193. 借金
奴らの服装は粗雑極まりなく、立ち居振る舞いには品位など欠片も見当たらなかった。貴族どころか正規の訓練を受けた傭兵ですらなかった。ただ少し力があるという裏路地のゴロツキ、その程度の連中だった。
そして奴らは既に一線を越えていた。
奴らは主人がびくびくしながら持ってきた最高級のエールと料理をがつがつと平らげた。床に唾を吐き、食べ終わった鶏の骨をそこらじゅうに投げ散らかす様子に周りの客たちが眉をひそめて囁き合ったが、男たちは意に介さず下品な猥談を並べ立てた。
「かーっ!村は今にも潰れそうだが、この店の酒だけは最高だな」
しばらく騒いで腹を満たした男たちが席を立った。イヒョンはそれでも奴らが勘定くらいはするだろうと思った。しかし奴らは主人に一瞥すらくれず、そのまま踵を返して表へ出て行ってしまった。
無銭飲食。傍若無人。厚かましいにも程がある振る舞いだった。
しかし主人は奴らの後ろ姿を見ながらも、金を払えとの一言すら口にできなかった。ただ奴らが消えた扉の方を眺めながら、深いため息をつくばかりだった。
嵐が過ぎ去った後のようにめちゃくちゃになったテーブルを片付ける主人の肩が、がっくりと落ちていた。イヒョンは主人に近づいて静かに尋ねた。
「主人、あいつらは何者ですか?この2週間、この村で一度も見たことがない顔ですが」
主人は握っていた手拭いを力なく置きながら、もう一度地面が陥没するほどのため息をついた。
「ふう……お客さんは知らない方がいいかもしれませんよ。あいつらはこの村の者じゃなくて、向こうのバルマリスって街から来た連中です」
「バルマリス?」
「ええ。月に一度、きっちりこの村に現れて取り立てをしていく奴らですよ」
イヒョンの眉間が冷たく狭まった。
「取り立てとは?税金を徴収するなら役人が来るはずでしょう。なぜあんなチンピラみたいな連中がのさばっているんですか」
主人は周囲を窺うと、声をぐっと落として囁いた。
「税金ならまだましですよ。あいつらはモホークスって組織の者でして」
「モホークス?」
「バルマリスの裏路地を仕切る悪党どもです。人身売買に高利貸し、違法賭博場まで、あらゆる悪事に手を染めている連中でして……ここに来るのは借金や利子を回収しに来てるんですよ。村の人間であいつらに金を借りてる者が一人や二人じゃないもんで」
イヒョンは心の中で短く舌を打った。貧しい漁村の人々の血を吸う蛭のような存在であることは明らかだった。
「いくら何でもギャングがこんなに堂々と幅を利かせているのに、領主は一体何をしているんですか?治安維持は領主の義務でしょう」
イヒョンの鋭い指摘に、主人は顔が真っ青になって手を振った。
「しっ!お願いですから声を低くしてください!」
主人は素早く周りを窺うと、イヒョンにぴったり近づいて耳打ちした。
「確かな証拠はないんですが……噂ではこの地域の領主であるド・マリヌス子爵があいつらの後ろ盾になってるって話でして」
「……領主がギャングと結託していると?」
「だから誰が告発なんてできますか?領主に知らせたところで、いつの間にか報復されるに決まってます。踏んだ糞だと思って死んだように生きるしかないんですよ。ここは元々そういう所なんです」
主人の諦めの混じった言葉に、イヒョンの眼差しが冷たく沈んだ。貧困と病、そしてその上で寄生する不条理な暴力。平和に見えていた灰色の港の裏側には、腐り果てた患部が深く巣食っていた。
その時、隣で黙って聞いていたライルが腕を組んでぼやいた。
「道理でな。さっきあのでかい奴ら、出て行く時に見たら腰に下げた袋がけっこうジャラジャラしてたんだよな。他人の血みたいな金を奪って腹を満たしてる連中だったわけか。あー、マジで飯が不味くなるわ」
ライルは嫌悪感を露わに眉と鼻に皺を寄せ、奴らが出て行った扉の方を睨みつけた。
その日の午後、女の家へ向かうイヒョンとライルの足取りは、いつになく軽かった。
ライルの肩には今日も相変わらずサザエがぎっしり詰まった袋が載っており、イヒョンの懐には新鮮な食料品とともに、ずっしりとした包みがもう一つ抱えられていた。今朝、宿の主人が子供たちに食べさせろと用意してくれた香辛料と焼きたてのパンだった。
「アニキ、このパンの匂いがもう芸術ですよ。道すがら俺がちょっと一口だけ……」
「夢にも思わないでください」
「冗談ですって、冗談。アニキは何事も真面目すぎるんだから」
イヒョンはポケットから漂ってくる香ばしいパンの匂いを嗅ぎながら丘を登った。
「宿の主人がくれたパンのおかげで、今日は作れる料理が増えそうですね」
「でもアニキって不思議ですよね、他の人とはうまくやれるのに、なんで子供たちとはあんなにぎこちないんですか?」
「ライルさんの出番を残しておいてるんですよ」
「それ言い訳っぽいんですけど?」
急な土道を登りながら交わしていたたわいない冗談が、ふつりと途切れた。辿り着いた小屋の扉は蝶番が歪んだまま危うげにぶら下がり、風に揺れるたびにギイッと不快な呻きを漏らしていた。
イヒョンの手から買い物籠が力なく滑り落ちた。土埃の上に苦労して手に入れた食べ物が転がり散った。
家の中は嵐が吹き荒れた後のように悲惨だった。真ん中に置かれていた食卓は脚が折れたまま引っくり返って転がり、破れた枕カバーから飛び出したガチョウの羽が、煙たい埃と絡み合って宙を幽霊のように漂っていた。
「お母さん……うわああん!」
引っくり返った食卓の下で、子供たちが互いを固く抱きしめながら小さな体を丸めていた。泣くのを堪えようとして、その幼い肩がわなわなと震えていた。
めちゃくちゃになった部屋の真ん中に女がいた。
彼女は割れた陶器の破片の間にへなへなと座り込んでいた。切れた指先から赤い血が滲み出て白い破片をゆっくりと染めていったが、女は感覚を失った人のように無表情で破片を拾い集めるだけだった。焦点の合わない彼女の瞳には、宙を漂う埃の他に何も映っていなかった。
「奥さん!」
イヒョンが悲鳴のように叫びながら、崩れた家具の間を駆け抜けた。後から入ってきたライルの顔からも、ふざけた笑みは既にきれいに消え去っていた。ライルは床に散らばった家具の残骸を見下ろしながら、低く呟いた。
「俺が片付けます。アニキは奥さんを……」
ライルは言葉を終えることもなく、壊れた家具を片側へ寄せ始めた。そして泣いている子供たちに近づき、背中をぽんぽんと叩きながらそっとあやし始めた。イヒョンは女の手から肉に食い込みそうなほど危うく握られていた陶器の破片を、慎重に取り上げた。
二人の手が加わると、めちゃくちゃだった家の中はある程度片付いていった。埃を払い、折れた椅子の脚をとりあえず合わせると、女はようやく少し正気を取り戻したのか、落ち窪んだ目でイヒョンを見上げた。
「……情けないでしょう?」
砂を噛んだような乾いた声だった。
「こんな見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」
女はイヒョンが持ってきたパンと食料品を見て頭を下げて感謝を表しながらも、羞恥心からか視線を上げられなかった。イヒョンは首を振りながら彼女に水を一杯差し出した。
「謝ることはありません。一体何があったんですか?誰がこんなことを……」
「……モホークス」
女が苦しげにその名を吐き出した。
「あいつらが来て帰ったんです。あなたたちも村に泊まっているなら見たでしょう。あの獣みたいな奴らを……」
イヒョンの目つきが冷たく細くなった。やはりそうだった。午前中に酒場で乱暴を働いていたあの連中だった。
「ええ、酒場で見ました。主人からおおよその話は聞きましたが……」
イヒョンはめちゃくちゃになった小屋の中を一度見回してから、女に尋ねた。
「あのチンピラどもは一体なぜ、何もないこの家にまで来て暴れたんですか」
持っていけるものといえば貧乏だけのこの家に、取り立てに来る名目など一体何だというのか。
女は深いため息をつきながら、震える手でくしゃくしゃの紙を一枚取り出して見せた。血痕のような赤い印章が押された借用証の写しだった。
「私にも理由が分からないんです。夫が死んで何日か後に、突然あいつらが押しかけてきて……夫が生前に莫大な金を借りたと言って、この紙を突きつけてきたんです」
女の声に涙が滲んだ。
「私の夫は一生海で正直に働いてきた人でした。酒も賭け事も知らず、ただ家族のことだけを考える真面目な人だったのに……そんな人があんな金を借りたはずがないんです」
女は唇を噛みしめながらうつむいた。
「でも……あの借用証に押された署名は確かに夫の筆跡なんです。それがまた腹立たしいんです。忘れた頃にやって来ては家を壊し、利子だけでも払えと追い詰めてきて……」
女の視線が隅で泣き疲れて眠った子供たちへ向かった。
「口に入るものを減らして稼いだ金を全部差し出しても、利子すら返せないんです。もう金が払えないなら私と子供たちを奴隷市場に売り飛ばすと言われました」
淡々と語る彼女の表情は、既にすべてを諦めた人のものだった。波が来れば流されてしまう砂の城のような危うい諦めだった。イヒョンは拳を固く握った。真面目だった一家の主の不審な借金、そして残された家族を搾取する悪辣なギャング。これは明らかな略奪だった。
「奥さん、失礼でなければその借用証を私に見せていただけますか」
イヒョンの丁重な頼みに、女は少し躊躇ってから紙を渡した。イヒョンはライルが灯したランプの明かりの下で借用証を広げた。紙の質、インクの状態、そして署名まで。残念ながら文書自体は本物だった。
『書類自体は完璧だ。法的には非の打ち所がないな』
しかしイヒョンの目はそこで止まらなかった。医師が患者の患部を診るように、彼は紙の上に刻まれたごく小さな痕跡さえ見逃さずに掘り下げた。
「……これは」
イヒョンの視線が文書の下部、赤い印章のすぐ下に押されたごく小さな紋様に固定された。一見するとインクの染みのようだったが、よく見ると明確な形をしていた。交差した二本の短剣、そしてその上に載せられた一つのサイコロ。
『剣とサイコロか』
暴力と賭博。まともな業者が使うような象徴ではなかった。イヒョンの視線がその横に記された証人の名前へ移った。
【Sylvan Sanguimanus】
イヒョンの口元に冷たい笑みがよぎった。
「サンギマヌス……」
「アニキ?それどういう意味?何かありそうな名前だけど」
横から覗き込んでいたライルが尋ねた。イヒョンは沈んだ声で答えた。
「血塗られた手という意味です」
「え?ち、血塗られた手?」
ライルがぎょっとして半歩後ずさった。
「本名のはずがないでしょう。奴らが使っている肩書きか偽名でしょうね」
イヒョンは確信した。この借用証は合法を装っているが、その出自は違法と暴力に塗れたものだった。夫は金を借りたのではなく、奴らが仕掛けた罠にかかったに違いなかった。イヒョンは紙を丁寧に折りながら女を見やった。
「奥さん、この借用証を私がしばらく預かってもよろしいでしょうか」
「それを持っていって何をするおつもりで?燃やしたところで借金が消えるわけでもないのに……」
女は力なく頷いた。彼女にとってその紙は足枷であり、恐怖そのものだったから、とりあえず目の前から消えるだけでも幸いだと思っているようだった。
「解決策を探ってみます。それと……」
イヒョンは椅子を引き寄せて座り、姿勢を正した。ここからが本番だった。
「旦那さんについてもう少し詳しく知りたいのです。普段どんな方だったか、どんな仕事をされていたか……どんな些細なことでも構いません」
女はぼんやりとした目で宙を見つめていたが、ゆっくりと記憶の糸を解き始めた。
「あの人は……海のように心の広い人でした。本当に優しくて思慮深かった。主に干潟で壺釣りでタコを捕っていて、腕がとても良かったから村では一番のタコ捕りと言われていたんです」
彼女の口元にかすかな笑みがよぎったが、やがて引き潮のように消えた。
「季節によって他の魚も捕って……獲物は魚市場にも卸していましたが、特に良い物が入った日には自分でバルマリスまで行って、商人ギルドに納品していました」
「バルマリス?」
イヒョンの目が光った。モホークスギャングの本拠地があるという街。
「ええ、バルマリス。あそこの方が高く買い取ってくれたから。あの人は本当に真面目でした。賭け事どころか酒もほとんど口にせず、稼いだ金はきちんと貯金していた人だったんです。そんな人が突然莫大な借金を負ったなんて……私にはどうしても理解できないんです」
女の言う通りだった。真面目な一家の主と賭博の借金の間には、何の繋がりもなかった。誰かが無理やり作り上げたのでなければ、あり得ない組み合わせだった。
イヒョンは深く息を吸い込んだ。いよいよ最後の質問を投げかける番だった。最も辛いが、必ず越えなければならない山だった。
「奥さん」
イヒョンはできる限り柔らかな声で、しかし揺るぎない眼差しで彼女を見つめた。
「お辛いでしょうが……思い出してみてください」
「……」
「旦那さんが亡くなったあの日、一体何があったのですか」
問いが落ちた途端、女の肩がびくりと固まった。彼女の瞳が言葉にできない恐怖に揺れ始めた。
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