第七十四話
まさかと思い辺りを見回すと、他のゴブリンの体からも黒い物体は出てきていた。しかし、サイズ感はさっきのよりもかなり小さい。
「マジかよ!お前らからも出てくんのかよ!」
京はイナの斧を召喚し、町を覆う黒い物体を切り裂いていく。斧の光の力でかは分からないが、一度切り裂くと黒い物体は消えていく。さっきの大きいのよりもかなり弱い。
十分程でほとんどの黒い物体を片付けた。何度かダメージを受けたが、すぐに回復していく。
「オレの体マジですげーな…あっという間に治るよ」
斧をしまいカストレア家へ戻ると、家の壁や庭はほとんど無傷だった。中に入ると、カルザックたちがちょうど戻ってきたようだ。
「京君と騎士団のおかげで、なんとか鎮圧出来たようだが…ゴブリンの背を貫いて出てきたあの黒いものはなんだ…?」
「アンタも知らねぇのか…とにかく気持ち悪かったぜ」
セフィナとカルザック、使用人たちと共に家の中に入る。京は『エクスカリ棒』を構え、中にゴブリンが潜んでいないか注意深く確認する。
「…多分大丈夫だ。もうアイツらはいねぇな」
安全が確認でき、京とカルザックは安堵のため息をつく。
「ふぅ…すまない京君、また助けられてしまったね」
「いいって事よ。その代わりまたウマイ飯食わせてくれよ」
事態の収束は本当に早く、また日常へと戻っていった。京はセフィナに話しかける。
「怪我はねぇか?」
「…はい、おかげさまで。」
セフィナは心なしか少し不機嫌そうに見える。
「…なに機嫌悪そうな顔してんだよ。もしかしてだけどよ、さっき邪魔って言ったの根に持ってんのか?」
京がつらつらと言い訳を並べていると、セフィナがクスクスと笑いだした。
「別に。怒ってないですけど。」
「はァ…?!怒ってんじゃねぇかよ!」
セフィナはそっぽを向いてしまう。
(チッ…お嬢様がよ。拗ねちゃってよぉ…)
昼食も出してくれるそうなので、京はカストレア邸で昼食を食べた。情報も得られ、そろそろ帰ろうかという時に、誰か来たようだ。セフィナはその人物に心当たりがあるらしく、京を連れて玄関まで向かった。
「お久しぶりだね、セフィナちゃん。」
「お久しぶりです、ルーちゃん先生。」
玄関にいたのは、京よりもかなり小さい少女だった。
「…この男は誰だい?」
「ルーちゃん」は京の方を指差す。そして京に近づくと、なにやら怪しむような顔をする。
「君ぃ…セフィナちゃんの友達かな?」
「友達じゃねーし。命の恩人、な?」
京はセフィナを睨む。セフィナは不満げな顔をしており、京と目を合わせようともしない。
「このガキゃ…てか、アンタ誰だ?」
「妾はワルツレッド。この子の家庭教師だった者だ。」




