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33. 爆発

セルカインは剣の切っ先をイヒョンに向け、一瞬足を止めた。彼の眼差しは氷のように冷たく、鋭かった。


「それこそが…お前が死ななければならない理由だ。」


イヒョンは息が詰まるような恐怖が全身を包み込むのを感じた。彼は歯を食いしばり、反論した。「人々を助け、彼らの命を救ったことが…それが俺が死ぬ理由だっていうのか?」


「その通りだ。」セルカインの声は乾ききって無慈悲だった。「我々は貴重な情報を得るために長い時間をかけて準備してきた。お前が癒したあの村の疫病…お前の妨害のせいで、我々は大切な実験結果を失った。もちろん、お前が去った後で私が正したが、失われたデータは取り戻せなかった。」


イヒョンの表情が硬直した。彼の声は怒りと不安で震えた。


「正した…って、どういう意味だ?」


セルカインの口元が奇妙に歪み、ぞっとするような笑みを浮かべた。


「彼らはみな重要な実験体だった。コルディウム結晶の作用を分析するための…貴重な標本だった。あの疫病は、憎悪の結晶が生み出した反応を観察するための実験だった。」


「だから…」


イヒョンの声がひび割れた。彼は拳を固く握り、セルカインを睨みつけた。


「お前が…彼らをまた殺したっていうのか?」


セルカインは無関心に肩をすくめた。


「すべてを元に戻しただけだ。」


イヒョンの頭の中は混乱の渦に巻き込まれた。だが、一つだけははっきりしていた。ここで死ぬわけにはいかない。この男を倒し、彼らが犯した罪の全貌を暴かなければならない。


セルカインは回廊の柱の間をゆっくりと進み、近づいてきた。その足音は静かで、だが威圧的だった。月光が彼の剣に反射し、冷たい殺気を放った。不気味な静寂の中、彼の存在はまるで死神そのもののように感じられた。


イヒョンは床に座り込んだまま、本能的に体を後ろに引いた。恐怖に飲み込まれた彼の手が慌てて地面をまさぐった。


「お、お前、近づくな…!やめろ…!」


彼の声は震え、眼差しは不安で揺れていた。彼は周囲に散らばる石の欠片を急いで拾い上げた。恐怖に濡れた目でセルカインを睨みつけ、力の限り石を投げ始めた。


その瞬間、鋭い叫び声が回廊を切り裂いた。


「イヒョン!」


ドランだった。彼は弓に火矢を番え、信号を待ちながら緊張した眼差しでセルカインを睨みつけていた。隣に立つアンジェロもまた、息を潜めて状況を見守っていた。セルカインは二人をちらりと見やり、口元を歪めた。


「そんな無駄なことをしても無意味だとわかっているだろう。」


セルカインはドランとアンジェロを完全に無視し、なおもイヒョンに向かってトク、トクと歩を進めた。その足音はぞっとするほど静かで、剣に映る月光が冷たい殺気を放っていた。


「頼む…来るなと言っただろう!」


イヒョンは恐怖に震える声で叫んだ。彼は手当たり次第に石を拾い、慌ててセルカインに向かって乱暴に投げつけた。


―チン!チン!―


セルカインは飛んでくる石を剣で軽く弾き飛ばした。剣から響く鋭い金属音が回廊を揺らし、不気味な反響を残した。


「哀れだな。」


彼の口元に嘲笑が浮かんだ。


「死を前にした人間がやれることといったら、こんな脆弱な石投げか。まだ未練を捨てきれていないのか?」


イヒョンはさらに別の石を拾って投げたが、それも虚しく弾かれた。彼の息は荒くなり、震える声で叫んだ。


「なぜ…なぜ俺を追うんだ?俺が一体何を悪いことをしたっていうんだ?」


セルカインの眼差しがさらに冷たく沈んだ。


「お前は秩序を乱した。感情とコルディウムの流れを歪める者は、存在してはならない。」


イヒョンは首を振って、本能的に体を後ろにずらした。彼の手は密かにバッグの紐を解いていた。


「それが…そんな大罪だというのか?」


彼の声は怒りと絶望で震えていた。


「俺はただ…人を救いたかっただけだ!」


「さあ、行く時間だ。」


セルカインは回廊の中央で立ち止まった。彼の剣はまるで死の宣告のようにイヒョンを狙っていた。


その瞬間、イヒョンの目が鋭く光った。彼はセルカインが立っている位置が自分が計算した場所だと気づいた。


「くらえ!」


彼は叫びながら、背中に隠していたバッグを全力でセルカインに向かって投げつけた。バッグは弧を描きながら彼の顔めがけて飛んでいった。


セルカインは眉間にしわを寄せ、剣を軽く振り上げた。「こんなもので…」彼の声は軽蔑に染まっていた。


―シュッ!―


セルカインの剣が鋭く空気を切り裂いた。バッグが剣先に触れた瞬間、「バン!」という爆音と共に、二つに裂けたバッグから硫黄の粉、香料の粉、破れた包帯の破片が霧のように爆発的に広がった。回廊の中央は一瞬にして赤と黄色の煙に覆われた。


「うっ!」


セルカインの眼差しが揺れた。彼は本能的に一歩後ずさり、左手で口元を抑えた。予期せぬ粉の爆発は彼の予想を完全に裏切った。硫黄の刺激的な臭いが鼻を刺し、香料の粉は目に触れると同時に鋭い痛みを引き起こした。包帯の破片は竜巻のように彼の顔と肩を巻き込み、視界を曇らせた。


「くっ…これは!」


セルカインは歯を食いしばり、剣を虚空に振り回した。粉を払おうとしたが、微細な粒子と包帯の破片に付着した粉は空中に漂い、かえって激しく広がった。彼の剣が動くたびに煙はさらに濃くなった。


その瞬間、イヒョンの叫び声が回廊を切り裂いた。


「ドラン、今だ!」


闇を突き破り、一筋の火光が飛び込んできた。ドランの火矢が、包帯の破片と硫黄の粉が渦巻く中心を正確に射貫いた。火花が粉に触れた瞬間、回廊は息をのむような緊張に凍りついた。


―ドカーン!―


爆発音が回廊を揺さぶった。セルカインの剣が空中で止まり、彼は巨大な火柱と閃光の中に飲み込まれた。彼の息さえも炎に巻き込まれ、跡形もなく消えた。


眩い閃光が回廊を覆い、嵐のような爆音が耳を突き刺した。天井から石の粉がパラパラと落ち、床を覆った。炎は包帯の繊維を燃やし、猛烈に広がり、硫黄の化学反応は圧力波を伴う爆発を引き起こし、回廊を赤い炎と煙で満たした。


イヒョンは爆発の衝撃波に巻き込まれる直前、本能的に床に伏せた。耳を裂く爆音の中で、彼は歯を食いしばり、体を丸めた。


炎と煙が回廊の中心を覆う中、セルカインのシルエットが炎の間で歪み、よろめく姿が見えた。彼の体は力なく崩れ落ちた。


だが、イヒョンは警戒を緩めなかった。


『こんなことで終わるはずがない…あいつはまだ生きている。』


彼の直感が鋭く警告した。


爆発の余波が収まると、イヒョンはゆっくりと体を起こした。彼は煙の中の黒い影に向かって慎重に近づいた。セルカインは回廊の中央に倒れていた。彼の片方の肩と脇腹は焼け焦げて真っ黒になり、鎧はところどころ割れ、溶けて肌に張り付いていた。黒いマントと長い髪には残り火が燃え、顔を覆っていたマスクは半分が壊れ、彼の硬い表情を露わにしていた。


セルカインの胸が激しく上下する様子だけが、彼がかろうじて生きていることを示していた。


彼の剣は数メートル離れた床に力なく転がっていた。


イヒョンは息を整えながら、床に転がるセルカインの剣を拾い上げた。冷たく重い剣身が彼の手の中に収まった。


彼はゆっくりと体を向け、セルカインの首に剣の切っ先を突きつけた。


「なぜ…」


イヒョンの声は落ち着いていたが、その眼差しは怒りと混乱で震えていた。


「なぜあの村の人々を殺した?」


セルカインは突然、荒々しい笑い声を上げた。


「ククク…ハハハ!」


彼は苦しげに首を上げ、イヒョンを睨みつけた。口元には暗紅色の血が流れ、息をするたびにひび割れた呻き声が混じった。


「これで勝ったと思っているのか?」


―ゴホッ!―


セルカインは口から血を吐き、体を震わせた。彼の呼吸は荒く、不規則だった。一瞬、重い沈黙が回廊を包んだ。崩れた神殿の壁の隙間から差し込む黎明の光が、闇を切り裂き、彼の無残な姿を照らし出した。


「そうだ…」


セルカインが低く唸るように言った。


「どうせお前はここで死ぬのだから、教えてやろう。」


イヒョンは目を細め、彼をじっと見つめた。


「虚勢を張るな。」


「フフ…ゴホッ!」


セルカインは血の混じった笑みを吐き出し、言葉を続けた。


「お前のせいで、彼らはコルディウムの秩序を乱した。」


「秩序?」


イヒョンの声に鋭い疑問が込められた。


セルカインは苦しげに息を荒げながら言葉を続けた。


「感情…そしてコルディウムこそ、この世界を支える唯一の根源であり力だ。」


彼の眼差しは依然として鋭かったが、生気が徐々に消えつつあった。


「だが、凡庸な人間どもは感情を正しく制御できない。制御されない感情は嫉妬、妬み、戦争、病を生む。お前が知らない事実だが、この大陸は欲望、怒り、憎悪に染まった無数の戦争で廃墟と化したことが数えきれないほどある。」


「それが、お前が村人を殺した理由か?彼らは何の罪もなかった!」


イヒョンの声は鋭く、だが震えが混じっていた。


セルカインは血に濡れた口元を歪め、低く笑った。


「罪?罪があれば死に、罪がなければ生きると思っているのか?イヒョン、罪と死には何の関係もない。」


彼の眼差しはますます鋭くなった。


「お前が彼らに与えた影響のせいで、彼らはコルディウムの根源的な秩序に疑問を抱き始めた。その疑問は、やがて世界に亀裂をもたらす。それは神を冒涜する行為に等しい。」


イヒョンは剣をさらに強く握りしめた。彼の声がひび割れた。


「だから…村ごと皆殺しにしたというのか?」


イヒョンは息を吸い込み、言葉を続けた。


「幼い子供たちまでも?」


セルカインは視線をイヒョンに固定した。彼の目はまるで深淵を覗き込むように深く、冷たかった。


「お前に関する記憶が彼らに残っている限り、いずれその波紋は再び広がるだろう。それはこの世界の均衡を崩し、ついにはこの世界を救う機会を奪う。」


イヒョンは息を止めた。セルカインが語る「制御された秩序」や「均衡」は、一見正当にも聞こえた。だが、彼の言葉はイヒョンにとってただの荒唐無稽な詭弁にしか聞こえなかった。


「違う。」


イヒョンはきっぱり首を振った。


「俺はお前の言うことに賛同しない。それは無知から生まれた馬鹿げた詭弁だ。」


彼は剣の切っ先をセルカインの首にさらに近づけ、問いかけた。


「お前が言ったその『実験』とは一体何だったんだ?」


セルカインの口元から流れていた血はすでに固まっていた。だが、彼の瞳はますます鮮明に輝いていた。彼は苦しげに息を荒げながら口を開いた。


「人間は弱い。」


彼の声はひび割れていたが、確固たる信念が宿っていた。


「感情にあまりにも簡単に崩れる。愛に揺れ、怒りに目が眩み、悲しみに飲み込まれる。」


「それで?」


イヒョンが鋭く聞き返した。


「お前がその感情を制御しようというのか?」


「ククク。」


セルカインは血の混じった笑みを吐き出した。


「私のようなつまらない存在がどうしてそんなことを。俺はただ、あの方の忠実な道具に過ぎない。」


彼は一瞬息を整え、言葉を続けた。


「あの方は感情を結晶化する秘法を見つけ出した。極限まで高ぶった感情を凝縮し、抽出された結晶…憎悪、喜び、恐怖、欲望。人間が感じる最も原始的な感情の核だ。それを使えば、人間の感情を操ることができる…」


彼は荒々しく息を吸い込み、目を大きく見開いた。


「戦争も、病気も、人間を脅かすすべてのものを防ぐことができる。この世界に永遠の平和をもたらせるのだ。」


イヒョンの口元が歪んだ。彼の声は冷たく沈んだ。


「それは平和じゃない。死だ。」


「ククク。」


セルカインが低く笑った。彼の呼吸はますます弱まっていた。


「お前なんかに何がわかる。この世界は新たに調律される。邪悪も、狂気も…絶対者がそれを制御すれば、すべては有用な道具にすぎない。」


「そんな存在を神と呼ぶんじゃないのか?」


イヒョンの声は鋭く震えた。


「お前こそ神になろうとしているんじゃないか?」


セルカインは低く笑った。彼の口元に浮かんだのは苦々しい嘲笑だった。


「神だと…ハハ。」


彼は苦しげに息を荒げ、イヒョンを睨みつけた。


「お前の言う通り本物の神が存在したなら、この混沌と苦痛をなぜ放置した?」


イヒョンの胸の奥深くで本能的な警告が響いた。この者を生かしておいてはいけない。だが、彼の手は人を殺したことのない手だった。人を救うために動いてきた手。彼は葛藤の中で歯を食いしばった。結局、彼は剣を収め、ゆっくりと背を向けた。


「殺さないのか?」


セルカインの声が背後から鋭く突き刺さった。


イヒョンは足を止めず、冷たく答えた。


「ただの道具として使い捨てられるお前が哀れだからだ。俺の仲間にかけたコルディウムを解いて消え失せろ。そして二度と俺の前に現れるな。」


「ククク。」


セルカインの笑い声はひび割れた呻き声と混ざり合った。


「最後まで偽善的だな。だからお前は死ぬことになる。」


「口だけは達者だな。」


イヒョンは冷たく吐き捨て、歩を進めた。


「そうか…本当にそう思うか?」


セルカインの声が突然不気味に陰った。


「だがな…死んだ妻を再び見た気分はどうだった?」


イヒョンの体が一瞬固まった。冷たい気配が背筋を這い上がり、全身を包んだ。彼はゆっくりと振り返り、歯を食いしばった。


「お前…それをどうやって知っている?」


セルカインの口元が奇妙に歪んだ。


「鏡を見ただろう?フフフ、私が贈ったその鏡だ。お前が親切にも顔をじっくり映してくれたおかげで、ずいぶん多くのことを知ることができた。」


その言葉を聞いた瞬間、イヒョンの胸の奥深くから暗紅色の怒りの炎が嵐のように燃え上がった。彼の瞳は燃えるように輝き、手に握った剣が微かに震えた。



読んでくれてありがとうございます。


読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。

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