第八話
「町まで少し距離もあるので、明日の試験について
少し説明しましょうか。」
洞窟でゴブリンの群れを倒して、どうやら町に戻れば
「治安維持協会」とやらから報酬が貰えるらしい。
「あぁ、気になってたんだけどよ、試験では人間と戦うんだよな?」
「そうですね。ほとんどの人は魔法を扱えるでしょう。」
「は?!魔法使えるやつばっかなのかよ!」
「そうなります…しかし安心してください、ほとんどの人は初級魔法しか使えません。中には中級魔法を使える人もいるかもしれませんが」
冗談じゃない。イナの魔法を見た限り、あんなモンが直撃すれば軽く即死だ。
「アンタがこの前やってた雷…あれでも初級なんだろ?あんなん食らったら確実に死ぬぜ」
「本来は防御魔法で防ぐのです。それに、雷魔法はレベルが高いのですよ。雷属性の初級魔法は、他の属性の上級レベルの威力と難易度なのです」
「ほへぇ…イナってもしかして、スゲェやつなか?」
「ま、そうですね…って、そこじゃなくて!私が言いたいのは、試験では雷魔法を使える人はまず居ない、ということです」
「ほえぇ!ひとまず即死は免れたか…属性って言ってもよ、どんな種類があるんだ?」
「魔法の属性は全部で5種類あって、火属性、水属性、風属性、雷属性、氷属性に分けられますね」
…全部危険だ。雷が落ちてこないからいとって安全ではなかった。今の京が使える魔法はただ一つ、
黄金玉砕昇空脚(金的)のみだ。京の中には、勝てるイメージはあまりなかった。
「…それってさ、ノーガードで食らっても大丈夫なやつ?」
「貴方の頑丈さによりますが…生身だとマズイですね。そこで、これから防具を購入します」
「防具?そんな金持ってねぇぞ」
「さっきゴブリンの群れを倒したので、報酬としてお金が貰えるんですですよ。今朝協会で任務を受注しておきました。」
「うおぉ!金もらえんのか!」
「しかし…そこまで難易度は高くなかったので、
200ゴールド程度しか貰えませんが。」
「ごーるど…?それって金のことか?円じゃねぇのか?」
「…?あぁ、この世界の通貨は『ゴールド』と呼ばれてるんです」
町に到着し、治安維持協会と思われる建物に着いた。
奥でイナが職員と会話している。
(防具か…なんかゲームみたいでカッコいいな!この前見た人みてぇなヨロイ付けるのかな?うおぉっ!
燃えてきたぜ!)
なんて思っていると、奥からイナが戻ってきた。
「報酬は200ゴールドです。武器屋に行って防具を買いましょう」
「いよっしゃ!」
武器屋に着いた。鉄製の剣や弓、鎧などが置いてある。
しかし、京は絶句した。値札を見てみると、兜だけでも500ゴールドもするではないか。
「うえぇ?!全然買えねぇじゃねーか!」
「こっちですよ」
イナが手招きしている。かけ足でイナの元に向かい、そこにあるモノを見てみる。
「……革製…か?これ」
確かに革ジャンを着てるとバイクで転けても少しダメージを軽減出来ると聞く。しかし…これはおかしい。作りが粗いすぎる。
「こんなんで魔法が防げっかよ!ペロンペロンじゃねぇか!」
しかもダサい、ダサすぎる。頭に付けると思われる革はお値段100ゴールド。これに防御力があるとは思えない。
「それじゃなくて…これです」
イナはアンダーシャツのような黒い布を渡してきた。
「これは『魔力伝導矯正スーツ』です。これがあれば、自動的に体に魔力を纏わせることが出来るので、魔力を使った
ガードが出来るようになります。」
「うおぉ!!そりゃあいい!買う!お値段は?」
「…220ゴールドですね。20ゴールドは私が出しましょう」
「うおぉ!!サンキュー!」
店を出て、京はさっそく学ランを脱ぎ、下に例の矯正スーツを着てみた。
「ちょっ、こんなとこで脱がないでくださいよ…」
「いいだろ別に!ここあんま人通んねえだろ」
着心地は…まぁいい。ピッチリしていて動きやすい。
「これで魔力を使ったパンチやガードが出来るはずです。一度試してみましょう」
イナが実際に魔法を撃ってくれるらしい。二人は平野に移動した。