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第27話 ここから先は俺の独壇場

昼間の時間帯であるにもかかわらず、分厚い雲に太陽が遮られ、辺りは夜のように暗くなっていた。

人の姿が消えた薄汚れた街は、廃墟のような様相になっている。

キラキラと光る黒髪を後頭部で一つにまとめていた女が俺に背中を向けており、その脇には人狼が控え腰の大太刀を握りしめていた。

その視線の先には、全長50m程度はあるだろうか。鉄屑の飛行物体がこちらへ接近してきていた。

その空飛ぶ物体を操る者の名前は空門士。

4聖人の一翼である『不変の鋼技師』から命令され、『catastrophe』と呼ばれている存在が現れた時のためこの地区に備えていた機械人間だ。

人間の女をいたぶることに喜びを感じる、なかなか見込みのある外道である。

その機械人間に対し、我等が仕えている女王陛下は、『高出力Laser』を換装すると宣言をしてきた。


奈韻が就いている『銃士』とは、最強の一つに位置づけられている職業である。

実際にLevel29である『D』級のネームド職達4人を相手に対しても圧倒しており、少なく見積もっても『B』級くらいに実力はあると予測がつく。

『高出力Laser』なる物が何であるかは全く分からないが、『魔銃』であることは間違いないのだろう。

たが、奈韻の手にそれらしきものは一向に現れてこない。

換装してくるまでには一定の時間が必要なのだろうか。

飛行物体はかなり接近してきており、このままだと無抵抗で、奴からのローラー爆撃の餌食になってしまう。

やばい。マジでやばいぜ。

本能がここから逃げろと警告音を発しているものの、奈韻への恐怖が俺の行動を縛り、動けないでいた。

背後に控えている人狼については、焦る様子が微塵もない。

俺はここで死んでしまうのか!

黒髪の魔人は対空戦に備えよと命令をしてきたものの、あれを相手にモブが何か出来ることがあるとは到底思えない。

26話では俺が機械人間へトドメを刺すようなことを予言していたが、絶対に無理だろ。

命をかけて骸骨を倒したにもかかわらず『ご褒美』を貰うことが出来ないし、俺のあつかいって酷過ぎないか。

マジで泣けてくる!

特に表情を変えることがない黒髪の魔人に対し、飛行物体内にいるであろう機械人間が上空から大音量を響かせてきた。



「人間の女。私を撃ち落とすと豪語していたが、それははったりだったのか。私が怖いのだろ。怯えているのだろ。泣き叫べ。私に悲鳴を聞かせろ!」



弱い奴にとことん強いその性格に加え、女が泣き叫ぶ姿を見たいのか。

ふっ。まさに悪党属性そのままだな。

やはり、あの機械人間はなかなかに見どころがある奴なのは違いない。

とはいうものの、進化の途中なのだろう。まだ俺の域には遠く達していない。

美少女に踏まれる喜びを感じられる域に到達するまでには相当の時間を要するだろう。

奴に俺の方が格上であることを教えてやりたいところではあるものの、さすがにこの雰囲気でそれは出来ないか。

悔しいぜ。

その時である。

―――――――――奈韻が、すました顔をしながら不意に片手を上げ、空を指さした。

意味不明な行動だ。

未確認飛行物体と交信でも始めるつもりなのだろうか。

そして誰かに攻撃命令のような発声をしてきた。



「あの飛行物体を撃ち払え。 Fire !」



な、何なんだ、あれは!

奈韻が砲撃の宣言をした瞬間。

目の前で、ありえないことが起きていた。

―――――――――無数の閃光が暗黒色の厚い雲を突き破り、天空から降り注いできたのだ。

あの眩しい光の線は、一体何なんだ!

太陽光が糸形状に収束され、凶悪な光線になっているようだ。

無数の閃光は、飛行物体を貫通し、地面へ突き刺さっている。

天空から降り注ぐ得体の知れない光に恐怖を覚える。

厚い雲には大きな穴が空き、青空が見えていた。

光が落ちてきている地面から、焼け焦げたにおいが漂ってくる。

無数の閃光に貫れた飛行物体は、崩壊しながら落下し始めていた。

奈韻へ視線を移すと、驚いている様子はない。

まさに平常運転といった感じだ。

一連の流れを考えると、黒髪の魔人が何かを換装し、天空から閃光を降り落としたのは間違いないが、これで平常運転って、無双過ぎるだろ。

圧倒的という言葉では余裕で足りないくらいの強さだぜ。


魔倶那が話ていた『龍の千機戦役』のことを、ふと思い出していた。

1000機の龍が、十三都市へ侵攻してきた際、奈韻が瞬殺してと言っていたが、あれは夢物語ではなく、マジな出来事だったのか。

最強種と位置付けられている龍についても、奈韻からするとモブな存在だというのも頷けるぜ。

世界蛇(ヨルムンガルド)や、深紅蠍(アンタレス)達が迷宮から外へ出ることができない原因は、目の前にいる黒髪の魔人であるという疑惑が生まれてきたが、まぁ俺には何ら関係のないことだし深く考える必要はないだろう。

目の前では天空から降り注いていた光が収束し始めていた。

機械人間については、絶叫しながら墜落している。



「何だ。何が起きているんだ。ぐぉぉぉ。落ちるぅぅぅ!」



悪党の悲鳴を聞くのは、何とも気持ちがいい。

鉄屑の飛行物体が燃えながら、その形状を崩しつつ、墜落していく。

結構近い位置に落ちてくるようだが、ここにいたら、結構やばいのではなかろうか。

当然の結果であるような表情をしていた人狼が、奈韻へ向け深く頭を下げてきた。



「陛下。飛行物体が落下してきます。ここは退避願います。」

「退避か。鉄屑が地面に落下した際に生じる爆風に備えるということか。」

「はい。もちろん私が盾となりお守りさせてもらいますが、陛下に身に万が一のことがあってはなりません。」

「それでは、落下中の鉄屑を原型が無くなるほどまで焼き払うことにしよう。」



何やら物騒な会話が交わされている。

奈韻は退避するのが面倒くさいという理由で、再度、閃光を降り落すつもりなのか。

あの機械人間の野郎。少し羨ましいとも思えるふぁ、やはり天空からの閃光に串刺しにされるのは、なにか味気ない気がする。

この殺され方は『ご褒美』としてはもう一つだな。

奈韻が再度、空を指さした。

そして砲撃の合図となる言葉を発した。



「 Fire !」



ぽっかり開いた雲の穴から、天空から眩しい閃光が降り注いでくる。

その熱で景色が歪んでいく。

まさに天空から凶悪なる光のラインが突き刺さっているようだ。

落下中の鉄屑がみるみる焼き払われ鉄屑が消滅していく。

抵抗を許すことがない一方的な攻撃だ。

まさに地獄絵図だな。

バラバラになり落下中であった鉄屑が焼き払われその体積が縮小し、消滅へ近づいていく。

黒髪の美少女が不意に振り向き、モブな俺に視線を移してきた。



「水烏。私が『ラプラス』からいくつかの制約を受けている話をしたことは覚えているな。」

「はい。もちろんです。」

「その一つ。機械生命体の上位個体も殺すことが出来ない制約がかけられていることだ。」

「それはつまり、飛行物体を操作していた機械人間は殺すことが出来ないと言っているのでしょうか。」

「もう一つ。26話で私が口にしていた言葉を記憶しているか?」

「もしかしてそれは、機械人間のトドメを俺が刺すと予告していた件のことですか。」



そうか。そういうことか!

ようやく、自身の役割について理解したぜ!

何故、圧倒的戦力外である俺が奈韻に呼ばれていたのか、不思議に思っていた。

人狼は、潔しとよしとしない行為については抵抗をもっている。

そして俺という者は、弱った相手を見ると急激に元気になっていく属性をもっているのだ。

つまり、俺は機械人間の殺処分をするためにここにいるわけということなんだな。

よしよしよし。

ここから先は俺の独壇場だぜ!

空から落ちてくる破片の中に機械人間の残骸みたいものを見つければいいわけなんだな。

心が小躍りしていた。


目の前には、地獄絵図のような様相が広がっている。

天空から降り落された閃光により、地面がマグマのように赤く光っており、焼け焦げたにおいがしていた。

もしかして、俺は、そこに行かないといけないのだろうか!

マジですか。

もしかして俺は、新たな窮地に立たされているのではないかという疑問が生まれてきたぞ!

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