第九話
「さっ!準備は出来たぜ!どっからでも来い!」
京はこれから、実際にイナの魔法を受けてみることにした。魔力で攻撃を防げるようになったので、これなら余裕だろう。
「では…まずは軽めにいきます」
イナの手が赤く光った。どう来る…どう来る?
「フレイム!」
大きな火の玉が京に向かって放たれた。これはヤバいと思い、京はヘッドスライディングのような姿勢で右に避けた。瞬間、爆風が京を襲う。直撃は免れたが、京は5メートルほど吹っ飛ばされた。
「うぐぁっあ!!」
イナは手加減というものを知らないらしい。今のが
直撃していたら、間違いなく黒焦げになっていただろう。
「うぐっ…痛え…!」
あまりの衝撃に受け身を取れず、京は顔面から地面に突っ込んでしまった。
「あっ!すみません!これは中級魔法でした…!」
「てんめぇ〜!!あっぶねぇな!ワンチャン死んでたぞ!」
さっきまでいたところを見てみると、直線に草が黒く焦げている。危なかった…受け切ろうとしていたら、
間違いなく死んでいた。
「本当にすみません…!次はちゃんと初級魔法でやってみましょう」
「言ったな…?次あんなの飛ばしたらぶん殴るからな!」
ぶん殴るとは言ったが、殴る前に死んでしまうかもしれないので、脅しにはなっていない。
「こほん!では気を取り直して…」
「よし!準備できたぜ」
いつでも動ける構えに入る。今度はちゃんと防御出来ればいいのだが。
「ファイヤ!」
野球ボール程度の大きさの火の玉が飛んできた。
京は右手で防御を固める。火の玉は京に着弾した。
「あっつぅ!」
熱い。だが、その熱さもすぐに引いていった。防御成功だ。
「防御できたようですね。これなら、他の魔法でも対応出来るでしょう」
「うおっしゃ!やったぜ!」
「しかし、貴方の魔力量は2です。何度も防御してしまうと、体の魔力を使い切ってしまい、魔法を防げなってしまうでしょう」
京は今になって、自分の魔力量を恨んだ。もし魔力がたくさんあれば、イナが使ったような魔法を使えたのかもしれない。
「…今日はこれくらいにしましょう。明日に向けて体を休めておいてはいかがですか?」
「…そうだな、俺はちょっと町も見てまわりてえしな」
「そうですか。では、日が暮れるまでに私の家の前に戻ってきてください。道は覚えていますか?」
「あぁバッチリだぜ!ちょっと町の外れにあるから分かりやすいぜ」
「了解です。では、それまではご自由に。」
イナはそう言うと、家の方に帰っていった。
(…殺されかけたけど、昨日からイナには世話になりっぱなしだな。なんでここまで親切にしてくれんだ…?)
そんなことを考えても仕方がない。京は町を散策すべく歩き出した。歩けば歩くほど新しいものを見つけられる。よく分からない文字が看板に書いてある。読めないと思ったが、なぜか読み方が分かる。イナの魔法のお陰なのだろうか…。
怪しげな薬を売っている店や、ハリー◯ッターに出てくるような本を売っている店もあった。大きなタルが置いてある…酒場のような店では、まだ昼なのにオッサン達が酒を飲んで騒いでいる。
「明日は魔法学園の入学試験の日だなぁ!俺は明日
試験を見に行こうと思ってんだけど、オメェらも来るか?」
「おぉ!実は俺も見に行こうと思ってたんだよ!」
酒を飲んでいるおっちゃん達は、試験について知っていそうだ。
京はおっちゃん達に声をかけてみることにした。
「なぁおっちゃん…アンタら、入学試験にどんなヤツがいるかとか知ってるか?」
「ん?なんだ坊主、この辺じゃ見ねぇ服だな…冒険者か?」
「いや…俺はテンイシャってやつらしい。」
「転移者か!そりゃあ災難だったな…言葉は分かるのか?」
「あぁ…昨日知り合ったヤツが魔法をかけてくれてよ、それで言葉は分かるようになったぜ」
「そうかそうか!それで…アンタ、試験に出るつもりなのか?」
京は頷いた。このおっちゃんは、試験について何か知っているようだ。
「俺が知ってる限りのことは教えてやるよ。試験に出てる、トップ10に入るんじゃないかって言われてるやつの事…とかな」