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第29話 ※※※※※機械生命体からの視点

―――――空門士からの視点―――――



ぽっかりと開いた雲の穴から差し込む太陽光が、足元に広がる小汚い街へ明かりを落としていた。

私の名は空門士。

機械生命体として『不変の鋼技師』から生み出され、Level30まで進化した上位存在だ。

catastropheと呼ばれている奈韻という女の仕業なのだろうか。天空から厚い雲を突き抜け、閃光が降り落とされてきた。

私は、その熱線により破壊された飛空艦から緊急脱出をし、落下傘に吊られ空気抵抗を受けならがら、ゆっくりと地面へ着地しようとしていた。


・名前 : 空門士

・別名 : 空の支配者

・種族 : 機械生命体(人間型)

・職業 : 飛空技師

・Level : 30(C-)

・力  : 30

・速  : 30

・体  : 50

・異能 : 技師C、重力場

・状態 : 両足と片手を欠損


・名前 : 飛空艦(私の半身体)

・状態 : 死亡


全長が50mほどあった飛空艦については、天空から落ちてきた閃光により、一瞬のうちに破片すら無くなるくらい焼き払われていた。

信じられないというか、あり得ない光景が目の前に広がっている。

半身である存在を失い、心にぽっかりと穴が空いた感覚に陥っていく。

落下傘にて降下中の私自身の体については、落ちてきた熱線により下半身と片手を欠損した状態になっていた。

着地点となる地面へ視線を送ると、我等・機械生命体の宿敵である奈韻の配下である青髪の男が、笑顔を浮かべながらこちらに対し手を振っている姿が見えている。

私を処分する命令を受け、落下地点へ先回りして待ち伏せしているのだろうか。

舐め腐った笑顔を浮かべている様子を見ると、下半身と片手が無い姿を見て、既に勝ったつもりでいるようだ。

劣等動物である人間ごときが上位存在である私を見下すことなど許されることではない。

人間の男をいたぶり殺す趣味はないが、簡単に死ねると思うなよ。

体の50%以上を失っているものの、私が敗北する要素はないのだ。

特殊能力である『重力場』とは、その名のとおり周囲に重力を発生させること。

有効範囲は1m。

その汎用性は高く、飛空艦が無くてもLevel20の『D』級くらいの者なら仕留めることはたやすい。


視線の先。着地点にいる青髪の男の周囲に魔法陣がいくつか浮き上がってきていた。

あれは『召喚』を行うための魔法陣。

その数、20。

なんだ。あの異常ともいえる個数は!

奴の職業は召喚士だったのか。

過去のデータに照らし合わせても、これほどの個体数を同時に召喚できる者はいないはず。

青髪の男、私と同等の『C』級相当の実力があるとでもいうのか!

魔法陣より黒ローブを着た20個体の黒魔術士が、姿を現してくる。

地面までの距離。15m。

当然であるが落下してくる私へ向け、地上から遠距離攻撃を仕掛けてくるつもりのようだ。

案の定といった感じで、20個体の黒魔術士達は小型の炎をつくりだしてきた。

Level9までの魔術士達が主に使用する、炎属性の初歩的攻撃である『FIRE』である。

攻撃値は10。そしてその射程は10m。

単体に小ダメージを与えるカスのような攻撃だ。

黒魔術士達の動きを見るかぎり、奴等に統一性のようなものは存在しない。

当然であるが、20体もの召喚個体を手足のように操るには高い演算能力が必要となる。

召喚数だけは多いものの、その個体を有効に使いこなせているわけではないということか。

数だけが多い烏合の衆だな。

青髪の男は、無駄にLevelが高い雑魚であり、敵である私を甘くみている上、そして戦術というのも全く理解していない。

両足と片手を欠損している私にとって、脅威になりえる存在ではないだろう。


地面まで10mの距離まで迫ってきたところで、黒魔術士達は頭上にいるこちらへ『FIRE』を一斉斉射してきた。

―――――――――私はここで、重力場を展開させる。

自身の体を護るように防御値『50』相当の重力場の結界が現れていく。

『FIRE』ごときLevel 9の攻撃が上位存在の機械生命体へ効くはずが無いだろ!

私を舐めくさるのも大概にしろよ!


結界を張ったことにより、落下傘で吊っていた命綱は切断され、自由落下を開始しているものの、この高さから地面に落ちても問題ない。

青髪の男を仕留めるスキームは簡単だ。

うまく着地できるよう重力場を計算しながら対応すればいいだけのこと。

召喚個体である黒魔術士達からの攻撃については無視をしてもいいだろう。

所詮は数だけが多いだけの烏合の衆。

Level9の攻撃では、策無しに私を倒すことは出来ない。

着地に成功した後にやるべきことはただ一つ。青髪の男を仕留めること。

現状状況より私が勝つ成功確率は99%。

簡単なミッションを粛々とやればいいだけの状況だ。


黒魔術士達から発射され飛んできて来た『FIRE』が私の周囲に張られた結界に弾かれていく。

地面までの距離は5mまで近づいた時。

————————青髪の男が背中を向け、全力疾走で逃げ始めた。

敵である私が『重力場』を展開する姿を見て、勝てる相手で無いことを悟ったのだろうか。

だとしたら、人間のくせに判断が早いじゃないか。

奴の能力値を少し甘く見積りをしていたのかもしれない。

思っていたよりも冷静かつ行動力がある奴なのか。

だが、もう手遅れだろ。

私の攻撃から逃れるには行動が遅すぎた。

まずは破損した体にダメージを与えないように正確に着地することに努めることにしよう。


地面までの距離が0m。

球体形状に展開させていた重力場が地表に衝突し、衝撃を逃すためにぐにゃりを歪んでいく。

計算していたとおり地面を一回転したところで体が静止した。

思い描いていたとおりの展開だ。

そして次は奴を仕留める番である。

重力場内にある手頃なサイズの石を飛ばし、青髪の男へ攻撃を開始する。

逃げていく男の背中が見えていた。

私からの距離は既に10mほど離れている。

障害物に隠れられてしまっては厄介ではあるが、現状では何ら問題ない。

背中を向けている奴は、私からの攻撃を察知することが出来ない。そう。重力場の効果で飛ばした石は、青髪の男の体を必ず貫通するということだ。

計画通り、まわりに転がっていた石に力をかけ、男へ向けて発射した。

だが、その時!



はかっていたようなタイミングで、青髪の男が走る進路方向を変えたのだ。



当然に、重力場で飛ばした石が逃げる青髪の男の横を擦り抜けていく。

何故だ。どうして避けることが出来たのだ!

背中を向けている奴には、私からの攻撃が見えていなかったはず。

こちらの攻撃パターンを事前に知っていたとでもいうのか!

ありえないだろ!

奴は背中に目がついているとでもいうのか。

未来を見る力を持っているとでもいうのか!

青髪の男が建物の影に隠れていく。


チッ。重力場の攻撃範囲から逃げ切られてしまったか。

だが、何も問題ない。

青髪の男に私を傷つける能力はないからだ。

私はCatastropheと呼ばれる奈韻から逃げのびればいいだけなのだ。

そう。奴に私を倒すことが出来ない事実は変わらない。

その時である。



突然、頭の中に『エラーメッセージ』が流れてきた。



太陽フレアが起きたかのような、強烈な『電磁パルス』を受けていたのだ。

『電子パルス』とは、電子機器にエラーを発生させるマイクロ波のことで、私達機械生命体の天敵となる攻撃である。

今更ながらに、置かれている現状況を理解した。

放置していた黒魔術士達が至近距離から私へ『電磁パルス』を当ててきていたのだ。

エラーメッセージが流れ、機能が停止に向かっていく。

このままでは完全に意識を失ってしまう。

どうしようもないくらいの敗北感が込み上げてくる。

うぉぉぉぉ!

まさか。上位存在の私が、劣等動物であるあの青髪の男の術中に嵌っていたのか。

何故、電子機器を破壊する『電磁パルス』に関する知識を持っているのだ!

黒魔術士が統率していない行動をしていたのは、私を油断させるための罠だったのか。

敵を軽く見ていたのは奴ではなく、私の方だった。

まずい。まずいぞ。

後悔の念が押し寄せてくる中。

――――――――――私の意識が途絶えてしまった。


プログラムが回復し、意識を取り戻した。

視覚が復活すると、最初に映ってきた情報は、青髪の男が至近距離からこちらを見ていた。

どういう状況になっているのだ。

私は首から下を失い、残った頭部だけが地面に置かれている状態になっていた。

『重力場』も使用できない状態になっている。

目の前にいる男が私が目覚めたことを悟ると、笑いながら憎たらしい言葉を口にしてきた。



「おい。機械人間。命乞いするって言うんならよう、聞いてやってもいいぜ。」

「何故だ。お前は何故、私の攻撃を避けることが出来たのだ。何故、お前は電磁パルスが私達の弱点であることを知っていたのだ!」



思わず吐いた言葉に、青髪の男が楽しそうに顔を歪めた。

こんな人間に上から目線の言葉をかけられ、いかりが込み上げてくる。

こいつだけは絶対に許せん!

男が笑いながら、私の言葉に返事をしてきた。



「変わった命乞いをするじゃないか。俺が何故お前の攻撃を避けることが出来たのかを知りたいのか。それは俺が優秀すぎる男だからに決まっているからだろ。ククク。まあいいだろう。特別に教えてやる。『戦術眼』が俺に逃げろと指示してきたんだよ。そして、指し示された逃走ルートを走っただけだ。電磁パルスって何なんだ。すまん。全然、分からないな。黒魔術士からの攻撃も『戦術眼』の指示に従っただけだ。つまり俺が最強ということだと認識しろ。」



戦術眼だと!

そのせいで私の攻撃が読まれたというのか。

だが、この男がクソ無能な最低野郎であることは分かった。

青髪の男が卑猥に笑う姿を見ていると、どうしようもないくらいの怒りが込み上げてくる。

その時。

黒髪の女が、私の視界に入ってきた。

catastrophe。奈韻。絶望と呼ばれる存在だ。

私は既に詰んでいることを悟った。

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