101. 危機
「閣下!」
ラマンの切迫した叫びが空気を切り裂き、響き渡った。
「ダメだ!」
イヒョンが歯を食いしばって叫んだ。彼は伯爵を狙うフェルトゥスに向かって素早く体を向け、同時に手に握ったベロシーダからボルトを発射した。
ベロシーダに装填されていたボルトが虚空を裂いて飛び、フェルトゥスの胸元に正確に突き刺さった。
「クゥアアア!」
フェルトゥスが怪声を上げて膝をついた。彼の体周りに黒い霧が渦を巻くように立ち上り、嵐のように爆発した。その霧は周囲の空気を汚染し、恐ろしい悪臭を放った。
「イヒョン卿!」
伯爵の目が大きく見開かれた。彼の顔には一瞬の驚きとともに、安堵の色が浮かんだ。彼は震える手で剣を握り直した。
ラマンが剣を振りかざし、伯爵に向かって突進してくるフェルトゥスを狙った。刃が風を切る音が鋭く響き渡った。ラマンの剣はフェルトゥスの文様を正確に二つに切り裂き、その体からもやはり黒い煙が四方に飛び散るように噴き出した。
「伯爵様、早く中へお入りください!」
もう一人のフェルトゥスが猛然と襲いかかってきた。その鋭い爪がイヒョンの腕をかすめ、肉をえぐった。鮮血が噴き上がり、空気を染めた。
「クッ!」
イヒョンが歯を食いしばって耐えた。彼はベロシーダを回して、至近距離から強烈なボルトを連続で浴びせた。ボルトがフェルトゥスの胸を貫くと、その怪物は衝撃によろめき、後ろへ飛ばされて床に叩きつけられた。黒い霧が立ち上り、周囲がぼやけた。
「こ…こんな怪物みたいな奴ら!」
イヒョンが荒く息を吐きながら呟いた。胸が激しく動悸し、腕の傷が燃えるように痛んだ。血が流れ落ちる感触が彼の集中力を乱した。
「閣下、急いでください! 中へ! 早く!」
兵士たちが力を合わせて門を押し開けた。彼らの緊張した顔には汗が流れ落ちていた。
「早く! 門を閉めろ!」
ラマンの焦った命令が続いた。
「門閉めろ! しっかり固定しろ!」
ラマンが全力で城門を押しつけた。彼の背中から汗が雨のように流れ落ちた。
門が閉まる重い音が響くや否や、フェルトゥスたちの咆哮が別荘を揺るがした。門を叩く衝撃が次々と爆発した。
「ドン! ドン!」
門の向こうから聞こえてくる怪しい咆哮に、兵士たちの顔色が青ざめた。彼らは互いにちらりと見やり、武器を握り直した。
伯爵が荒い息を吐きながら口を開いた。
「イヒョン卿…君のおかげで命拾いしたよ。本当にありがとう。」
「閣下…当然のことをしたまでです。でも…」
イヒョンの声が低く沈んだ。
「まだ終わったわけじゃありません。」
彼の腕から血がぽたぽたと落ち、床を濡らした。彼は歯を食いしばって痛みを抑えた。周囲の空気が重くなり、緊張感が肌に染み込んだ。
ラマンが門を再確認しながら低い声で言った。
「門は長く持ちこたえられないでしょう。あいつらが壁をよじ登ってきたら…終わりです。」
「各自位置に戻れ! すべての窓を封鎖しろ!」
「城を必ず守らなければならない! セイラはどこだ?」
伯爵の焦った問いかけに、部下の一人が答えた。
「セイラ様は神殿で神官たちと待機中です。安全ですので、ご心配なく。」
「あ···大変なことだな。」
ラマンが伯爵を見つめ、毅然と言った。
「閣下、あまりご心配なさらず。セイラ様の実力なら、あの怪物どもがどれだけ暴れようと、神殿を突破できないはずです。彼女のコルディウムは最高ですから。」
「そうだな。だが、兵力がこうも分散していては···しかも、敵の数が多すぎる。」
兵士たちが素早くバリケードを積み上げる間、ラマンは窓の外を窺った。月光の下でフェルトゥスたちの影が揺らめいていた。彼らの眼差しが赤く輝き、捕食者の本能を露わにしていた。
「奴らの弱点を知っているとはいえ、この圧倒的な数にどう対処するか···」
ラマンの声が重く沈んだ。彼の目には決意が閃いていたが、心の中では不安がじわじわと湧き上がっていた。別荘の壁が振動し、危機が刻々と迫っていた。
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暗い宿舎の中に差し込む陽光が、窓の隙間から床に長く影を落としていた。その柔らかな光が、かえって周囲の静けさを強調しているようだった。
フルベラは今や完全な修羅場と化していた。フェルトゥスたちの足音が通りを響かせて近づいては遠ざかりを繰り返し、その合間に人々の切迫した悲鳴が絶え間なくこだましていた。
「あああっ!」
遠くから鋭い悲鳴が爆発すると、エレンは本能的に手で口を覆った。彼女の指先が軽く痙攣するように動いた。
セイラとエレンはリセラの傍にぴったりと寄り添い、壁に背を凭れさせて息を潜めていた。空気中に埃と血の臭いが混じり合い、息を吸うたびに胸が詰まるように感じられた。
リセラの眉間がわずかに歪んだ。彼女は床を支えに、低い声で囁いた。
「セイラ、エレン…声をもう少し抑えて。今はまだ安全だけど、あいつらがいつ現れるかわからないわ。」
彼女は体を低くして這い進み、窓辺に近づいた。カーテンを慎重に少しだけ捲ると、外でフェルトゥスたちの黒い影が通りを横切り、犠牲者を求めてうろつく姿が彼女の目に映った。
続いて一匹が人を追いかけて猛然と飛びかかり、すぐに「クルルル…」という低い咆哮が空気を切り裂いて広がった。その音は野生の獣のように脅威的だった。
リセラは素早くカーテンを下ろし、唇を軽く噛んだ。彼女の眼差しに警戒心がよぎった。
セイラは膝を抱えて体を丸め、囁いた。
「お姉さん…ルメンティアは無事でしょうか? あの音がだんだんこっちに近づいてくるみたい。不安で耐えられないわ。」
セイラはエレンをちらりと見て、安心させようと努めて言った。
「何も起こらないわよ、心配しないで。」
エレンはセイラの手をぎゅっと握り、リセラを見上げた。彼女の唇が軽く震えた。どれだけエレンとセイラを安心させようとしても、彼女自身も恐怖に体が震えるのを抑えきれなかった。
「お母さん…あの怪物どもに私たちが見つかったらどうしよう? 悲鳴の音が…あまりに恐ろしいわ。あの咆哮が狼みたいに獰猛に聞こえて、夢の中まで追ってくるみたい。」
エレンはリセラのスカートの裾を抱きしめ、もっと深く身を縮めた。目尻に涙が溜まったが、彼女は歯を食いしばって泣き声を堪えた。
リセラはエレンの頭を優しく撫で、強いて微笑みを浮かべてみせた。
「今は来ないわよ。でも、ここで耐えるだけじゃダメ。近くに来たら逃げ道を探さないと。セイラ、私が裏口を確認するわ。あなたたちは静かに待ってて。音を立てないで。」
リセラはエレンの背中を軽く叩いて立ち上がった。
セイラが頷いて答えた。
「わかったわ、お姉さん。気をつけて行ってきて。私がエレンを守るから。」
リセラは1階に下りて、裏口にそっと近づいた。取っ手を握ってしばらく迷った末、決意を固めてドアを少し開き、外を覗いた。
路地にフェルトゥスの影がかすめるように通り過ぎるのが見えた。その動きがあまりに速くて、リセラは胸がどきっと沈む気がした。
「ドン!」近くで何かが壊れる音が爆発すると、リセラは慌ててドアを閉めてしまった。顔が青ざめ、息が荒くなった。彼女は手で胸を押さえ、心を落ち着かせた。
彼女は慎重に2階に戻ってきた。
「裏路地にもあいつらがうろついてるわ。でも、奴らが少し遠くに行ったら逃げられるチャンスがあるかも…タイミングを上手く合わせないと。」
エレンが目を丸くして尋ねた。
「本当に逃げられるかな? でも怖いよ…フェルトゥスに捕まったらどうしよう? イヒョンおじさんが早く来て私たちを助けてくれたらいいのに…」
エレンの声がだんだん小さくなり、セイラの腕を抱きしめた。彼女の小さな体が安心を求めてもがいているのが感じられた。
「そうよ、イヒョンはきっと来てくれるわ。出ないでって言われたんだから、待ってみよう。それまで何とか耐えなきゃ。ドアに家具を積んで塞いでみよう。セイラ、手伝ってくれる? エレン、あなたはここで待ってて。」
リセラが言いながら立ち上がり、テーブルを引き始めた。
セイラがテーブルを一緒に引きながら囁いた。
「お姉さん、あいつらがドアを壊したら…どうやって対抗するの? 刀もないのに…いっそ今逃げた方がいいかも。ここに留まる方が危ない気がするわ。」
彼女の瞳が不安に染まっていた。テーブルが床を擦って小さな音を立てると、セイラが動きを止め、耳を澄ました。外からフェルトゥスの足音がだんだん近づいてくるようだった。
「しっ…聞こえたみたい。すぐ近くよ。」
リセラが息を潜めて頷いた。額に汗の玉が浮かんだ。彼女はセイラの腕を軽く掴んで落ち着かせた。
「待って…すぐに通り過ぎるわ。動かないで。」
足音がゆっくり遠ざかると、リセラが長く息を吐いた。
「行ったわ。今度こそ続けよう。」
あいつらなら木のドアくらい一瞬で壊すだろうけど、こうでもしないと気が休まらない。リセラは家具を積みながら周囲を窺い、考えた。
『これがどれだけ持つかわからないけど…こうでもしないと…』
エレンが目を開いて小さな声でお願いした。
「お姉さん…お話聞かせて。怖い音が聞こえないように…昔話で。そうしたら少し怖くなくなるかも。」
彼女の目がしっとり濡れていた。
セイラが微笑もうと努めて低い声で応じた。
「いいわよ、エレン。昔々…美しい森の中に小さな妖精が住んでいたのよ。」
声が少し不安定だったけど、セイラはエレンの手を叩いて、ゆっくりとお話を続けた。その柔らかな声が宿舎内の緊張を少しでも和らげた。リセラはその光景を眺めながら下唇を軽く噛んだ。
『イヒョン…お願い、早く来て。長く持たないわ。』
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別荘の中では作戦会議が真っ盛りだった。
松明がぼんやりと瞬きながら部屋の中を薄暗く照らしていた。空気には血と汗の臭いが濃く染みつき、息を吸うたびに胸が重く沈むようだった。
伯爵が地図を見下ろし、眉間に皺を寄せて尋ねた。
「一体どうやって敵が街のど真ん中に潜り込んだんだ? これは…絶対にありえないことなのに。」
彼の声には怒りと困惑が絡みついていた。普段の落ち着いた態度が崩れたようで、指先が軽く痙攣するように動いた。
イヒョンが冷静に答えた。
「閣下、広場で…空の真ん中から黒い光が降り注ぐように繋がり、黒い霧が四方に広がっていきました。そしてその中からあの怪物どもがどっと湧き出てきたんです。まるで…少し前、広場でルカエルの感情を盗んでニルバスを連れ去ったあの現象に似ていました。」
ラマンが首を振り、ため息をついた。
「一体どんな天変地異だ…ニルバス誘拐に続いてフェルトゥスどもまで、しかも街の中心に敵が突然現れるなんて…いくら頭を絞っても納得がいかないな。」
伯爵が腕組みをして地図を睨みつけ、顎を撫でた。
「ふむ…なぜよりによってフルベラを狙ったんだ? ただの静かな貿易都市なのに…この攻撃の本当の意図は何だ?」
伯爵の眼差しに深い悩みがよぎった。窓の外から聞こえてくる遠い悲鳴の音が、会議室の静けさをさらに増大させるようだった。
「ここは軍事的に重要な場所でもないし…とても裕福な都市でもない。そして奴らは略奪を目的としているようには見えないからな。」
「閣下、どうも奴らの目的は一般的に私たちが考えるものではないでしょう。あの怪物どもは人々を無慈悲に殺すだけで、物を狙わないんですから。」
ラマンが低く応じた。彼の視線は窓の外に向けられ、手は無意識に握ったり開いたりしていた。
イヒョンはその言葉を聞くや否や、頭にぱっと浮かぶ考えに胸がどきっと沈んだ。
『まさか…こ…このすべてが俺のせいか? コルランでのように…俺を追っているのか?』
不吉な予感が喉を締めつける気分だった。彼はその話をすべきか悩みに陥った。
イヒョンはしばらく沈黙した後、重く口を開いた。
「閣下、もしかすると…俺を狙っているのかもしれません。数週間前、コルランで…ある者が俺を襲撃したことがあったと申し上げましたよね。」
「ああ、そうだったな。」
「その時の状況は今とは少し違いましたが、あいつも俺を殺そうとしました。俺を…秩序を崩壊させて流れを歪めてしまう存在と呼んでいました。」
テーブルを支えたイヒョンの手に力がこもった。
伯爵の目が一瞬大きく見開かれた。
「この奴らが君を狙っていると?」
彼が体を前に乗り出して尋ねた。イヒョンを直視する彼の視線が鋭く輝いた。部屋の中の松明が彼の顔に影を落とし、より威圧的に感じられた。
イヒョンはコルランでルカスという者に襲撃されたことを細かく説明した。伯爵は話を聞く間中、髭を捻りながら集中し、理解できないというように口を開いた。
「そうか…だが、ただ地球という馴染みのない場所から来たという理由で君を狙うなら、それが何の役に立つのかわからないな。」
伯爵は顎を支えて少し考え、イヒョンを見て言った。
「イヒョン、もしフェルトゥスが数匹襲撃してきたら、君一人で防ぎきれるか?」
「状況によりますが、そんな怪物どもに奇襲されたら勝つのは難しいでしょう。数が多くなったらなおさらです。」
「そうだろうな。俺の言いたいのはまさにそれだ。君を狙うなら、なぜ数百匹もの軍隊規模の奴らをこの街に送り込んだんだ? 隙を狙うなら少数の兵力で目標を狙えたはずなのに…その点がおかしい。」
伯爵は後ろ手に組んで会議室を歩き回りながら言葉を続けた。
「君を狙うのが事実だとしても、その裏にさらに大きな計画が隠されているはずだ。この攻撃は単に君個人を狙うものじゃない。」
伯爵の分析は鋭かった。イヒョンを狙う者たちが存在するのは確かだったが、こんな大規模な兵力を小さな街に投入するのは常識的に納得がいかなかった。会議室の中の空気が重くなり、三人は地図を間に挟んで深い沈黙に陥った。外からはフェルトゥスたちの咆哮が依然として遠くから聞こえてきた。
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