#1「記憶なき異世界人」
※素人が趣味で書いている小説となります。文章や物語のクオリティなどは低いかと思いますが、お読みいただけますと嬉しく思います。
「んん・・・」
私が寝そべっているベッドの横にある窓から朝日が差し込んでいる。
「メイさ~ん、朝ごはんできましたよ~!」
部屋の外から元気な女の子の声が聞こえる。
そろそろ起きる時間だ。そう思い、ベッドから体を起こす。ベッドの外は少し肌寒く感じた。
宿の一階に降りると、机の上にすでに料理が出されていた。アツアツの野菜スープとしっとりとしたパン。料理自体はシンプルながらも、美味しそうな香りが食欲をそそる。
昨夜は夜遅くに宿に着いたということもあり、夜ご飯を食べずに寝てしまった。そのためか、起きた時からお腹がグーグーといって止まらない。私は勢いよく出された料理を食べ始めた。
さて、私がご飯に夢中になっている間に、私が今置かれている状況について振り返っておこう。
今私がいるのは、ツナジアと呼ばれている町・・・らしい。なぜ他人行儀の言い方なのかというと、私は今までの記憶をすべて失っているからだ。
ただし、唯一覚えていることがある。それは、私はサクラモリ・メイという名前であり、違う世界からやってきた人間だということだ。といっても、どのような経緯で違う世界から今いる世界にやってきたのか、この世界にやってきてからどのような人生を歩んできたのか、何一つ覚えていない。
そして、目が覚めるとツナジアの中央にある噴水前のベンチに座っていた。行く宛もないため、近くにあった宿に泊まることとした。
つまるところ、私には親族や友人などの身寄りのある人もいないし、帰る場所もない。いわば、放浪している無職人間ということになる。
・・・ということで、噴水前で目を覚ましてから一夜が明けたわけだが、昨日と依然として状況は変わらない。記憶も無いし帰る宛もない。そもそも、この世界がどのような場所なのかもわからない。
勢いよく胃に食べ物を入れた後、私はこの世界について知るために近くにあるらしい図書館に行くことにした。
◇
図書館の前に着いた。前にある石畳の道路には、馬車や大八車などが頻繁に通っている。おそらくこの道路は貿易路として使われているのだろうか。
図書館の中に入ると、多くの本が私を出迎えてくれた。右や左、上を見上げてもどこにでも本が存在している。早速、この世界に関する本を探してみよう。
────
───
──
─
──ざっと本を読んでみて、分かったことを書いておこう。
まず、私のようなこの世界とは異なる世界からやって来た人間は、「異世界人」と呼ばれる存在らしい。どうやら私以外にも異世界人という人間は存在するが、数はとてつもなく少ないらしい。異世界人は、この世界の最高神として信仰されている女神「ナサレナ」の加護を持っているのだという。様々な災難から守ってくれるという代物らしいが、この加護というものについてはまだまだ分からないことが多いらしい。
そして、この世界では街と街を移動する時などには、冒険者カードというものが必要なのだという。冒険者カードは「冒険者ギルド」という場所で発行してもらうことができるということだ。
冒険者ギルドとは、街の外に生息している人間を襲う魔の存在、いわゆる「魔物」を討伐するといった仕事や、護衛の仕事をしている「冒険者」と呼ばれる人たちを管理している団体とのことだ。
とりあえず、冒険者カードを持っていなければ何もできないということが分かった。
私は本を元あった場所に戻し、冒険者ギルドへと向かうことにした。
<登場人物>
・サクラモリ・メイ→18歳女性。違う世界からやって来た異世界人。今までの記憶はほとんど残っていない。