り裂けそうだった。


セイラは恐怖に囚われ、周囲を見回しながらイアンを探した。


しかし、日が沈み、雨まで降る状況で逃げた子供の行方を探すのは決して簡単なことではなかった。


セイラは再び2階の部屋へ上がり、ベッドで寝ているエレンを揺すって起こした。


「エレン、エレン、ちょっと起きて。」


泣き疲れて眠ったエレンは腫れた目をこすり、体を起こした。


「お母さん……お母さん来た?」


セイラはエレンの肩を優しく掴み、彼女の目をまっすぐ見つめて言った。


「お母さんはイヒョンおじさんが連れてくるよ。心配しないで。でも今、イアンが外へ出て行っちゃったの。」


エレンは、まだお母さんが来ていないという言葉に、再び涙を浮かべた。


「お母さん… お母さん…」


「エレン、今つらいのはわかるよ。でも、お姉ちゃんが出てイアンを探さなきゃいけないみたい。ここで待ってて。」


エレンはその言葉を聞くなり、跳ね起きて泣き声を上げながらセイラの腰をぎゅっと抱きついた。


エレンの腫れた顔が再び涙でびしょ濡れになり、体はまだ不安に囚われたように震えていた。


「嫌だ。一緒に行く。ひとりでいるの嫌。」


セイラは一瞬ぼんやりとエレンを見下ろした。その小さな体から伝わる悲しみと恐怖が、指先を伝って染み込んでくる。


エレンのそんな反応が十分に理解できたセイラは、腰にしがみついたエレンを優しく抱きしめた。


「うん、一緒に行こう。一緒に行ってイアンを探そう。」


セイラはエレンの背中を軽く撫でながら、優しく囁いた。


少し後、少し落ち着いたエレンの手を握り、セイラはギルドの管理人にランタンを借りて外へ出た。


闇が街を飲み込んでいた。かすかな油の街灯が数個あるだけの真っ暗な路地は、静まり返っていた。


セイラは不安げな手でエレンの手をぎゅっと握りしめた。


少し前まで泣きじゃくっていた子供の手が、今は逆に彼女を支える柱のように感じられた。


「イアン… どこにいるの…」


静かな通りにセイラの切実な声が、消えゆくように散らばった。


セイラはランタンを高く掲げ、ギルド建物の裏側の塀と狭い路地の間を照らしながら探し始めた。でも、ランタンの光はあまりにも弱く、闇はあまりにも深かった。


二人は暗い路地とギルドの裏側の塀をくまなく探した。


周りに積まれた薪の山、空の馬車の下、古い倉庫の隙間まで… しかし、イアンの痕跡はどこにもなかった。


セイラは絶望に陥り、精神が粉々になりそうだった。頭を垂れ、不安げな手で額を押さえた。


頭の中がぼんやりするような感覚だった。でも、これ以上周りの人たちを失うわけにはいかないという思いで、かろうじて心を奮い立たせ、再び捜索を続けた。


「また誰かを失うわけにはいかないわ……」


顔を覆いかぶさるように握りしめた彼女に、エレンの静かな声が聞こえてきた。


「お姉ちゃん……」


セイラは顔を上げた。


エレンの小さな手が彼女の手を引っ張った。


「そっち……」


エレンが指差すのは、旅人ギルドから街の西側へ伸びる道だった。


そこには誰もおらず、街の一部を照らす油灯さえ設置されておらず、闇と静寂に満ちた道だった。


「そっちに何があるの? 何も見えないけど……?」


「違うよ。あっちからイアンが感じるの。」


エレンはセイラの手を引っ張り、街の西側へ続く道へ向かった。


街の西側の外壁へ続く曲がりくねった道、風に揺れる木の影、時折聞こえるフクロウの鳴き声。


ランタンが揺れるたびに、幽霊でも飛び出しそうな雰囲気だった。


「あそこ……あそこ見て……」


セイラはエレンが指差す方向へ視線を移した。


道端から少し離れた古い木、広くてでこぼこな根を露わにした木の幹の下に、何かがうずくまって伏せていた。


セイラはその小さな影に向かって近づき、ランタンを高く掲げた。


「イアン……?」


うずくまって体を抱きかかえ、縮こまった体、泥で汚れた手と服。


イアンだった。


セイラはイアンに近づき、毛布で彼の体を覆ってあげた。イアンは床を下を向き、小さな声でつぶやいていた。


「音……消えて……闇……死……」


「落ち着いて、イアン。大丈夫よ。お姉ちゃんもおじさんもすぐ来るわ。少し待ってて。」


セイラは手を伸ばし、イアンの手を優しく握った。


しかし、イアンはびくりとしてその手を振り払った。


隣にいたエレンがセイラの顔を見上げた。


「お姉ちゃん、イアンがどうしてこんななの?」


「わからないわ。まだ心が落ち着かないみたいよ。」


エレンはセイラの手を離し、再び頭を抱えかかえ、聞き取りにくい音を呟くイアンをしばらく見つめた。


それから静かにイアンの隣に膝を揃えてしゃがみ込んだ。エレンはじっとイアンを見つめ、小さな声で囁き始めた。


「大丈夫。今は大丈夫よ。」


イアンは依然として視線を地面に固定し、呟きながら体を縮こまらせていた。エレンは少し躊躇ったが、慎重に小さな両腕でイアンを抱きしめた。


イアンの痩せて細い体が感じられた。


「イアン、お母さんが恋しいんだよね? うちのパパは私が小さい頃に亡くなったの。私はパパの顔が思い出せないよ。私もお母さん、お父さんが恋しかったわ。」


エレンはイアンをぎゅっと抱きしめ、涙を流した。


「でも、うちのお母さんがさっき昼間に川に落ちちゃったの。でも、おじさんが探しに行ったから、絶対連れてきてくれるよ。私はおじさんを信じてるから。」


「だから、イアンもお母さんとおじさんを信じていいよ。」


エレンの涙が頰を伝って流れ落ち、イアンの顔に落ちた。


まさにその瞬間だった。


エレンの胸元から、淡い黄金色の光が湧き上がり始めた。



読んでくれてありがとうございます。


読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。


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