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105. 救出

下水道の空気は、沼のように粘りつき、重かった。


腐敗した汚物の臭気と有毒ガスが入り混じった毒気が、イヒョンの肺を押し潰すようだった。


『ハァ、ハァ……』


彼は浅い息を吐いた。


ベロシダの冷たい金属のグリップを握る手のひらは、冷や汗でぐっしょりと濡れ、しきりに滑りそうになった。彼は指先が白くなるほどグリップを強く握りしめ、照準を維持した。


闇の中で次第に近づいてくる奇怪な摩擦音は、まるで心臓を締め上げる輪縄のようだった。


『くそっ……空間が狭すぎる』


イヒョンは心の中で悪態を飲み込んだ。


狭い管の中に斜めに横たわり、頭だけを持ち上げた姿勢は、拷問も同然だった。首と肩の筋肉が悲鳴を上げ、腰は千切れんばかりにずきずきと痛んだ。


『普段から体力作りをしておくんだったな。たかがこれしきで、こんなに限界が来るとは』


後悔が押し寄せたが、今は感傷や後悔に浸っている場合ではなかった。心臓が肋骨をへし折らんばかりの勢いで脈打っていたが、彼は必死に呼吸を押し殺した。


スー、フー。スー、フー。


だが、深く吸い込むほどに肺の奥深くまで入り込む鼻をつく悪臭とガスの臭いが、集中力を切り刻んだ。頭がくらくらと目まいがした。


『ガスの濃度が濃くなっている。奴らが群れで押し寄せながら、ガスを押し上げているのか? このままじゃ、奴らと戦う前に窒息しちまうぞ』


その瞬間、背後の床を伝って重い振動が伝わってきた。


ドシン、ドシン。ズルズル……。


間違いなかった。奴らだ。フェルトゥスの群れがイヒョンの位置を捕捉し、下水管を伝って猛烈な勢いで這い寄ってきていた。


まだその姿は闇に隠れて見えなかったが、鋭い爪が石壁を引っ掻き、湿った何かが床を擦りながら通り過ぎる身の毛もよだつ音が鼓膜を叩いた。


イヒョンはベロシダの引き金に人差し指をかけた。指先が微かに震えたが、眼光だけは闇を射抜くように炯々(けいけい)としていた。


『まだだ。確実な射程距離まで入ってこないと』


奴らの先頭を仕留めねばならない。そうしてこそ、奴らの死体が後続の群れの道を塞ぐ障害物となり得るのだ。


「もう少し……もう少し……」


呪文を唱えるように唇を動かしていた、その時だった。漆黒の闇が裂け、鋭い悲鳴と共に何かが飛び出した。


「キエエエエッ!」


長く醜悪な爪が生えた手だった。生きた影のように、イヒョンの首を狙って殺到した。


「くそったれ!」


イヒョンは反射的に体を捻りながら引き金を引いた。


ドゥドゥドゥン――!


狭い管の中で破裂音が爆竹のように弾けた。壁にぶつかって反響する轟音に、耳が遠くなった。闇の中へ放たれたボルトが虚空を切り裂いた。大部分は奴の堅い皮膚に弾かれるか、壁に突き刺さった。


だが、奴が鼻先まで迫ったその瞬間、運命はイヒョンに味方した。闇雲に放たれた一本の矢が、奴の胸元、微かに光る紋様に深く突き刺さったのだ。


ズブッ!


「グアアアアッ!」


奴の動きがぴたりと止まり、苦痛に満ちた悲鳴を上げた。巨大な体が通路を塞ぎ、もつれ合い始めた。


「やった!」


好機だった。奴が倒れ、後続の群れの進路を妨害するこの短い隙こそが、彼が生き延びられる唯一の時間だった。


イヒョンは遅滞なく身を翻した。


ぬるぬるとした苔と汚物にまみれた壁に手を突き、四足獣のように這って上方へと駆け出した。太ももが張り裂けんばかりに悲鳴を上げたが、止まることはできなかった。


ギギッ、ギギギッ! グルルル!


背後からは同族の死体を踏み越えてくるフェルトゥスたちの、怒りに満ちた鳴き声が波のように押し寄せていた。


『あと少し……あそこさえ越えれば!』


________________________________________


船着き場、下水道の入り口。


漆黒の闇とジメジメした湿気だけが漂うその場所で、ベルティモと部下たちは焦る気配を隠せずにいた。


「くそっ、遅ぇ……遅すぎるぞ」


彼は親指の爪をがりがりと噛みながら、濡れた地面を蹴りつけた。額に滲んだ冷や汗が、濡れた髪から滴る水と混じり合い、顎のラインを伝って流れ落ちた。


フェルトゥスの群れがソ・イヒョンを追ってあの真っ暗な穴の中へ消えてから、体感では数十年が過ぎたかのようだった。下水道の深部からは、相変わらず怪物たちの悲鳴と、壁を引っ掻いて作り出す振動が断続的に伝わってきていた。


だが、肝心の待っている人間は戻ってこず、奴らが再び飛び出してくる気配さえ見えなかった。その不吉な静寂こそが、ベルティモの血を干上がらせる主犯だった。


「隊長、何かあったんじゃありませんか?」


部下の一人が泣きそうな顔で尋ねた。彼の手にある火炎瓶が危なっかしく揺れていた。ガラス瓶の中の油が波打ち、不安な波動を作り出していた。


「今からでもこれを投げ込んだほうがいいんじゃ……。あいつらがまた這い出てくる前に、入り口を塞いでしまわねば……」


別の部下が恐る恐る口添えした。恐怖に染まった彼らの目には、同僚の安否よりも当座の生存本能が勝っていた。


ベルティモは血走った目で部下たちを睨みつけた。


「馬鹿なこと抜かしてんじゃねぇ。まだ駄目だ。イヒョンがあの中にいるんだぞ」


彼の声は刃のように鋭かったが、その裏には濃い不安が敷かれていた。


「ですが……そうこうしてるうちにあの化け物どもがまた溢れ出てきたら、俺たち全滅です」


部下の声が尻すぼみになった。間違った言葉ではなかった。だが、ベルティモは唇を噛み締め、首を横に振った。


『計画通りなら、もう合図が来なきゃおかしい』


イヒョンは下水道を抜け出し、広場の方から呼子よびこを吹くことになっていた。だが聞こえてくるのは、ただ怪物たちの幻聴のような鳴き声だけ。


『まさかやられたか? いや、まだ奴らが戻ってきていない。奴らがイヒョンをすでに殺したなら、外へ出てくるはずだ。まだ生きているに違いねぇ』


ベルティモは無理やり肯定的な仮説を立て、気を確かに持とうと努めた。しかし、流れる時間は彼の忍耐心を底につかせようとしていた。


結局、ベルティモは荒い息を吐き捨て、決断を下した。


「ここで待機しろ。俺が直接確認してくる」


「隊長! 正気ですか? あそこへ一人でどうするつもりですか!」


部下たちが仰天して止めた。だがベルティモは懐から予備の火炎瓶を取り出し、部下の胸元に荒っぽく押し付けた。


「つべこべ言わずに持ってろ。俺が合図を送ったら、迷わず中に投げ込め。タイミング逃したらぶっ殺すからな」


「そ、その……失敗したら……殺されるとかそういう問題じゃなくて……」


部下が恐怖に駆られて口ごもると、ベルティモが唸り声を上げ、釘を刺した。


「手前ぇ。作戦失敗したら次はねぇぞ。俺たちゃ全員死んだも同然なんだよ」


「……あ」


「だから気合入れろ。ミスったら地獄の果てまで追いかけて、ぶっ飛ばしてやるからな」


ベルティモは険悪な冗談を投げ捨て、滑りやすい船着き場の欄干を掴んで身を起こした。彼の眼差しはもはや揺れてはいなかった。友を確認するまでは絶対に引かないという、野獣のような決意だけが宿っていた。


西門の戦闘で奴の爪に引き裂かれた太ももが、焼けた鉄串で突かれるようにズキズキと痛んだ。限界だった。


彼は腰に吊るした革袋を荒っぽく開けた。中には非常用に持っていた覚醒ハーブが入っていた。


ムシャ、ムシャ。


躊躇はなかった。彼はハーブを一掴み口に放り込み、獣のように噛み砕いて飲み込んだ。舌が痺れるような苦味が口内を強打したが、すぐに血管を伝って広がる熱い熱気が、苦痛を麻痺させ始めた。


『少しは保つだろ。畜生』


彼は血で赤黒く濡れた太ももの包帯をきつく縛り直した。圧迫した隙間から血がどろりと流れ落ちたが、今はそれを気にしている余裕などなかった。


『死ぬか生きるかだ』


脊椎を伝って頭のてっぺんまで突き抜ける激痛も、足元に溜まる血の滴りも無視した。『失敗』という単語は頭の中から消し去った。それを思い浮かべた瞬間、足が止まってしまいそうだったからだ。


ベルティモはバラックと古びた倉庫が迷路のように絡み合う裏路地を抜け、広場へ向かって疾走した。


過剰摂取した薬効が回り始めた。心臓が張り裂けんばかりにポンプし、きつい薬のせいで涙と鼻水が勝手に流れ落ちて視界を遮った。口の中が火の玉を含んだようにヒリヒリしたが、彼は手の甲で顔をゴシゴシとこすり、速度を上げた。


『酷いザマだな。だが、こんなこたぁどうでもいい』


荒涼とした風が、汗と涙でまみれた頬を叩いて通り過ぎた。街の至る所に転がる死体、遠くから聞こえる怪物たちの咆哮。そのすべての地獄絵図を背にし、ベルティモの頭の中にはただ一つしかなかった。


『イヒョン、この狂った野郎。生きてさえいてくれ』


いつの間にか広場の隅、古びた倉庫の建物の前に到着していた。イヒョンが地下から脱出すると約束した、その場所だった。ベルティモは扉を蹴破って入り、隅に積まれたガラクタをどけ、床の板を持ち上げた。


真っ黒なあぎとを開けた下水口が露わになった。


ギイッ、ギギィッ。


彼が設置しておいた古い木の梯子が重みに耐えきれず、悲鳴を上げた。闇の中へ一段ずつ下りるにつれ、湿って重苦しい空気が肌にねっとりと絡みついた。


ポタッ。ポタポタ。


どこからか落ちる水滴の音だけがこだまする静寂な空間。


ところが、臭いが違った。いつもの吐き気を催す汚物の臭いではなかった。


『これは……』


鼻を突くツンとした刺激臭。吸い込んだ瞬間、肺がちくちくする、明らかな化学的な気配が混じっていた。ベルティモの眉間に深い皺が寄った。


『イヒョンが言っていたあのガスか? もうここまで充満しているとは』


危険だった。だが、退く場所はなかった。ベルティモは首に巻いていたマフラーを引き上げ、鼻と口を覆った。薄い布切れが毒気をどれほど防いでくれるかは未知数だったが、生身で耐えるよりはマシだろう。


「しっかりしろ、ベルティモ。ここで倒れたら犬死にだ」


彼は自分に催眠をかけるように呟くと、湿った苔に覆われた壁を手探りし、闇の深淵へと足を踏み出した。


どれほど下りただろうか。ついに下水管へと続く狭い通路が現れた。まるで巨大な怪獣が口を開けて待っているかのような、漆黒の穴だった。


ベルティモは息を深く吸い込んだ。そして闇に向かって叫んだ。


「イヒョン! おい! そこにいるのか!」


張り上げた声が下水道の壁を伝って屈折し、響き渡った。


しばし恐ろしいほどの静寂が流れた。返ってくる答えを期待して耳を澄ませていたベルティモの心臓が、ドクリと沈んだ。


キエエエエッ! グルルル!


聞こえてきたのは人の声ではなかった。闇の中で無数の獣が牙を研ぐ音、そして飢えた捕食者が獲物を発見した時に発する、身の毛もよだつ咆哮だけだった。


「畜生! 遅かったか!」


ベルティモは迷うことなく地面に腹這いになり、下水道管のあぎとの中へ体を押し込んだ。


ギチチッ。


肩が詰まった。狭苦しい管はまるで彼を飲み込もうとするかのように全身を押し潰しにかかり、底に溜まった汚物が服の中に染み込んできた。息を吸うたびに肺がひしゃげるような息苦しさが押し寄せた。


だが、彼は歯を食いしばり、肘で床を打ちつけながら前へと這い進んだ。


「イヒョン! 生きてるなら返事をしやがれ、この野郎!」


彼の叫びはワンワンと管を伝って回るだけで、返事はなかった。


ベルティモは虚空をかき回す指先の感覚に全神経を集中させた。どれほど這い入っただろうか、指先に異質な感触が触れた。冷たく滑らかな金属の冷気。そして粘つく液体。


心臓が早鐘を打った。


『これは……』


指先でなぞって確認した形状は馴染み深いものだった。イヒョンの武器、『ベロシダ』だった。


ベルティモは悲鳴を上げようとする筋肉を抑えつけ、必死に体をさらに捻じ込んだ。荒い息遣いが狭い通路を満たした。やがて闇の中で微かに煌めく金属の装飾と共に、ぐったりとした人のシルエットが捉えられた。


「イヒョン! イヒョン!」


ベルティモは青筋を立てて叫んだ。しかし、イヒョンは微動だにしなかった。ベロシダを握った手は硬直しており、体は死体のように冷たかった。


ベルティモの指先から血の気が引いた。彼は震える手を無理やり鎮め、イヒョンの頬を荒々しく叩いた。


「おい! 手前ぇ! しっかりしろ! ここで寝たら死ぬぞ!」


パシッ、パシッ。


打撃音が狭い管に響いたが、イヒョンの瞼は重く閉ざされたまま開く気配がなかった。息遣いがあまりにも微弱だった。


ベルティモは唇を噛み締めた。生臭い血の味が意識をはっきりとさせた。


『落ち着け。慌てたら二人とも死ぬ。まずは外へ引きずり出すのが先だ』


彼は渾身の力を込め、イヒョンの胸倉を掴んで後ろへ引いた。


「ぐうっ!」


だが、びくともしなかった。まるで岩になったかのように微動だにしなかった。


『何だ? どこか挟まってるのか?』


ベルティモは急いで手を伸ばし、イヒョンの体を下の方へとなぞった。太ももを過ぎ、ふくらはぎ、そして足首に手が触れた瞬間。


ゾッとするような寒気が背筋を駆け上がった。


『……なんだ、これ?』


何かがイヒョンの足首をぐっと掴んでいた。人の手だった。いや、人の形はしているが、人間ではないモノの手。


闇の中で目を細めると、白っぽい輪郭が見えた。すでに事切れたフェルトゥスの死体だった。死ぬ直前に人間の姿に戻ったそいつは、死んでもイヒョンを放さないという呪いのように、足首を手枷てかせのごとく締め上げていた。


「うわっ! クソッ! おぞましい野郎だ!」


ベルティモは悪態をついた。


「死んでもしつこいんだよ、クソッタレが!」


時間がなかった。彼は腰に巻いていた革のボルドリック(剣帯)を解き、イヒョンの脇の下へ通した。革紐をくくりつけ、自分の肩にかけてテコのように力を込めた。


腕の筋肉が張り裂けんばかりに膨れ上がった。


「うおおおお! 出てこいっ!」


バキッ。


ベルティモが獣のような気合と共に体をのけぞらせると、イヒョンの体が少しずつ引きずり出され始めた。幸い、死んだ奴の体躯が小柄だったため、狭い管を無理やり通過することができた。


ズルズルと引きずられる音と共に、ついにイヒョンの上半身が下水管の外へ抜け出た。ベルティモは荒い息を吐きながらイヒョンを抱きかかえた。


まさにその瞬間だった。


「キエエエエッ!!」


「うわっ!」


下水管を塞いでいた『栓』が抜けるや、その後ろで待機していた地獄絵図が目の前に広がった。イヒョンの足首にぶら下がって引きずり出された死体の後ろで、無数のフェルトゥスが互いを踏みつけ、押し潰しながらあぎとを開けた。


鋭い爪が虚空を切り裂いた。だが、死んだ同族の死体が道を塞いでいるせいで、奴らの爪はイヒョンの爪先に届くか届かないかの距離で空を切るばかりだった。


悪夢そのものだった。ベルティモの額から冷や汗が雨のように降り注いだ。


「しつこい野郎どもだ……最期まで煩わせやがって」


ベルティモは奴らが死体を片付けて出てくる前に決断を下さねばならなかった。彼は腰から短剣を抜き放った。青白い刃が闇の中で煌めいた。


「悪いな。だが離せ」


グシャッ!


短剣がイヒョンの足首を掴んでいる死んだ奴の手首を叩き斬った。骨が砕け、軟骨が切れる身の毛もよだつ音。


ポトリ。


ついに死者の掌が力なく床に落ちた。イヒョンは自由になった。


ベルティモは遅滞なくイヒョンを担ぎ上げ、ボルドリックで自分の体と縛り付けて固定した。ずっしりとした重みが背中に伝わったが、それは生きている者の重みだった。


「もう少しだけ耐えろ、相棒。もうすぐ終わる」



読んでくれてありがとうございます。


読者の皆さまの温かい称賛や鋭いご批評は、今後さらに面白い小説を書くための大きな力となります。


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