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第17話 俺が考えるダークヒーローとは

ここは人馬迷宮の最下層。

奈韻の命令により、迷宮主に会うために老練なる人狼と共に地下2階層から降りてきていた。

日中は地上に落ちる太陽光と同じ光が天井から落ちてくるものの、現在の時間帯は暗くなっており、赤レンガ広場に建つ街灯が冷たい光を放っている。

その広場の中央。迷宮主の魔倶那と、地下3階の階層主である丸坊主の男が対峙しており、一色触発な状態になっていた。

3階の階層主が、迷宮主になるために魔倶那へ宣戦布告をしたのだ。

俺も含め、丸坊主の男も迷宮主に精神を支配されているはず。

だが俺に関しても、迷宮主である魔倶那に支配されているといった感覚は無い。

下剋上を起こそうと思えば、いつでも出来る状態だということなのだろうか。

だが、ハーレム嬢を囲っていない迷宮主のポジションには一切の魅力もなく、その椅子を奪いとるだけの価値は微塵もない。

仮に迷宮主となったとして、十三都市から女を攫い俺の王国を築く手段もあるのだろうが、俺的には絶対的にNG。

ハーレム王への法則とは、盗賊が馬車を襲う現場に居合わせ、そこに乗車している高貴な女子を救う方の立場でなければならないからだ。

ハーレム嬢とは強制的に従わせるものではなく、助けることにより恩義を感じ、そしてかうざったるく甘えてくるというのか定番の流れなのだ。

その数が増えていくと初期のハーレム嬢の扱いについての問題が発生するが、現時点で俺が気にするようなことでは無いだろう。

魔倶那vs階層主の戦力分析をすると、丸坊主の男の方が圧倒的に優勢であった。

その理由とは、5m程度ありそうな槍を持った『骸骨』を3個体ほど引き連れてきていたからだ。



・魔倶那 Level24 狂戦士 迷宮主

・丸坊主 Level20 闘士 階層主

・骸骨×3 Level22 槍士 旅団の兵士



『骸骨』とは人類の敵とされている死霊のことで、『双星の旅団』という軍団に所属している。

奴等は痛覚がなく完全に破壊するまで動き続けるため、そのLevel以上に脅威であると言われていた。

俺は『戦術眼』を発動し、戦いの結果を見定めたところ、『狂戦士』である魔倶那の実力では骸骨1個体を倒すのが限界。

イメメンの迷宮主が骸骨3体に勝利するためには1対1の戦いにもっていき、『各個撃破』していかなければならない。

つまり、魔倶那の敗北は確定的。

だが、『戦術眼』の判定とは裏腹に、俺の培ってきた3軍の本能は『真の1軍』である魔倶那の勝利を確信していた。

俺の負け犬人生の経験則に当てはめると、雑魚臭を漂わせている丸坊主の男が『真の一軍』である男に勝つことなど、あってはならないことだからだ。

そんな俺に、2階の窓から突き落とした老練なる人狼が、ふざけたことを言ってきた。



「陛下からの命令とは、あの骸骨の1個体を、小僧、お前が仕留めろとのことだ。」



奈韻の命令で、俺があの骸骨の内の1個体を倒さなければならないだと!

その命令に逆らう権利は俺にはない。

骸骨を倒すためには強力な召喚個体が必要となるが、人狼は黒髪麗嬢の命令で、俺を手伝えないという。

俺のステータ値はモブ。

それって普通に考えて無理ゲー過ぎるだろ。

もう一度言うが俺はモブ。

チート能力を使用して、『俺、なんかやっちゃいました』とマウントを取るようなキャラ設定ではないんだよ。

というか、その命令、何かおかしくないか。

奈韻は最初から、人類の敵である『骸骨』3体が、ここに侵入してくることを知っていたとしか思えない。

この迷宮内に『双星の旅団』を手引きしたのは、ちょっと馬鹿そうに見えるあの丸坊主の男ではなく、奈韻だったということなのか。

もう一つ付け加えると、3個体の骸骨の内、2個体については魔倶那が撃破することが前提になっている命令のように思える。

情報が少なすぎる現状況にて、骸骨達を撃破する最善の策は、俺と魔倶那が共同戦線を張ることとなるが、奴の職業を考えると実現不可能。

狂戦士とは、その名のとおり狂乱状態となり高い戦闘力を引き出す職業。

単独戦においては最高戦力値を叩き出すものの、集団戦が出来ないという欠陥職だからだ。

だが、俺が骸骨を倒すためには協力者が必要なことは確定している。

だが、人狼は奈韻の命令で俺に協力は出来ないという。

周囲へ視線を移すと、俺と人狼に続き、村人Bの佐加貴が赤レンガ敷の広場へ降りてきており、無表情にその動向を見つめていた。

その様子に違和感がある。

モブの俺だから分かることだが、普通は慌てふためくところ。

村人Bならば、戦況を見定めるために危険な場所へ近づく選択肢などあるはずが無い。

この佐加貴という男。もしかしてだが、モブではないという可能性がある。

こいつと共同戦線をすることは、俺の生存本能が危険であると警告音を発していた。

となると、残った選択はあれしかない。

隣に立っている人狼を懐柔するかないだろ。



「人狼。お前の意見を聞かしてくれ。俺が骸骨を倒せると思っているか教えてくれ。」

「あれを倒すには策が必要になるだろう。」

「策か。その策とやらを聞かしてくれよ。」

「残念ながら、我に思い付くものはない。」

「俺からのお願いだ。奴を倒すために、協力してくれ。」

「小僧。陛下からの命令で、それは出来ないと言ったはずだ。」

「そこは柔軟に物事をかんがえようぜ。俺に協力してたことを黙っていたら、いいじゃないか。」

「なるほど。協力したとしても、陛下へ嘘を吐けば問題ないということか。その考えは悪くない。」

「そうだろ。お前は俺の召喚個体だ。召喚主が殺されたら困るだろ。」

「お前。悪知恵だけはよく回るな。」

「まぁそうだな。俺はダークヒーロー属性だからな。」

「なんだ。その属性とは。」

「知らないのか。せっかくだし教えてやるぜ。俺は馬車と襲う盗賊や、ギルト会館で絡んでくる初心者狩りをしようとする先輩冒険者を、ゴロゴロとOVER_KILLしていき、最終的には可愛い女の子を救いたいと俺は思っているんだよ。」

「むやみに人殺しをするのはどうかと思うが、それがダークヒーローということか。助ける対象が可愛い女の子以外の者だった場合は、どうするのだ?」

「もちろん他のルートも存在するぜ。貴族の親父を救ったら、俺のスポンサーになってくれるだろうし、金髪碧眼の病弱な令嬢が俺の嫁に立候補してくれるだろうからな。」

「助ける行為の終着地点は、女の子が絡んでいるということなのか。」

「人狼。これが一般的な定型ルートというものだ。」

「小僧。お前はダークヒーローではなく、外道だな。」

「何でもいいんだけどよう。奈韻様には内緒で、俺に協力してくれるということでいいんだな。」

「我が協力することは出来るはずがない。その話は諦めろ。陛下に嘘を吐くことなどできるはずがないからな。」

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