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第五三話 創造の力

森を抜け、街道を走り、城門が視界に入り、見張りの兵士がこちらに気づくよりも早く、リューンの声が響いた。

「道を開けろ! 緊急だ!」


兵士たちはその真剣な声音に即座に反応し、驚いた様子で門を開け放つ。

ミルフィを乗せた馬は減速することなく、王城の敷地内を疾駆した。


リューンの指示で、馬はまっすぐに目的の建物を目指す。

ミルフィは背中越しに伝わるリューンの焦燥と緊張を感じ、胸を強く握られるような思いで手綱を握りしめた。


王城の白い回廊が見える。

目的の建物の玄関前で、ようやく馬が止まり、ミルフィが飛び降りた。


リューンもすぐに地を蹴り、二人はほぼ同時に駆けだす。

扉を勢いよく開け、靴音を響かせながら廊下を突き進んだ。


そして奥の部屋の扉を開けた、その瞬間。

「……あれ?」

中には――とても信じがたい光景が広がっていた。


ジウイが、パンを両手で抱えながらもぐもぐと頬張っており、

その隣ではカイルが苦笑いを浮かべつつスープを口にしている。

そしてその向かい側には、王子が椅子にゆったり腰を下ろしていた。


「ミルフィ、リューン、おかえりー、凄く早かったねー」

ジウイはパンの端をくわえたまま、二人に手を振った。


「……!?」

駆け込んできたミルフィとリューンは、思わず足を止める。

あまりにも拍子抜けな光景に、しばし言葉を失った。


「た、ただいま。無事ったんだね」

モグモグと口を動かしながら、ジウイはふわっと笑う。


「なんかね、新しい力? みたいなのが出たら急に倒れちゃって……気づいたら、すっごくお腹空いてて……」

「……力が強すぎて、気を失ってしまったということではないのですか?」


リューンが呆れ気味に言うと、カイルが困ったように肩をすくめる。

「うん、意識なかった。でも呼吸も脈も正常だったし、俺が抱き止めたら安心したのか……すぐ寝息立ててたよ。ずっと無防備に寝てた。さっき目が覚めたばかり」

「なんで……そんな……」

ミルフィがぽつりと呟く。


さっきまでトロールと命を削るような激戦を繰り広げていた自分たちと、

今ここでパンを頬張るジウイの光景とのあまりの落差に、現実感が追いつかない。


「でもね」

ジウイは、ふわっと笑顔を浮かべて言った。

「二人が無事だっていうの、わかってたんだよ、だから安心してたの」


「……ジウイくん……?」

「ちゃんと届いたって感じたから。私のアニマの力が、最後まで届いたんだって」

そう言って、ジウイはパンを机に置き、胸に手を当てた。


「だから、あの黒ずみに覆われたトロールも倒せたでしょ?」

その一言に、ミルフィとリューンの目が見開かれた。

「なぜ……トロールのことを……?」

「え?」

ジウイは、ぽかんと二人の顔を見つめた。


「だって、倒れてる間ずっと……なんか夢?みたいなの見てて。すっごく黒くて怖い気配があって、でも光がそれを包んで……消えていったの。あれが黒ずみに侵されたトロールだったんだよね?」

言葉にならない。


二人は顔を見合わせたが、どちらの目にも、呆然とした光が宿っていた。

(あの一撃は――ただのアニマの奇跡じゃなかった。ジウイ自身の“意志”が、確かにそこにあったんだ)

ミルフィは無意識に、胸に手を当てた。

(この子は……やっぱり、創造の力を自分のものにしつつある)


王子が席を立ち、二人に歩み寄って言う。

「まずは、おかえり。よく無事に帰ってきてくれた。――君たちの働きで、ようやく真実が手の届くところまで来た。……本当に、ありがとう」


そして王子はジウイに目を向ける。

「そして、君も……我々の想像を超える奇跡を見せてくれた。……その力が、必ずこの国の未来を変えることになる」


ジウイは照れたように笑いながら、またパンを一口かじった。

「……そっか。じゃあ、もう一個食べてもいい?」


リューンは、苦笑しつつ頷いた。


「では王子もここにおられるので、研究施設での事の説明をしましょう。もちろん私たちは施設に入る前にこちらに向かってしまったので途中までですが」

そう言って、リューンは研究施設でなにが合ったのかを説明した。


「では、現場に残った部隊からの報告を待って次を考えることにしよう」


読んでいただきありがとうございます。

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毎日3回程度投稿しています。

最後まで書ききっておりますので、是非更新にお付き合いください。

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